日本学術振興会

先端科学シンポジウム

FoS Alumni Messages No.18

「Yes and, FoS!」

身内 賢太朗

身内 賢太朗

神戸大学 大学院理学研究科 准教授
HP: http://ppwww.phys.sci.kobe-u.ac.jp/~miuchi/

FoS参加歴:

10th Japanese-German Frontiers of Science (JGFoS) symposium 参加研究者
11th Japanese-German Frontiers of Science (JGFoS) symposium PGM
12th Japanese-German Frontiers of Science (JGFoS) symposium PGM
2nd UK-Japan Frontiers of Science (UK-Japan FoS) symposium PGM
Japanese-Canadadian Frontiers of Science (JCFoS) symposium PGM

FoS? Yes! 2013-2015
   僕が先端科学(FoS)シンポジウムに初めて参加したのは、2013年の日独先端科学(JGFoS)シンポジウムだった。当時のPGM(プランニング・グループ・メンバー)の中家さんから「学振のやっている何かしらのシンポジウム(身内記憶)に推薦しておいたから、、、」と言われていて、忘れたころに学振より一般参加者としての参加の打診を頂いた。研究でも人生でも何か話を頂いたら「Yes, and」(喜んで引き受けてさらに何か盛って返す)をモットーにしている僕は当然、「参加させて頂きます」と返事をした。しばらくすると、当時のテレビドラマ「ライアーゲーム」を彷彿とさせる、ちょっと素敵な招待状が届いた(それ以来、僕の中ではFoSは別名「ライアーゲーム」となり本家よろしく、シーズン2、ファイナル、再生など勝手に名付けて楽しませていただいた。)。さて、ちょっと素敵な招待状を携えて最初に参加したのが、「事前検討会」。ここで衝撃を受けた。何やらPGMと呼ばれる方々を中心とした分野の違う研究者達が、楽しそうに議論を交わしているのだ。中でもSocial Sciences PGMの山中さんがMathematics / Informatics / Engineering PGMの浮田さんに対して入れている突っ込みが、非常に新鮮だった。同分野の研究者では「お友達感覚」であえて触れないような、「そもそもその研究は意味あるの?」的な、研究の根底にある動機に関して、鋭く突っ込んでいたのだ。この「突っ込み」は、その後異分野の研究者と話すときはもちろんとして、自分自身の研究を見直す時に非常に役に立っている。ちなみに、何回かのFoSを体験して、Social Sciencesは一つではない(残りのNatural Sciencesと同じくらいかそれ以上の広がりがある。)こと、浮田さんもエッセイの中で言っているように、実はEngineeringよりも我々に近い目的意識を持っている分野もあるということ、が分かった。
   シンポジウム本番では一般参加者ということで、自分の出番はフラッシュトークの1分間のみ。当然、印象に残るようなトークで内外の研究者との接点を増やさねばならない。僕の研究対象は、未発見の粒子である宇宙の「暗黒物質」。その訳わからなさを伝えるために、文字化け(写真)させたスライドを出して、 それをめくるとちゃんと説明している英語のスライドが、、、のはずが何かの手違いで「ちゃんとした」スライドが現れない。というわけで、本気の焦りを一生懸命隠しながら、文字化けスライドをひたすら説明した。もちろんつかみはOKというわけで、その後のポスターセッションでは大いに盛り上がることができた。意図せずの「盛って返す」になったが、頑張って仕込んだネタよりもハプニングの方が面白いというのは残念ながら(僕にとっては)いつものことだ。。
   そんな身を張ったパフォーマンスが効いたのかどうか知らないが、次期のPGMにご推薦を頂いた。もちろん快諾しながらも「え、あのレジェンドみたいな人たちのお役でしょ?」と正直ビビりながら初回の打ち合わせに参加した。すると、いたいた大ボスたちが。当時の事業委員長の小安さんをはじめとして、事業委員、専門委員の方々が、我々の出す翌年のセッションに対する提案に、「その内容はどこがカッティングエッジなんだ?」と厳しく質問してくるのだ。僕のいる物理の分野では、実験提唱から結果がでるまで30年かかることもあるので、なかなかカッティングエッジに立ち会えるという僥倖には恵まれない。そんな言い訳が頭をよぎったが、すなわち自らの分野は進歩していないということを意味することに気づき、自らの分野を再度見つめなおして必死にカッティングエッジを見つけ、セッション提案を行った。 そんなことを考えながら、あっという間に2度のPGMも終えた2015年秋、次期PGMの指名も終え、少しさみしいけど卒業を迎えた。

FoS+ 2016-2017
   FoSが楽しかった思い出に変わったころに、再び学振からお電話を頂いた。「UKとのFoSが開催されるのですが、PGMを、、、」とのお話に、食い気味に「お受けいたします。あ、スケジュール確認します。大丈夫です。」と返答した。2016年の日英先端科学(UK-Japan FoS)シンポジウム、さらには2017年の日加先端科学(JCFoS)シンポジウムのPGMとしても声をかけて頂き、気づけば3種類のFoSでPGMを経験させていただくという幸運に恵まれた。幸い、2016年のUK-Japan FoSでは重力波の検出という世紀の物理的成果もあり、毎年なにかしらのカッティングエッジなセッションを提供出来たのではないかと思っている。セッションテーマを探す作業、テーマ決めと前後して行う国内のスピーカー候補の研究者との交流などは、PGMとして得ることのできた財産の一つだと思っている。海外の第一線の研究者との事前打ち合わせもそれぞれ特徴があって興味深かった。他のPGMからは相手方とのコミュニケーションがとりづらい(相手国によってFoSに対するスタンスもまちまちだった。)という話も聞いたが、僕の相手は皆さん切れ者が出てきており、宇宙の真理に共に迫って行ける同士を得た気分だった。
   FoSでは毎回文化研修というその土地の文化について学ぶという企画も用意されている。そんな時は、盛り上げ担当として、毎回大いに楽しませていただいた。写真はJCFoSでの(自主)文化研修、「シーサーになってみよう」をカナダ側参加者とともに行ったものだ(左がカナダ側参加者、右が身内)。さらに、夜の自主セッションでのボスキャラ級の事業委員の先生方との交流も醍醐味の一つだった。ある時、reseacherとscholarの違いについて事業委員からお伺いする機会があり、その内容は今後の研究生活にとって大きく得るものだった。内容?ここに書くのはもったいないので、直接お話しする機会がある方と議論したいと思う。こうして2017年秋、3度目の卒業を迎えた。

FoS Loss 2018
   ここまでFoSにお世話になり、異分野交流の楽しさが染みついてしまうと、卒業しても黙っていられず、FoSを通じて知り合った他分野の研究者と一緒に研究会を開催している。2017年3月はカミオカンデ訪問(写真)などを通じて僕たち物理の研究者の取り組んでいる実験について触れてもらう機会に恵まれた。
   そして今年(2018年)は久しぶりにFoSの無い秋。FoS前やセッション前に感じる「スピーカーたちはちゃんと現れるだろうか」「僕の推薦した参加者は発言してくれるだろうか」「約一時間の議論の間、ちゃんと質問が途切れずに続くだろうか」といったプレッシャー解放され、物足りないFoS Lossの秋である。先日、長い間事業委員長を務めて、大ボスとして我々を叱咤激励していただいた小安さんが退任されたということで、「小安Tシャツ」を着ての慰労会を行った(写真)。多くの先輩方がフットワーク良く参加して、FoSの参加者として諸先輩に負けないように今後もしっかりと研究を進めて行こう、と思いを新たにする機会であった。


第11回JGFoS:ポスターフラッシュトーク   JCFoS:文化研修

【第11回JGFoS:ポスターフラッシュトーク】

 

【JCFoS:文化研修】

FoS同窓生による研究会:スーパーカミオカンデ訪問   FoS懇親会:小安事業委員長ありがとうございました。

【FoS同窓生による研究会:スーパーカミオカンデ訪問】

 

【FoS懇親会:小安事業委員長ありがとうございました。】