日本学術振興会

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卓越研究員事業

卓越研究員の声
Voices from EYRs

これまでに決定された卓越研究員は、全国の産学官の研究機関をフィールドとして活躍しています。こちらで、一部ご紹介しています。
※ 掲載内容(所属、職名等)は執筆時のものです。

令和元(2019)年度 卓越研究員からの声

多様な研究者や実務者、市民と共につくり、共に学ぶ

京都工芸繊維大学 デザイン・建築学系 講師
山口情報芸術センター[YCAM] 研究員
津田 和俊 さん(令和元(2019)年度卓越研究員)

 これまで研究では、環境やサステイナビリティの課題に対して、工学を軸とした領域横断的なアプローチで取り組むことを考えてきました。近年では、循環経済に向けた分散適量生産・DIYカルチャーのデザイン・リサーチや、生態系や生物多様性を研究するバイオテクノロジーの応用可能性について市民と一緒に模索するバイオ・リサーチに取り組んでいます。このような研究の場合、より多様な研究機関やグループ・個人と連携する必要があることを実感しています。
 この卓越研究員事業に関しては研究者の先輩から教えていただいて知りました。デザイン分野でも募集があること、クロスアポイントメント制度の積極的な活用が推進されていることなどを知り、申請することを考えました。この制度を活用して、京都工芸繊維大学と山口情報芸術センターといった、国立大学と公共文化施設の二つの研究機関で働いています。着任後、ある共同研究では両機関の連携もはじまり、また国内外の研究機関などとの連携の幅も広がってきています。今後さらに、国内外の多様なデザイナー、アーティスト、実務者、技術者、研究者、市民との共創を実践しながら、研究に取り組んでいきたいと思っています。

津田 和俊

イメージやメディアについて考えることから広がる世界

九州大学
芸術工学研究院 講師
増田 展大 さん(令和元(2019)年度卓越研究員)

  人文学のうちでも美学・芸術学といったアプローチから、イメージやメディアと呼ばれる対象について研究しています。写真を中心に歴史的な資料を掘り起こしては、現在の思想や理論と掛け合わせるような論考を発表してきました。なかでも自然科学の歴史上で映像メディアがどのように利用されてきたのかについて関心をもち、最近ではバイオ・メディアアートと呼ばれる表現形態にも注目しています。

  卓越研究員事業への申請を決めたのは、こうした研究テーマに関連する募集が出ていることを知ってからのことです。研究だけでなく、馴染み深い生活から新しい環境に飛び出そうといった思いもあったのかもしれません。
  ただ、いわゆるコロナ禍が本格化する時期と異動のタイミングとが重なり、身の回りで起きていることが自身の変化なのか環境の変化なのか、はっきりと掴めずにいました。それでも現在の所属機関で温かく迎えて頂き、関連する分野の研究者やアーティストの皆さんと一緒にいくつかのプロジェクトを開始することもできました。映像文化やアート・デザインについての考察から、今後も分野間を架橋するような議論が展開できればと考えています。

増田 展大

教科書を書き換える材料発見を目指して

国立研究開発法人 物質・材料研究機構
国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 独立研究者
早瀬 元 さん(令和元(2019)年度卓越研究員)

  私は学生時代からゲルの研究をしています。一般的にゲルといえばゼリーのような湿った物質を想像すると思いますが、私が扱っているのは「エアロゲル」など乾燥体です。ナノ・マイクロメートルスケールの骨格構造をもつ多孔質材料を作製し、断熱材やバイオ材料等への応用を提案してきました。見た・触った瞬間に特徴がわかるような材料をできるだけ単純な方法で作ることを目標としており、時間をかけ試行錯誤しながら実験に取り組んでいます。

  京都大学で学位取得後、学振特別研究員と東北大学の助教を経て物質・材料研究機構にきました。現職場を選んだのは自由な研究環境や企業連携を期待したからです。実際、着任後には自分の実験室が与えられ、充実したスタートアップ支援を受け、スムーズに研究を始めることができました。広報活動や知的財産管理がしっかりしているため、大学在籍時に比べて自分の材料を他の研究者や企業にアピールする機会が増えそうです。
  私の研究内容やインタビューは、2019年から全国で使用されている化学の高校教科書内コラムで紹介されています。数年後の改定ではなくなってしまうため、今度は教科書に残る発見をしたいと考えています。

早瀬 元

分野にとらわれない発想や技術を融合し、
究極のバイオハイブリッドシステム構築を目指す

長岡技術科学大学
産学融合トップランナー養成センター 産学融合特任講師
庄司 観 さん(令和元(2019)年度卓越研究員)

  私は博士の学位を取得後、日本学術振興会特別研究員(PD)、海外特別研究員として国内外の研究機関において研究を行ってきました。機械工学の学位を取得後、生物と機械の融合システムの創製を目指し、生命工学や電気化学の分野において研究を行い異分野の技術・考え方を身に着けることで現在の研究テーマを立ち上げることができました。海外留学中、同世代の研究者がPIとして独立していくところを目の当たりにし、自分自身も早く研究室を運営し独自の研究を展開したいという気持ちが強くなり、スタートアップ経費として手厚い資金援助を頂くことができる卓越研究員制度に応募しました。

  長岡技術科学大学を選んだ理由は、テニュアトラック期間の授業免除や准教授と同程度の研究スペース・学生の確保など、研究に専念できる環境を頂くことができるからです。現在、PIという立場になり、7人の学生と共に新たなバイオハイブリッドシステムの構築を目指し研究を進めています。また、長岡技術科学大学は産学連携による研究を推進しており、私もバイオハイブリッドシステムの産業応用を目指し産学連携による研究展開も推し進めていきたいです。

庄司 観

長く続けると見えることもある
~セルロースの上にも10年~

静岡大学
農学部 応用生命科学科 テニュアトラック准教授
中村 彰彦 さん(令和元(2019)年度卓越研究員)

  学部生として研究を始めた時から現在に至るまで、植物細胞壁主成分のセルロースを分解する酵素の研究を続けています。この酵素は固体分子鎖結晶に吸着し、単分子鎖を連続的に分解しながら運動を行います。固液界面での不均一反応であるため、詳細な解析には分子ごとに反応状態の場合分けをする必要がありました。そこで博士(農学)取得後から、生物物理学の分野に飛び込み、1分子計測法を学ぶことで、酵素の反応動力学定数や分解機構について明らかにすることができました。解析により、1本の分子鎖を離さずに長く分解し続けることが酵素の結晶基質分解機構の秘訣であることが分かった時には、「研究も一緒だな」と改めて感じました。

  卓越研究員として採用していただいたことで、独立に際して懸念事項であった研究室の立ち上げ費用の支援が得られ、着任直後から円滑に研究を続けることができました。
  静岡大学では、今まで行ってきたセルロース分解酵素の研究をさらに発展させることに加え、それらの知識を活かして新たな天然及び人工高分子分解酵素の解析と改良を行っています。今後は自身での研究に加え、次世代を担う学生と共にその応用法も開発していきたいと思います。

中村 彰彦

超高速パルスレーザーで物質機能を司る電子の振る舞いを捉える
:特色ある物性計測手法の確立を目指して

大阪市立大学
大学院 工学研究科 特任講師
渋田 昌弘 さん(令和元(2019)年度卓越研究員)

  私は有機半導体やナノクラスターなどの物質を対象にフェムト秒レーザーを用いた物性計測を行うことで、機能を司る電子の振る舞いを調べる研究に従事してきました。この研究を通じて、独創的な研究成果は独自に確立した方法論から生まれると強く感じています。研究成果が実り始めた頃、同世代の仲間は卓越研究員として次々に独立していました。そこで私も次の成長を目指し、同研究員として公募のあった大阪市立大学に応募しました。

  現在は卓越研究員の研究費で整えた最新のフェムト秒レーザーを活用し、特色ある物性計測システムを独自に構築することで、物質における光機能の起源を解明することを目指しています。大学での研究を希望したのは、これまで誰も知らなかったことを観る感動を学生さんと一緒に観たかったからです。実際に着任してみると、学生さんを指導する責任をこれまで以上に感じるとともに、彼らの成長を自分のことのように嬉しく思うようになりました。
  卓越研究員事業を通じて、私の研究を次のステージ進める十分な助走をつけることができました。これからも機能性物質を活用した社会の高度化に物性計測の立場から貢献できる研究を展開したいと考えています。

渋田 昌弘

新しいことに挑戦し続けて、
宇宙の成り立ちを解明する

東北大学
学際科学フロンティア研究所 助教
山田 將樹 さん(令和元(2019)年度卓越研究員)

  以前はアメリカのタフツ大学とマサチューセッツ工科大学においてポスドクとして研究を行っており、理論物理学の本場における考え方を学んできました。特に、新しいことをどんどんと取り入れて研究を発展させることは非常に重要だと実感しました。この経験を通して、日本においても保守的ではない最先端の考えに基づいた研究を行なっていきたいと考えています。
  卓越研究員のようなPIとして責任のある身分は、自分の判断で研究を進めて研究室を運営することができるという点で、私のやりたいことと合致しています。

  現在所属している学際科学フロンティア研究所はその名の通り学際的な研究を推進しており、様々な研究者が1カ所に集まって分野を横断した研究を行っています。私の研究分野は素粒子理論や原子核理論を駆使して宇宙の成り立ちを解明するというものですが、今後はより広い範囲の分野をとり入れて全体を俯瞰するような研究を行い、それを通して宇宙の成り立ちを解明することを目指します。

山田 將樹

つくばサイエンスシティから骨格筋幹細胞の魅力と可能性を発信し、
難治性筋疾患やサルコペニア克服を目指す

筑波大学
トランスボーダー医学研究センター 再生医学分野
主任研究員・助教(テニュアトラック)
藤田 諒 さん(令和元(2019)年度卓越研究員)

  学位取得後、JSPS特別研究員PDとして長崎大学で骨格筋と骨格筋幹細胞の研究を本格的に開始しました。そこで培った技術や知識を生かし、博士研究員、その後 JSPS 海外特別研究員としてマギル大学 (カナダ) のColin Crist 博士の元で約 3 年間、骨格筋幹細胞に関する研究を行いました。留学3年目に入った頃、もう数年ポスドクとしてカナダに残りたい気持ちもありましたが、自分のチームを持ち独立した研究者として次のステップに進みたい気持ちが勝り、卓越研究員制度に応募しました。

  近年の生物医学研究はより高度で複雑になり、1人の研究者でやるには限界がある中、筑波大学トランスボーダー医学研究センターは名前の通りさまざまな生物医学分野の専門家が集まり、分野を跨ぎながら最先端の研究を展開していることが大きな魅力でした。
  卓越研究員制度によって留学先での発展的な研究や未知の研究フィールドへも独立した研究者として果敢に挑戦できています。この5年間を足がかりに自分の研究フィールドを確立し、骨格筋幹細胞の魅力と可能性を世に発信することで多くの人を巻き込みながらインパクトのある研究成果を残したいと考えています。

藤田 諒

競争的研究領域にあっても、これだけは負けないという分野を確立し、
自分にしか見えないものをみつけたい

公益財団法人がん研究会がん研究所
細胞生物部 研究員
北嶋 俊輔 さん(令和元(2019)年度卓越研究員)

  ボストンで5年間、主に肺がんを対象とした腫瘍免疫領域の研究を行い、帰国後の所属先を探すための足がかりとして卓越研究員事業へ応募しました。ボストンには有名研究施設が林立し、世界で分野を牽引する一流の研究室が数多くあります。その中で、専門分野を異にする多くの人たちと協力してプロジェクトを進めることができたことは大きな財産となりましたが、一方で、チームの中で自分にしか出来ないことがあるという存在意義がないとすぐに淘汰されてしまうような危機感も感じました。これらの経験から、まずは狭くてもいいから自分の得意とする分野を深く究め、ここだけは負けないという部分を作ることを常に意識しています。

  卓越研究員制度では、帰国後も独立してプロジェクトを遂行できるということで、自分がこれまで培ってきた強みを生かせる点でとても魅力的に映りました。また、留学中に知り合った日本人ポスドクの方々が卓越研究員制度を利用して帰国していったことも刺激になりました。今後は、留学先で着想したアイディアを基盤として、試行錯誤しながら真に独立した研究者を目指したいと思います。

北嶋 俊輔

固定観念にとらわれず、常に上を目指したい

室蘭工業大学
大学院工学研究科 准教授
太田 香 さん(令和元(2019)年度卓越研究員)

  私は学生時代から情報ネットワークを専門とし、これまで無線センサネットワーク、自動車ネットワーク、耐災害ネットワークなど次世代ネットワークシステムの研究に従事してきました。学生時代の留学や海外の研究者との共同研究を通して、様々な人と出会い、研究に関することはもちろん、人生観や教育哲学などそれ以外の部分でも多くのことを学びました。
 私自身は出産を経験してから時間に追われ、研究に専念することができず、モチベーションを保つのが難しい時期がありました。その中で、海外の女性研究者の多くが出産後も重要なポストで活躍しているケースを目の当たりにし、「もっと上を目指せるのではないか」と奮起することができました。そのような経緯により私は卓越研究事業に申請しました。

  卓越研究員となったことで、潤沢な研究費と時間を確保し、これまで以上に研究に専念することができました。また2020 N²Women: Rising Stars in Computer Networking and Communicationsの10名の中の1人に選定され、一つ目標を達成しました。今後は、後進のロールモデルとなれるよう研究に邁進していきたいと思います。

太田 香