日本学術振興会

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卓越研究員事業

卓越研究員の声
Voices from EYRs

これまでに決定された卓越研究員は、全国の産学官の研究機関をフィールドとして活躍しています。こちらで、一部ご紹介しています。
※ 掲載内容(所属、職名等)は執筆時のものです。


平成30年度 卓越研究員からの声

既存の枠にとらわれず、異分野にも視野を広げながら、
研究の舵取りをできるように心がけています

株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所
リサーチラボ
アソシエートリサーチャー
小泉 愛 さん(平成30年度卓越研究員)

【卓越研究員事業に申請した理由】
2つのラボでのポスドク経験を経た後、最初のうちは試行錯誤を覚悟しつつも、自分自身で舵取りをしながら思い描く研究をしたいと思うようになったためです。

【今の所属機関を選んだ理由】
様々な分野の研究者が各々に自身の信念や興味を貫き、社会貢献を念頭にオリジナルの研究テーマを掘り下げている自由な環境に惹かれたためです。

【研究環境等の変化】
今の所属機関で卓越研究員になったことで、研究の自由度が今まで以上に高くなりました。そのため、どのようなアウトプットやインパクトを出していきたいか、そのためにはどのような研究活動を進めたらよいか、常に自問自答しながらナビゲートしていくチャレンジがあります。

【今の所属機関での研究内容、やりがい】
最近では、医学や工学などの他分野の方とも積極的にタッグを組みながら、恐怖や不安を克服するメカニズム解明や手法開発に取り組んでいます。その他にも、独自の視点で研究アプローチの開拓に取り組んでおり、時には遠回りすることもありますが、やりがいを感じています。

【今後の研究】
最近は研究のアイデアや計画がさらに膨らみつつあるので、ラボのメンバーを増やして、次々と形に繋げていきたいと考えています。

  よく「企業での研究生活はどうですか?」と聞かれることがありますが、正直、企業に勤めているということはあまり意識せずに日々研究に取り組んでいます。
  また、卓越研究員になってから、アカデミアの方々と共同研究する機会がこれまで以上に増えました。卓越研究員制度への応募を考えられている方も、「企業」か「アカデミア」か、というカテゴリーに必ずしもかかわらず、ぜひ、ご自身の価値観やスタイル、そしてキャリアステージに合った環境を見つけてご活躍されることを応援しています。

小泉 愛

基礎研究からモノづくりへ。
よいサイエンスをビジネスへ。

株式会社日立製作所 研究開発グループ 基礎研究センタ
日立神戸ラボ 研究員
大熊 敦史 さん(平成30年度卓越研究員)

【これまでの研究経験、その経験から得たもの】
免疫学関連の研究で博士号を取得後、ポスドクとして老化学、腫瘍学、遺伝子・細胞工学を学びました。研究室を渡り歩くたびに研究内容を変化させてきた中で、分野融合型の研究に自らの強みを見出してきました。また、直前まで在籍したBoston Universityでは、モノをつくることと商業的な価値を見出すことの面白さを知りました。

【今の機関を選んだ理由】
今まで交流の少なかった機械工学やデータサイエンスの人材を多くかかえるモノづくりの日立製作所なら、これまでにないコラボレーションができると考え選びました。また、企業における研究はどのようなビジネス感覚の上に成り立っているのか興味がありました。

【今の機関での研究内容、やりがい】
現在は、CAR-T細胞を中心に次世代の細胞療法の開発に取り組んでいます。何年も前から思い描いていた自分のテーマが動き出すことは何にも代えがたい喜びです。

【今後どのように研究に取り組んでいこうと考えているか】
日進月歩の分野なので、古いことに執着せず新しいことをどんどん取り入れ、内にこもらず外に出る研究スタイルを目指します。

大熊 敦史さん

理学と工学の橋渡し役として、
次の時代の太陽系探査を創っていきたい。

国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所
太陽系科学研究系 特任助教(テニュアトラック)
菅原 春菜 さん(平成30年度卓越研究員)

  私は学位取得後、国立研究開発法人海洋研究開発機構にてポストドクトラル研究員、その後、JSPS海外特別研究員として、フランスの大学で宇宙における有機分子の分子進化と生命誕生との関わりについて研究を行ってきました。その中で、様々な有機化学分析技術を磨くとともに、国際的な研究チームで1つのサイエンスを作り上げていく面白さや難しさを学びました。
  在仏中に、化学者を含む多くの物質科学者がいかに欧州の太陽系探査に関わっているのかを知り、将来的な日本の探査においても、ますますこのような分野横断型のチーム作りが必要になっていくだろうと感じました。その一助になりたいと思い、現在の研究機関を選びました。ここでは有機化学者は珍しく、研究環境も十分ではありませんでしたが、卓越研究員事業を利用して必要な研究環境を整備することができました。
  現在はサンプルリターンミッションに向けて、試料の有機化学分析法の開発や汚染の評価に関わると共に、将来的な太陽系探査に向け、探査天体上で分析可能な科学機器の開発も目指しています。周りは私にとっては異分野の工学系の方々が多く、ある意味、言葉も文化も違いますが、とても新鮮で学びの多い日々を過ごしています。理学と工学の橋渡し役として、さらに太陽系の彼方を目指して、新たな探査を創っていきたいです。

菅原 春菜さん

異分野融合により新しい人工細胞膜の
研究分野を開拓する

群馬大学
大学院理工学府 分子科学部門 助教
神谷 厚輝 さん(平成30年度卓越研究員)

  私は一貫して人工細胞膜を扱った研究を行っております。学位取得までは、人工細胞膜へ膜タンパク質を再構成し、膜タンパク質の工学的応用について研究をしておりました。ポスドク時代はマイクロ流体デバイスが専門の研究室で、真核細胞の細胞膜組成を模倣した人工細胞膜の作製に携わりました。私は化学や生物学が専門でしたが、マイクロ加工技術を習得することで、私自身の人工細胞膜研究の幅が広がったことを肌で感じました。研究室を立ち上げるためにはある程度の研究費が必要となるため、卓越研究員事業は非常に魅力的な制度でした。私の専門分野が活かせる化学や生物学分野で広く募集している大学に申請しました。私の所属する分子科学部門は化学から生物学の全般を研究対象にしておりますので、学際的な人工細胞膜研究を行う場として最適だと思います。研究室を充実した環境に整備ができ、初年度から学生が配属され問題なく研究が開始できました。今後は、国内外の研究者と共同で研究も行い、新しい人工細胞膜の研究分野を開拓していきたいと考えております。最新の研究に触れることができる場を学生に提供することで、社会で活躍できる学生を輩出していきたいと思います。

神谷 厚輝さん

どんなに認知度が低くても、どんなにニッチな研究でも、必ず意味はある。
突き進めば道は拓ける。

岡山大学
大学院社会文化科学研究科 講師
鈴木 真太郎 さん(平成30年度卓越研究員)

  中米「古代マヤ文明」の考古人骨を専門に、外国考古学の研究をしています。メキシコで大学院に通い、世界各地の学生達と切磋琢磨し学んだ経験が、私の研究者としての根幹です。しかし、この多国籍で、そして、とても競争的な環境は、ともすると独善的な思考に私を走らせました。そんな折出会ったのが、マヤ考古学の日本における第一人者の一人、金沢大学の中村誠一教授です。教授が現地で展開する発掘調査に長く参加させてもらい、地に足をつけた調査経験を積みながら、「協働する大切さ」を学びました。卓越研究員への応募も、実は教授に勧められたことがきっかけです。海外での研究に没頭しすぎるあまり、日本での研究ネットワークが全く構築できていなかった私には、卓越研究員というシステムに基づいた公正な公募審査はまさに渡りに船でした。現在所属している岡山大学は日本考古学で大きな実績のある考古学の伝統校です。考古学研究室で過ごす日々はとても刺激的で、毎日が充実しています。この恵まれた研究環境を活かし、日本考古学、外国考古学の垣根を超えた、人類史学としての考古学を推し進めることが私の目標です。

鈴木 真太郎さん

自分を信じ、一歩前へ
~重要かつ面白い研究を目指して~

大阪府立大学
大学院人間社会システム科学研究科 助教
藤井 佑介 さん(平成30年度卓越研究員)

  私は対流圏における粒子状物質の化学性状やその変化(粒子状物質が生成してから消失するまでの挙動)について、野外フィールド観測や室内実験を通して明らかにしようと試みています。現在、バイオマス燃焼が盛んな東南アジア地域を主なフィールド対象としており、積極的に海外の大学と共同で研究を行っています。熱帯地域における観測装置の安定稼働や設備以外にも、各国特有の文化や考え方に基づく交渉など、むしろ普段の研究(化学分析やデータ解析など)以外のところで苦労することが非常に多いです。しかし、その甲斐もあって多くの科学的な発見・理解に繫がっており、やりがいを感じています。卓越研究員事業に申請した理由は、若手研究者の期間に自由な発想に基づいて研究に取り組む(あるいは将来に向けてじっくり見直す)こと、設備・研究環境のベースを築くことが今の自分にとって必要不可欠であると考えたからです。実際、現在の所属機関において自由に研究に取り組むことができており、充実した日々を過ごしています。今後は現在の専門分野(大気環境科学)にとらわれることなく他の分野にも手を伸ばし、多様な学術研究に取り組んでいきたいと考えています。

藤井 佑介さん

データで既存の仮説を覆し、
分子レベルでの新規がん創薬標的同定と細胞の自己複製機構解明を目指す

千葉大学
大学院医学研究院 分子腫瘍学 講師
星居 孝之 さん(平成30年度卓越研究員)

  私の研究テーマは「細胞内シグナル伝達によるエピゲノム制御機構の解明」です。エピゲノム・転写制御の視点を切り口に、がん細胞や幹細胞がどのように増え続けるのかに興味を持ちつつ、がん創薬への応用を目指して研究を続けています。卓越研究員事業への申請のきっかけは海外留学からの帰国でした。PIとしての研究推進能力を養うために海外留学を決めたことから、留学後は必ず自分のテーマで研究したいと考えていました。正直な所、情報不足の中での応募でしたが、卓越研究員候補者に内定した後は千葉大学側に迅速に対応して頂いたおかげで、順調に話が進みました。また、先駆者の方々の意見をお聞きする中で独立までの過程を再考する機会があり、その直後の面接でラボに所属しつつも自分の研究を進めることを認めてもらったことから決心に至りました。現在の所属先の研究(固形腫瘍)と私の研究(白血病)は異なる点も多いですが、知識や技術を互いに補完しあえるため、非常に良い選択だったと思います。この卓越研究員としての5年間を足掛かりに、留学先で育てた研究を応用に展開させつつ、新しいテーマにもチャレンジし、真の独立した研究者を目指したいと思います。

星居 孝之さん

「知ること」は「みえる世界がかわること」

山形大学
理学部 助教
河合(久保田)  寿子 さん(平成30年度卓越研究員)

【これまでの研究経験、その経験から得たもの】
私は修士課程在学時から現在に至るまで、植物や緑藻、シアノバクテリアを用いて光合成に関する研究を行ってきました。研究を通して新しいこと学び、発見することで、自分を取り巻く世界は昨日と何も変わらないにも係わらず、世界の物や現象が違って見えるものでした。街路樹に目をとめて、一枚の薄い葉の中で今まさに起こっている光化学反応に思いを馳せる。何気ない日常風景に潜む、洗練された生物の仕組みに心を動かされる。そういった感動は、私自身を謙虚に、そして豊かにしてくれました。このように研究は今の私を作り、生き甲斐と生活の基盤を与えてくれました。

【研究内容、やりがい】
「光合成生物が光を集めるしくみを、蛋白質の立体構造から明らかにする」という研究をしています。
X線結晶構造解析などの手法を駆使して、目に見えないくらい小さな蛋白質のかたちを知ることができる、そして、そこから生物がもつ巧妙な仕組みを解明できることにやりがいを感じます。

【環境変化、今後】
着任して約半年後に第二子を出産したことで研究を中断しましたが、大学内保育所のサポートもありスムーズに復帰することができました。子供の体調によって思うように実験が進まないことも多く、焦ることばかりですが、一歩ずつでも研究を進めて行こうと試行錯誤しています。将来は、男女問わず子供を育てる研究者が、研究を諦めることなく続けて行けるようサポートをしていきたいと強く思っています。

河合(久保田)  寿子さん

迅速で多様性のある研究を目指し、
確固たる信頼関係で結ばれた人的ネットワークの構築に努める

岐阜大学
工学部 化学・生命工学科 物質化学コース 助教
高井 千加 さん(平成30年度卓越研究員)

  ポスドク時35歳で出産してから周囲と自身の「女親=育児」という無意識のバイアスに悩み研究者としての一歩を踏み留まっていた。若手研究者交流事業(スイス枠)に採択され家族の協力を得て単身留学した際、驚くほど母親の単身留学が受け入れられ拍子抜けであった。多様な育児の形態があってよい、私なりの研究者人生を進めばよいのだと思えるようになり、教員へ挑戦する覚悟ができた。卓越研究員の年齢要件は40歳未満。申請当時私は39歳。後がない。必死で申請書を書いた。
  帰国後三カ月経た2018年11月、晴れて助教として岐阜大学工学部に着任した。二年間支給される研究費を粒子合成・評価装置に充て、研究開始できる環境が迅速に整備できたことに感謝している。2019年度は三名の学部生の指導に当たり,光学異常散乱を引き起こすナノ粒子のマルチスケール構造制御技術の開発に楽しく従事できた。二社の企業経験、育児、留学、学外活動を通じて得た様々な人的ネットワークを駆使し、コース、学科、学部、機関、国の垣根を越えた多様性のあるチームで、メンバーがお互いに信頼し合って研究を進めていけるよう、研究者である前に一人の人間として魅力的でありたいと思う。

高井 千加さん

研究活動をやるにあたり、大切にしている信条は
「自分が真に重要だと思う問題を研究する」ことです。

東海大学
創造科学技術研究機構 特任講師
倉重 宏樹 さん(平成30年度卓越研究員)

  私はこれまで、生物工学に始まり、複雑系科学、計算論的神経科学,認知神経科学、人工知能、心理学等,様々な分野での研究を経験してきました。それは自分が真に重要だと思う問題が何かを探る道だったと思います。その中で、私は人間が自らをいかに成長させ、発展させていくかを解明することが、自分が真に重要だと思う問題だと考えるようになりました。この観点から、いまは人の知識獲得や知識生成の問題に行動実験・脳計測実験を中心とした方法で取り組んでいます。今後はこれを発展させ、人間の知識成長を定める法則を明らかにし、それを模倣した、もしくはそれと相補な知識成長をする人工知能の開発にも取り組んでいければと思っています。卓越研究員事業に申請したのは、自由で独立し、研究に十分な時間が割ける立場を求めたからです。その中でも現在の所属を選んだのは、私の研究上のアプローチは必要ならばどのような方法でも使うというものであり、そのような幅広いアプローチによる研究が行えると感じたからでした。実際、いま現在そのような研究ができています。この機会を生かし、重要と思う問題の追究を通じ、科学技術の発展に寄与したいと考えております。

倉重 宏樹さん

新物質を創製し、余すところなく
機能を引き出す

九州大学
先導物質化学研究所 准教授
アルブレヒト 建 さん(平成30年度卓越研究員)

  これまでに行ってきた研究を更に発展させて飛躍するためには独立して研究室を主宰することが理想だと考えていたのでテニュアトラック制を原則とし、スタートアップにも使用可能な研究費が支給される卓越研究員制度は魅力でした。現在の所属の公募はやや自身の専門分野とは異なっていましたが採用していただき、研究所からの支援もあってスムーズに研究を立ち上げることが出来ました。現在はこれまで研究してきた高分子や有機半導体をベースにしつつ公募分野であったエネルギー材料を専門とするメンターの先生とも協力しながら新しい分野に挑戦出来ています。有機合成を主体として新物質を創製し、それを様々な分野に展開して材料(分子)の機能を最大限に引き出したいと日々考えており、そのために国内外の研究者と積極的に共同研究を展開し始めています。PIとしてのマネジメント業務や講義などの経験も積みつつ、インパクトのある研究を生み出す土壌として居心地のよい研究室環境を整えていくのが当面の目標です。

アルブレヒト 建さん