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学術研究を進める上で、論文などの研究成果の発表とその活用は欠かせません。かつては、印刷された学術誌が情報流通の中心でしたが、インターネットをはじめとするICTの発展に伴って、オンラインによる情報流通が可能になりました。
また、ジャーナルの購読料高騰の問題などもあり、世界規模で急速に論文のオープンアクセス化が拡大しています。
こうした中、公的な研究資金による研究成果は、誰でも無料で見ることができるようにすべきという観点から、公的な研究助成を行うファンディング・エージェンシーの多くが、助成した研究成果について、オープンアクセス(OA)を義務化・推奨しています。
論文のオープンアクセス化とは、簡潔に言うと、誰でもWebを通じて無料で自由に論文へアクセスできるようにすることです。
(1)オープンアクセス化の方法
① 学協会や出版社が刊行する学術誌にアクセスするためには、学協会の会員になったり、学術誌を購読することが一般的ですが、近年の世界的な論文のオープンアクセス化の流れを受けて、論文の掲載から一定期間(例えば6ヶ月)を経過すれば、
掲載された論文の最終原稿版を研究者の関係する機関リポジトリで公開することや、研究者自らが開設するWebサイトで公開すること(セルフ・アーカイブ)を認める出版社等が増えつつあります。これにより、出版社等が設定する一定の条件下で論文のオープンアクセス化を実現することが可能になっています。
② 最近の学術誌の中には、はじめからオープンアクセスになっているものがあります。これには、掲載料(APC)が必要なものと不要なものがあります。また、購読料の支払いが必要となる従来型の学術誌においても、著者が掲載料(APC)を負担することで速やかにオープンアクセス化を実現することが可能な学術誌もあります。
(2)科研費論文をオープンアクセス化するために
研究者が執筆した、科研費の助成を受けた研究の論文についても、上記①によりオープンアクセス化できるケースが増えています。この場合、機関リポジトリへの登録手続きが必要となり、また掲載方法等についても、例えば、著者最終原稿版を公開するなど出版社等の側の定めに従う必要があります。
投稿する学術誌については、これまでどおり研究者自身の判断によって決めていただくものであり、必ずしもオープンアクセス誌への投稿を求めるものではありません。また、専門分野による研究成果の取り扱いの違いや所属機関の機関リポジトリの整備状況等にも差があります。
そのためオープンアクセス化にあたっては、それぞれの研究者が、現在の環境下において可能な範囲で最も適切であると判断する手段を選択してください。
(1)学術研究の発展
論文のオープンアクセス化が拡大すれば、学術情報が様々な制約なく流通・入手することが可能となり、学術研究の発展に寄与します。また、異なる分野の研究成果に触れることも容易になるため、研究の幅が広がり、さらには、世界の国々の情報格差の解消にも役立ちます。
(2)研究者自身にとって
論文を発表した研究者自身にとっても、自らの研究成果に関する情報発信力が高まり、様々な利点が期待されます。例えば、少し古いデータになりますが、物理学の分野で、同じ学術誌に掲載された論文の被引用数についてOA論文とそれ以外を比較すると、約2.5~5.8倍の差があったとする報告があります。
【「同一ジャーナルに掲載されたオープンアクセス論文と非オープンアクセス論文のインパクトを比較する」(http://www.nii.ac.jp/metadata/irp/harnad/)】
科研費の大きな特長の一つは、人文学・社会科学から自然科学まで多くの研究を幅広く支援している点にあります。例えば、2013年に科学技術政策研究所(現:科学技術・学術政策研究所)がWeb of Scienceによる分析を行った結果、
科研費による論文は日本全体の論文のほぼ半分を占めており、日本の学術研究を支える極めて重要な役割を果たしていることが明らかになりました。
科研費の助成を受けた研究の論文について、オープンアクセス化を推進し、研究者の研究成果の情報発信力を強化することで、我が国及び世界の学術研究の振興に科研費の研究成果が大きなインパクトをもたらすことになるでしょう。
科研費は、これまでも、研究成果の概要を国立情報学研究所のKAKENデータベース(https://kaken.nii.ac.jp/)で公開してきました。これにより最新の科研費の様々な研究成果のポイントを検索し活用することが可能でしたが、今後、論文のオープンアクセス化を推進することで、更なる研究成果の普及やその活用が期待されます。
このように大きな役割を果たしている科研費ですから、オープンアクセス化の推進に加え、論文の謝辞(acknowledgment)においても、科研費による支援の成果である旨を忘れずに明記するようお願いします。
【 謝辞(acknowledgment)の記載例 】 ・課題番号が「15K45678」の場合 【英文】This work was supported by JSPS KAKENHI Grant Number JP15K45678. 【和文】本研究はJSPS科研費 JP15K45678の助成を受けたものです。 |
Q オープンアクセス化を進めるようリーフレットが配られましたが、オープンアクセス化が義務化されたのですか?
A オープンアクセス化をめぐる世界的な動きや、オープンアクセス化のメリットなどを踏まえて、科研費の助成を受けた研究の論文についてもオープンアクセス化を進めることが望ましいとの判断から、
オープンアクセスにかかるリーフレットを配付し、オープンアクセス化を推奨しています。義務化ということではありませんが、アカデミアとして研究者自ら進めていただくことが大切だと考えます。
Q オープンアクセスジャーナルに論文を投稿・掲載することが望ましいということでしょうか?
A リーフレットでも述べられていますが、どのジャーナルに論文を投稿・掲載するかについては、研究者自身の判断によるべきものです。
したがって、できるだけオープンアクセスジャーナルに論文を掲載することが望ましいということではありません。
Q オープンアクセス化のための投稿料・掲載料を、科研費の直接経費から支出することはできますか?
A 科研費ではこれまでも「学会誌投稿料」を直接経費から支出することを認めています。これと同様に、オープンアクセス化のための投稿料・掲載料についても直接経費から支出することができます。
Q オープンアクセスにするには投稿料や掲載料が必要となり、科研費の研究費が圧迫されてしまうのですが?
A リーフレットでも述べられていますが、オープンアクセス化の方法には大きく分けて二つの方法があります。投稿料や掲載料が必要となるゴールドOAと呼ばれる方法もありますが、掲載料を必要とせずに、ジャーナルに掲載して一定期間が経った後に機関リポジトリなどで公開するグリーンOAと呼ばれる方法もあります。
研究者自身の判断で無理のない方法でオープンアクセス化を進めていただきたいと思います。
Q 研究者は必要なジャーナルは購読しているので、オープンアクセスにするメリットは少ないのではないでしょうか?
A 確かに、多くの研究者の方々は、関連分野のジャーナルについてはすでに購読されていると思います。一方、ジャーナルの購読料の高騰により、一部の関連ジャーナルが購読しにくくなっているとの声も聞きます。様々な論文がオープンアクセス化されていれば、研究者自身の専門分野に限らず、購読していないジャーナルに掲載された論文にもアクセスできるようになり、研究の幅を広げることにもつながるでしょう。
さらに、研究者以外の方々のアクセスも可能となるなど、オープンアクセス化のメリットは大きいと思われます。
Q リポジトリへの登録とありますが、どのようにすればよいのでしょうか?
A 現在、多くの大学等において、機関リポジトリが設けられています。リポジトリへの登録の具体的な方法については、各機関の図書館などの関係部署にお尋ねください。
また、ジャーナルごとに、オープンアクセス化についてのポリシーが定められていますので、それに従ってリポジトリへの登録を行うようにしてください。