日本学術振興会

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卓越研究員事業

卓越研究員の声
Voices from EYRs

これまでに決定された卓越研究員は、全国の産学官の研究機関をフィールドとして活躍しています。こちらで、一部ご紹介しています。
※ 掲載内容(所属、職名等)は執筆時のものです。


平成29年度 卓越研究員からの声

常に初心を忘れずに。

群馬大学
食健康科学教育研究センター 講師
藤原 亜希子 さん(平成29年度卓越研究員)

  私は広島大学での学生時代は植物病原細菌に感染するファージの研究に取り組み、学位取得後は富山大学と理化学研究所において、農業害虫と共生細菌の共生機構の解明とそれを応用した新規防除法の開発を目指した研究に従事してきました。対象は違えど共に「生物間相互作用を解明し、農業分野に生かす」が目的であり、双方の研究を通して様々な技術を学び、多様な研究者の方々と出会う機会にも恵まれ、ぐんと視野が広がりました。
  現所属は「食と健康」に関わる幅広い研究と専門人材の育成により地域産業に資することを目指した新設センターで、自身の研究目的にとてもマッチしており、着任後も農業害虫共生系の研究を引き続き行なっています。研究室立ち上げは大変なものですので、若手スタートアップを力強くサポートする卓越研究員制度でなければ、研究継続はできなかったと思います。学生や共同研究者の方々と協力して日々研究に邁進しています。
  研究を始めた頃から現在まで、周りの方々の多大なるご助力や公的支援制度のおかげで今があることを常に忘れずに戒めにしています。そして、独立研究者として歩み始めたことから、今後は地域ニーズに沿った新課題にも挑戦したいです。

藤原 亜希子さん

良い研究を行う為には、真摯に研究を行うだけでなく
環境と様々な研究者との交流が必要不可欠である

順天堂大学
大学院医学研究科ゲノム・再生医療センター 特任助教
林地 のぞみ さん(平成29年度卓越研究員)

 私が数ある機関から順天堂大学を希望したのは、組織的に再生医療研究プロジェクトに注力している事と日本を代表するスポーツ・健康医学の研究機関であり、臨床の観点から骨格筋に対する様々な研究を行っており新たな知見を得ることができると考えたためです。実際、順天堂大学は大学内の他の研究室や他大学との共同研究を積極的におこなっており、今まで出来なかった実験や多くの著名な方々と意見交換ができる機会が格段に増え、それら成果が自分の研究姿勢や成果に現れていると赴任してから実感することができました。
骨格筋は単なる運動器官ではなく、エネルギー消費・貯蓄器官であり様々な臓器と関連が強い組織です。そのため、筋疾患だけでなく生活習慣病といった疾患に対する新規治療法の開発ターゲットとして注目を集めている組織でもあります。私は骨格筋の再生という観点と医学研究系大学所属という強みを活かし、これら疾患に対して有効な治療法の開発を目指していきたいです。また、日本における女性研究者の割合は年々増加しつつあるものの十分とはいえません。そこで、私の研究者としての経験が未来の女性研究者育成に少しでも役立てられればと考えています。

林地 のぞみさん

生物が持つ驚異的能力を探索、医療を通して社会に貢献

株式会社HIROTSUバイオサイエンス
中央研究所 主任研究員
松永 洋平 さん(平成29年度卓越研究員)

【これまでの研究経験、その経験から得たもの】
私は、ホルモンや筋肉中に存在する酵素の多彩な生理機能を、 小さなモデル生物“線虫C. elegans”を用いて、解析しています。
また、JAXA project [Space Aging]などの産学連携事業に参加させていただきました。これらの経験から、様々な分野が交じり合うことで、結果の解釈の幅が広がり、“一人では思いつかない発想” が生まれることを実感しました。
【卓越研究員事業に申請した理由】
留学中、今後のキャリアについて考える時期がありました。アメリカでは、卒業後、企業に勤めたのち大学教員になる、というキャリアがあります。一方で、大学教員から企業の研究員に活躍の場所を移すキャリアもあります。卓越研究員事業はこのような人材の流動性やキャリアを考える、大きな受け皿になると思い、申請致しました。

【今の機関を選んだ理由】
大学教員は、研究・育成を行うと共に、社会で活躍する人材の“モデルの1つ”であるべきだと私は考えています。もしその教員が、企業での社会経験を有しているならば、研究・教育、またモデルとして、より魅力的な存在になりえるのではないでしょうか。この意味で、企業での研究経験はキャリアの1つとして重要な位置づけを持つ、と私は考えています。
現在の所属機関は、線虫C. elegans の嗅覚機能を医療分野に生かす試みを行っています。これまでの研究・留学経験は、所属機関の活動に貢献でき、さらに企業での研究経験はキャリアの幅を広げるキッカケとなると考え、現所属機関での研究を決意致しました。
【卓越研究員になったことにより研究環境等にどのような変化があったか】
留学中は、“実験スケジュールの決定・実行→結果のまとめ→報告”、という一連の流れを素早く行えるよう意識していました。この作業感覚は、企業における研究活動においても共通していると感じています。さらに会社運営に関わる業務にも携わることで、研究を含む幅広い分野を体験することができ、自身の成長を日々感じています。
【今の機関での研究内容、やりがい】
現在、線虫C. elegansがどのようにガン患者を見分けているのか、尿中の匂い成分・その受容機構を基軸に解析を進めています。未知な部分が多く、まだまだ発展途上の領域ですが、一つ一つ丁寧に、結果を共有し吟味することで、着実に研究を進めています。また、多彩な経験を有するチームで研究を進めている中で、新たな発想が生まれる瞬間はとても嬉しく感じます。
【今後、どのように研究に取り組んでいこうと考えているか】
これまでの研究経験や共同研究から、「様々な視点で物事を吟味することで新たな発見が生まれること」、を学びました。今後は、研究の専門性を高め・新しいことにチャレンジし続ける、と同時に、多くの研究者・関係者との共同研究や共同経営を行い、チームとして社会に貢献できる新たなシーズを探索・育て上げたいと考えています。今後、多くの研究者が企業、大学などで横断的に活躍し、様々な領域で活躍できることを切に願っております。

松永 洋平さん

大気エアロゾル粒子の気候・環境影響を多様な
研究者との協働で解き明かす

長崎大学
大学院水産・環境科学総合研究科 准教授
中山 智喜 さん(平成29年度卓越研究員)

 大気中に存在する微粒子(エアロゾル粒子)は、人間の健康への影響に加え、太陽光を吸収・散乱したり、雲生成に関与したりすることで、放射収支や気候・環境変動に影響を及ぼしています。私は、レーザー分光法を用いた大気微量気体の化学反応過程の実験研究で学位を取得した後、エアロゾル粒子の光学特性(光散乱や光吸収)を調べる新たな計測装置の開発と、それを用いた室内実験および観測研究を進めてきました。着任以前、様々な研究機関の研究者と協力して研究を進めることにより、人為起源と自然起源の様々な種類のエアロゾル粒子の光学特性を明らかにすることができました。
現所属機関には、大気環境分野だけでなく、水循環や海洋、土壌、生態系、疫学、社会環境など、これまで以上に多様な環境関連分野の研究者が在職し、個性的な研究を進めておられます。これらの研究者と協働していくことで、新たな視点での研究を展開できるのではないかと考え、応募しました。現在、長崎大学水産学部の練習船を利用したPM2.5の海上観測や、疫学研究者とのPM2.5の健康影響評価など、新たな研究に取り組み始めています。今後も様々な方の協力を得ながら、独自性を高めつつ未解明の問題にチャレンジしていきたいと考えています。

中山 智喜さん

木を見て森も見て、山も砂漠も海も見て、
自分の木の価値を知る

理化学研究所
生命医科学研究センター Young Chief Investigator
井上 梓 さん(平成29年度卓越研究員)

 【これまでの研究経験、その経験から得たもの】
日本で学位取得後、7年間米国に留学して、本制度で帰国しました。これまでの経験を通じて感じるのは、手持ちの材料や環境を生かして解決可能なテーマを設定するアプローチと、大きなテーマを設定して資源を地道に作り上げていくアプローチの両者をバランスよく共存させることが、長く研究を続けるのに必要であることです。このタイトルのようなことを意識して、マニアックになりすぎないように気をつけています。
【卓越研究員事業に申請した理由】
もともと日本が好きで、将来的には日本での教育・研究に携わりたいと考えていたので、留学中も日本との繋がりを意識していました。そんな中タイミングよく本公募があり応募しました。
【研究内容、やりがい、今後】
生命の源とも言える受精卵のエピゲノムにはどのような秘密が隠されているのか、ということを研究しています。生命の始まりという神秘的な現象の仕組みを自分の手で明らかにできることに、やりがいを感じない日はありません。今後は他分野との融合を図り、受精卵研究の裾野を広げていきたいと考えています。

井上 梓さん

あらゆることから学び研究する充実した毎日

電気通信大学
情報理工学研究科機械知能システム学専攻 助教
新竹 純 さん(平成29年度卓越研究員)

 私は海外で博士号の取得とポスドクをしていました。そこでの経験を通して、自分なりのビジョンを持って、より自立した研究活動をしたいと考えるようになりました。アカデミックな世界では、海外から日本へ帰ってくるのは難しいと言われることもありますが、卓越研究員事業は渡りに船という感じで大きな助けになりました。
帰国し大学に着任したあと、私を取り巻く環境は大きく変わりました。教員として研究室を主宰し研究活動する傍ら、学生への講義を行い、大学の運営にも関わっています。それらすべてが新しく、そこから学ぶ充実した毎日を送っています。私の研究分野はスマートマテリアルとそれを応用したロボットです。材料から始まり、アクチュエータやセンサなどの要素、そしてデバイスの開発までを一貫して行うので、学際的で面白く、やりがいがあります。今後は学術的な研究を行う一方で、産学連携や産業化を通して成果を社会に還元していきたいと考えています。長期的には、今後日本や世界が直面するとされる少子高齢化や環境問題を視野に入れた研究活動を行っていきたいと考えています。

新竹 純さん

実験物理学者とも数学者とも共同研究ができる
対話能力を備えた理論物理学者を目指して

日本原子力研究開発機構
先端基礎研究センター 任期付研究員
山本 慧 さん(平成29年度卓越研究員)

 イギリスで応用数学を専攻し、日本、ドイツ、アメリカで理論物理学の研究を行ってきました。その中で国際性と学際性の両面でコミュニケーション能力が重要であることを感じ、国籍・分野を問わず様々な研究者と議論することを心がけてきました。他の先進各国と比較して現在の日本には若手が自由に研究を行うための研究費が潤沢にあることから卓越研究員制度に応募しました。
先端基礎研究センターを研究の場に選んだ主な理由は、理論と実験の間で効果的な連携が行われていることにあります。私が所属する研究グループは理論と実験の研究者が半数ずつで、力学的角運動量と電子スピンの変換という独創的な研究が行われています。元々数学寄りの背景を持つ私にとって、微小な角運動量を検出するための様々な実験アイデアに触れることはとても刺激的です。
私は角運動量を縦糸に物質科学の数理的構造を横断的に理解することを目標に研究しています。本制度による恵まれた研究環境を活かすことで実験と数学を繋ぐ学際的な活動ができています。現在研究費でドイツから大学院生を招いて指導していますが、今後も自由に分野や国の枠を超えて科学の発展に貢献していきたいです。

山本慧さん

メンバーと共に研究のドリームチームを作る

東京工業大学
情報理工学院情報工学系 テニュアトラック助教
伊藤 勇太 さん(平成29年度卓越研究員)

 私は「計算機で人の知覚を拡張する」というビジョンから、視覚拡張という拡張現実感(AR)のサブテーマを研究しています。私は国内で修士取得後、国内メーカー研究職2年、ミュンヘン工科大での博士号取得、帰国後ポスドク1.5年を経て、東工大に着任しました。情報分野の進化は凄まじく、何が起こるのか全く予測不可能ですが、そんな最先端の一端に立ちながら、新しいイノベーションを模索していく研究活動に魅力を感じています。特にARはこれからの研究分野であり、それを最前線で見つつ未来へ貢献していけるのは得難い体験です。また大学研究者として、国内外の様々な先端研究者と所属に縛られないドリームチームを作り、ニッチながら尖った研究活動が行えるのも利点です。私は「良い研究は良い環境から生まれる」と考えており、国内のスタートアップ資金は限られる中、本事業によって研究室として独立できたのみならず、充実した環境を整備できたのは僥倖でした。また物質的な環境を整えることで、国内外の多様なメンバーに参加してもらい易くなりました。所属してくれた学生には研究を通じて研究室内外で様々な体験ができるよう指導と研究を続けています。

伊藤 勇太さん