日本学術振興会

科研費における研究データの管理・利活用について

背景

我が国の研究開発活動の自律性の確保と国際的なオープンサイエンス推進の観点から、研究データの戦略的な保存・管理の取組とともに、研究成果のより幅広い活用が求められており、公的資金による研究データの管理・利活用に関する基本的な考え方に基づき、研究データの管理・利活用を図ることとなっています。
日本学術振興会では、独立行政法人日本学術振興会の事業における研究データの取扱いに関する基本方針を定め、研究活動における適切な研究データの管理・利活用を促進しています。

科研費における研究データの管理・利活用について

科研費での研究の実施にあたっては、研究データの管理計画書であるデータマネジメントプラン(DMP)を活用し、研究データの適切な管理や利活用の促進に努めていただきます。以下の内容をご確認ください。
1. 対象種目
特別推進研究、学術変革領域研究(A・B)、基盤研究(S・A・B・C)、挑戦的研究(開拓・萌芽)、若手研究、若手研究(A・B)、研究活動スタート支援、奨励研究、特別研究促進費、特別研究員奨励費、国際共同研究加速基金(国際先導研究、国際共同研究強化(令和4(2022)年度以前に採択された国際共同研究強化(A)を含む)、海外連携研究(令和4(2022)年度以前に採択された国際共同研究強化(B)を含む)、帰国発展研究)

2. 適用時期
令和6(2024)年度以降に実施する新規及び継続を含む全ての研究課題

3.科研費での対応の流れ
<研究開始前>
  • DMPの様式例を参考に、研究開始にあたり研究データの管理計画を策定してください。
  •  DMPの提出は不要です。
<研究実施中>
  •  DMPに基づき適切な研究データの管理のもと、研究を進めてください。また、研究の進捗に応じてDMPは適宜更新してください。
<各年度の研究終了後>
※1 メタデータ
公開するデータ自体がどのようなデータであるかを示す情報のこと。データの作成日時や作成者、データ形式、タイトルなど。データを一元的、かつ効率的に管理するためなどに用いられる。
※2 CiNii Research
誰でも利用できる論文、図書・雑誌や博士論文などの学術情報で検索できるデータベース・サービス。NII(国立情報学研究所)が開発・運用している。
 
4.    参考様式
参考様式 ダウンロード
DMP様式例・記入例
作成上の注意
※様式例の項目の内容に沿って管理されている場合、本様式以外を用いても差し支えありません。
5.DMP作成における留意点

研究データは、オープン・アンド・クローズ戦略に基づき管理・利活用を行ってください 。
 
  • 論文のエビデンスとしての研究データは原則公開とし、その他研究開発の成果としての研究データについても可能な範囲で公開することが望まれます。
  • ただし、その際、研究分野等の特性や、データを管理する組織の特性に配慮して、「公開」、「共有」又は「非共有・非公開」の判断が行われる必要があります。
  • 個人情報、企業の秘密情報、研究の新規性、我が国の安全保障等の観点から留意すべき研究データは非公開とすることが求められます。
  • また、産業競争力や科学技術・学術的な優位性を確保するためには、研究データを即時に公開することが適切でない場合もあり得ることから、公開による利活用の促進とのバランスを考慮しつつ、適切なエンバーゴ(時限付き非公開)期間を設定することも可能です。研究データの取扱いに迷う場合は、所属機関の担当部署等に相談してください。
  • 研究者は、オープン・アンド・クローズ戦略に従いDMPを策定し、それに基づいてデータの公開・共有を行ってください。また、研究機関では、管理・対象データの範囲や、それら研究データの公開・共有の基準等を定めたデータポリシーの策定や、研究者がデータポリシーに則って研究データマネジメントを実施するための環境や支援体制等の整備をお願いします。

研究データの管理・利活用に関するFAQ

Q1.  令和6年度に実施の課題がDMP作成の対象とのことですが、令和6年度以前に採択された継続課題も対象ですか。
A1.  DMPの作成は、研究者による研究データの適切な管理や効率的な研究進捗の把握を目的としています。そのため、新規課題、継続課題問わず、DMPを活用し、研究データの適切な管理や利活用の促進に努めてください。なお、対象は令和6年度以降に実施する研究です。
※過去に遡って作成する必要はありません
※令和6年度に延長する基金課題も対象です。
※令和6年度に繰越する補助金課題については対象外です。
Q2 .研究分担者もDMPの作成が必要ですか。
A2. DMPの作成は研究代表者が取りまとめることとしていますが、研究代表者、研究分担者毎に作成し、研究代表者の方でまとめる形でも構いません。研究代表者、研究分担者及び研究協力者等と協議の上、作成してください。
Q3. 論文根拠データのほか、その他研究開発の成果としての研究データについても可能な範囲で公開することが望まれるとのことですが、どのように判断したらよいですか。
A3. 研究データはオープン・アンド・クローズ戦略に基づいて、公開及び共有が実施される必要があります。特に、個人情報、企業の機密情報、研究の新規性、我が国の安全保障等の観点から、留意すべき研究データは非公開とすることが求められます。このため、研究者は、単純に公開や共有を是とするのではなく、合理的な理由により公開及び共有の範囲を設定するようにしてください。
Q4. 実施状況報告書及び実績報告書の作成において研究データの情報を入力する際には、事前に根拠データを機関リポジトリで公開しておく必要があるのでしょうか。また、機関リポジトリが整備できていない場合はどのように対応すればよいでしょうか。
A4. 研究データ本体は原則として機関リポジトリに格納し、メタデータ情報として研究データ本体の公開 URL または DOI を入力してください。ただし、科研費では実施状況報告書及び実績報告書に入力されたメタデータ情報が KAKEN 及び CiNii Research に連携され、登録・公開されますので、機関リポジトリが整備できていない場合は分野別リポジトリや汎用リポジトリ等を活用することも妨げません。なお、論文と根拠データの公開 URL 又は DOI が同一の場合は、根拠データの入力は不要です。
Q5. メタデータの付与後の基盤システムとの連携について教えてください。
A5. メタデータは研究データ基盤システム(NII Research Data Cloud)にて登録することが可能であり、登録されたメタデータは同システムの検索基盤(CiNii Research)から検索することが出来るようになります。なお、メタデータが検索可能となるような相互運用性のあるその他のプラットフォームにメタデータを登録することも可能です。このようなプラットフォームとしては、代表的な機関リポジトリであるJAIRO Cloud(※)以外の機関リポジトリ、JaLC(ジャパンリンクセンター)を経由してDOIを取得しているデータベース、CiNii Researchと連携している分野別データベース等があります。
※ JAIRO Cloud(ジャイロクラウド)
オープンアクセスリポジトリ推進協会(JPCOAR) と、国立情報学研究所(NII)との共同運営による、 クラウド型の機関リポジトリ環境提供サービス (JPCOAR会員向けサービス)。コミュニティサイトやユーザ窓口等の運用はJPCOAR、開発はNIIが担っている。
Q6. メタデータ項目のうち、データ管理機関やデータ管理者の考え方について教えてください。
A6. データ管理機関については、各管理対象データを管理する研究開発を行う機関の名称を入力してください。研究機関外のリポジトリ等に研究データを格納している場合であっても、リポジトリ自体の管理を行っている機関名ではなく、当該課題の研究者の所属研究機関の情報を記載します。
また、データ管理者の連絡先については、個人情報保護及び管理対象データに興味を有する第三者が必ずデータ管理者にたどり着けるようにする観点から、できるだけ個人ではなく組織の連絡先を入力してください。

参考

研究データの概念整理
出典:内閣府 公的資金による研究データの管理・利活用に関する進捗と事例~研究データ2022~