日本学術振興会

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卓越研究員事業

卓越研究員の声
Voices from EYRs

これまでに決定された卓越研究員は、全国の産学官の研究機関をフィールドとして活躍しています。こちらで、一部ご紹介しています。
※ 掲載内容(所属、職名等)は執筆時のものです。

挑戦することを恐れず将来患者さんの手に届く研究を

順天堂大学
健康総合科学先端研究機構 併任:医学部神経学講座
特任助教(テニュアトラック)
秋山 央子 さん(令和3年度卓越研究員)

 私の研究対象はステロール配糖体(SG)という糖脂質です。私は大学院時代に動物のSG合成経路が他の生物と異なることを発見し、動物のSG合成酵素を同定しました。その酵素の遺伝子の変異はパーキンソン病発症率を増加させることが知られていたため、SG合成がパーキンソン病に関与するのではないかと予想し、理化学研究所に移り脳研究の道に進みました。研究を進め未解明であった脳でのSGの存在を明らかにすることができ、SGとパーキンソン病の関連について研究したいと考え始めましたが、雇用期間の上限が迫っていました。そんな中、研究環境や資金の支援を受けながら独立したテーマで研究を行える卓越研究員事業を知り応募しました。
 現在の所属機関を選んだ理由は、パーキンソン病研究を臨床と基礎の両側面から行っている講座であり、自分の研究を将来臨床に応用できるかもしれないと考えたからです。着任後は研究支援員の雇用など研究に専念できる環境を整備でき、SGに着目してパーキンソン病の発症機構の解析を進めています。未解明の生命現象を明らかにしたいという好奇心を持ち続け、将来患者さんの手に届くよう諦めずに一歩ずつ研究を進めていきたいです。

秋山  央子

圏論は万物の構造を捉える数学です
構造的に見ることで森羅万象の中に普遍性を見出すことができます

株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)
佐藤匠徳特別研究所 客員研究員
丸山 善宏 さん(令和3年度卓越研究員)

 オーストラリア国立大学という海外の大学に所属しながらATRで客員研究員として卓越研究員活動をサポートして頂いています。海外を主戦場としながらも日本のコミュニティと関われる柔軟な活動形態を可能にして頂いた文科省・JSPSとATRに深く感謝しております。日本の学術の国際化や国際連携の強化の為にもこのような例が増えてゆくことを願っています。
 私の専門は、圏論という構造主義的な数学の理論です。数学は自由であると言われます。論理的に正しいことは何でも許される学問です。論理的に可能なことは現実的に可能な世界です。数学はまた現象の本質を見抜く学問です。概念的本質を見極めることで複雑な計算なしで問題を解くことも可能です。「自由と本質」は数学の世界でもその他の世界でも肝要です。自由な視座を失い半径5メートル以内しか見えなくなれば、すぐ側にある近道にも気が付きません。本質を見抜けなければ、どの道が近道なのか分かりません。私が専門とする圏論は、計算的数学に対して、概念的数学と呼ばれます。適切な概念は計算なしでトランスパレントに我々を答えに導きます。自由に概念構築し本質を表現することで問題は自然と解けるのです。

丸山 善宏

異分野交流の中で新しい研究対象へ

国立研究開発法人 日本原子力研究開発機構
先端基礎研究センター 任期付研究員
藪中 俊介 さん(令和3年度卓越研究員)

 大学院以降、二成分流体、液晶、高分子、細胞集団などのソフト(アクティブ)マターにおける、物質の性質が大きく変わる相転移現象を理論的に研究しています。メゾスケールで粗視化した理論的記述により、身近な現象がかなり理解でき、新たな理論的予言もできることが自分にとって興味深いです。多様な対象を研究する中で、国内外の共同研究者それぞれの強みを学び、視野を広げることができました。
 日本原子力研究開発機構の先端基礎研究センターに応募した理由は、研究時間を十分に確保でき、研究テーマの自由度も高い、優れた研究環境であったためです。卓越研究員に採用されたことで、研究費を用い不自由のない研究環境の整備ができています。また、私のポストは、テニュアトラック採用で安定性が高いため、以前よりも長期的な視野に基づき、自らの研究計画を進めることができていると感じます。
 現所属では、異分野の研究者との交流のなかで、意外に近い問題意識を感じることが多く興味深いです。自らの興味に基づいた研究を進めるとともに、このような交流の中で、私の特徴を活かすことができる新たな研究対象を発見していきたいと思っています。

藪中 俊介

多様な視座の獲得を目指して

国立研究開発法人 物質・材料研究機構
先端材料解析研究拠点 独立研究者
新津 甲大(にいつ こうだい)さん(令和3年度卓越研究員)

 金属材料をはじめとする無機材料を対象とした研究を一貫して行ってきた経験の中で、観測される様々な現象に通底する基本的な物理法則への興味が強くなっていきました。『現象』に目を向けるようになると『材料』という枠の意義は相対的に薄くなり、『材料』の枠を超えた研究視座の獲得を志すようになりました。
 物質・材料研究機構の卓越研究員公募は多くの大学教員公募と異なり募集要項における要件がほとんどなく、また独立した研究環境を提供してもらえる内容であり、私にとっては最高の選択肢でした。着任後は独立研究者として文字通り独立した研究環境の中で研究を行っています。また多くの装置が共用設備として利用可能であるため、挑戦的な実験設備の設計・導入に卓越研究員事業補助金を充てることができることも物質・材料研究機構ならではのメリットと感じています。大学との違いとして強く感じることは、『研究室・グループ』といった枠内の相互作用よりも他の材料分野との強みを活かしあった共同研究が盛んだということです。このような環境は多様な視座を獲得するうえで不可欠であり、将来的に多様性のある研究を目指すうえで大切なことと感じています。

新津 甲大(にいつ・こうだい)

失敗を恐れず、自由な発想で分野の壁を超える

岡山大学
異分野基礎科学研究所 准教授
木原 工 さん(令和3年度卓越研究員)

 「強磁場」という極限的な環境下で物質が示す多彩な相転移現象の研究をしています。また、それを応用した新しい機能性材料の探索にも力を入れています。強磁場研究では、一般的な測定手法や市販の装置がほぼ使えないので、実験装置や手法を自分達で開発しなければならないことが多々あります。私の場合も、強磁場中で物質の温度を正確に測定する手法の開発から研究がスタートしました。これまでの数多くの試行錯誤を通じて、全く別の分野の知識や技術を上手く組み合わせると思いも寄らない道が開ける、という教訓を得ました。
 学位取得後は、東京大学物性研究所、東北大学金属材料研究所を経て岡山大学異分野基礎科学研究所に着任しました。卓越研究員として採用されたことで、強磁場という特殊な実験環境を岡山大学に導入するための良いスタートが切れました。現職場は物性、宇宙、生物という三つの分野が一か所に集結したユニークな研究所です。私にとって未知の分野の研究について知る機会も多く、刺激的な日々を過ごしています。今後は、現行の研究プロジェクトと平行して、分野の壁を越えた新しい研究テーマにも積極的に挑戦していきたいです。

木原 工

自由な研究環境で、誰もがワクワクする研究を!

信州大学
繊維学部 化学・材料学科 助教
佐野 航季 さん(令和3年度卓越研究員)

 東京大学で学位取得後、理化学研究所の基礎科学特別研究員・JSTさきがけ研究者を経て、信州大学繊維学部に助教として着任しました。着任後は、研究室主宰者としてゼロからの研究室立ち上げでしたが、卓越研究員事業のおかげでスムーズに研究環境を整えることができ、非常に感謝しております。信州大学の繊維学部は日本で唯一の繊維学部であり、繊維を源流に持つ多様な学科を1つのキャンパスに擁している歴史ある学部です。そのため、異なる研究分野を尊重し合う風土があり、自分の興味ある研究を自由に推進できる素晴らしい研究環境となっております。周囲の先生方も手厚くサポートしてくださるとともに、やる気に満ち溢れた学生にも囲まれ、教育・研究活動を楽しんでおります。
 現在は、コロイド化学・超分子化学・高分子化学的なストラテジーやナノ・メソ・マクロスケールに渡るテクノロジーを駆使することによって、新しい機能性ソフトマテリアルや生体模倣システムの設計・開発を行っています。今後は繊維のエッセンスも融合しつつ、誰もがワクワクするような独創的な研究に取り組んでいきたいと考えております。

佐野 航季

ベッドサイドとベンチを繋ぐtranslational researchを通して社会貢献を目指す

東京医科歯科大学
大学院医歯学総合研究科 医歯学専攻 器官システム制御学講座 腎臓内科学分野
テニュアトラック助教
森 雄太郎 さん(令和3年度卓越研究員)

 大学卒業後、初期・後期臨床研修、大学院、関連病院勤務、研究留学と、臨床と基礎研究を幾度も行き来してきました。その中で、ベッドサイドとベンチの双方を知る者として、臨床現場のアンメットニーズを基礎研究で追求し、得られた知見を臨床現場へ還元するという、physician scientistとしてのあり方を模索してきました。腎臓領域の臨床医を兼ねる研究者として、私は未だ根本的な治療が開発されていない慢性腎臓病を中心とした腎疾患の病態解明と創薬を一貫した目標として研究に取り組んでいます。
 留学先のハーバード大学では、疾患の病態解明からの創薬というtranslational researchを進めました。帰国して次のキャリアを考える上で、卓越研究員制度は魅力的な選択肢でした。海外からの応募も可能で、独立した研究を展開することを趣旨としており、帰国と同時にprincipal investigator(研究責任者)になることを目指していた私にとって、これ以上ない制度でした。
 幸にして、母校であり基礎研究と臨床の橋渡しに最適な環境をもつ東京医科歯科大学に着任し、慢性腎臓病の病態解明とヒトに由来する腎臓疾患モデルの作製を主な柱として、研究プロジェクトを進めています。自身の責任でphysician scientistにしかできないtranslational researchを進め、最終的に社会に貢献することが自分の目指す生き方です。

森 雄太郎

宮崎で生きてます

宮崎大学
テニュアトラック推進室 テニュアトラック講師
岩野 智 さん(令和3年度卓越研究員)

 私は生物発光を利用したバイオイメージング技術の開発研究を行っております。生物発光はタンパク質による有機低分子の酸化反応で生じます。私は学生時代に有機低分子との関わり方を学び、ポスドクとして在籍した理化学研究所でタンパク質やバイオイメージングとの関わり方を学びました。
 楽しく生活していたところ、理研での任期の上限が後1年ちょっとであることに気付かされ、職探しをする決意をしました。せっかく転職するなら、南の方の温かい所への移住をしたい、とたまたま見つけた宮崎大学の公募に応募しました。この公募では卓越研究員事業への応募が条件であったため、卓越研究員事業に申請する事となりました。これまでの人生で宮崎には全く縁が無く、初めて訪れたのは昨年(2021年)の11月、あまりの寒さに南国イメージだけで移住先を選んでしまったことを少し後悔すると同時に星空の綺麗さには盛り上がりました。実際、寒いことを除いて住環境の満足度は高いです。
 宮崎大学は空港から近く、主要都市への出張は気軽ですし、発達著しいオンライン会議のお陰で地理的な不利はあまり感じていません。研究環境についても、十分なスペースに加え、卓越研究員事業の支援もあり、小規模な研究室としては十分な設備が整ってきました。
 宮崎でも生物発光を題材にした研究を続けていきますが、驚きのある研究成果を発信できるように精進いたします。

岩野 智

※所属・職名等は執筆時のものです。