日本学術振興会

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卓越研究員事業

卓越研究員の声
Voices from EYRs

これまでに決定された卓越研究員は、全国の産学官の研究機関をフィールドとして活躍しています。こちらで、一部ご紹介しています。
※ 掲載内容(所属、職名等)は執筆時のものです。


平成28年度 卓越研究員からの声

のびのびとした研究環境における
研究領域の拡大と国際連携の加速

奈良先端科学技術大学院大学
先端科学技術研究科情報科学領域 教授
林 優一 さん(平成28年度卓越研究員)

  博士号を取得した後、ハードウェアセキュリティの研究に取り組んできました。ハードウェアセキュリティは融合領域の研究分野であり、異なる分野の研究者と議論を重ねながら、チームにより研究を進めることが多く、チームで研究成果を挙げることの重要性を日頃から感じていました。そうした中、研究室を主宰し、運営できる卓越研究員事業の公募があり、「自らの研究室で様々なバックグラウンドを持つ研究者を募ってチームを編成し、研究領域を拡張してみたい」という思いが強くなり、応募しました。受け入れ機関として奈良先端大を選んだ理由は、自由な研究環境と更新の早い最先端の研究設備、研究を実施するための十分なスペースの提供があり、さらに、ハードウェアセキュリティ分野の研究者を募集していたため、自分の考えるキャリアパスにマッチしていると考えたからです。奈良先端大着任後は、研究室運営のノウハウなど広範囲の助言等を行う経験や知識のあるメンター教員のサポートもあり、二国間交流事業・共同研究にも採択され、卓越研究員事業によって整備された自立的研究環境を最大限活用することで、国際連携も加速しました。今後は得られた成果の社会還元を目指すと共に、世界で活躍するグローバル人材の育成も行いたいと考えています。

林 優一さん

学生とともに、グローバルな視野での研究活動を

大阪大学 大学院情報科学研究科 准教授
菅野 裕介 さん(平成28年度卓越研究員)

 私は主に、コンピュータビジョンとヒューマンコンピュータインタラクションの研究に従事しています。東大で博士号を取得した後、特任助教を経て、阪大に着任する前はドイツのマックスプランク研究所にポスドクとして在籍していました。変化の激しい情報分野ではありますが、論文という形で自分のアイデアを発信し、他の研究者との繋がりが学会での議論や論文引用、共同研究を通して世界中に広がっていくスピード感を体感できるのには大きな喜びがあります。学生時代から長年取り組んでいる画像ベースの視線推定も最近では徐々に研究事例が増え始めており、自分にとってはこうした研究者同士の知の連鎖に参加する楽しみが 研究の原動力になっているように思います。現在もドイツ時代の同僚との共同研究は続いている他、新たな研究予算・プロジェクトも徐々に立ち上がりつつあります。大学に身を置く以上は教育も重要な責務ですが、研究者として国際的な舞台に立つ楽しみを自分だけではなく学生にも体験してもらうのを一つの目標にしていますし、それが国立大学でのポジションを選んだ動機の一つになっています。成果ももちろんですが、研究参加が学生の視野を広げるきっかけになってくれればと思いながら研究と指導を進めています。

菅野 裕介さん

実験の結果を疑わず、自分の知識を伸ばし、積極的にディスカッション

産業技術総合研究所 研究員
洪 達超 さん(平成28年度卓越研究員)

 私は博士号を取得後、アメリカ1年、日本2年と約3年のポスドクを経て、現在の産総研に着任しました。これまでの研究経験から、とにかく、論文と申請書を早いうちに多く書くことが必要と感じました。そのためには、実験はもちろん、多くの研究者とディスカッションをし、自分のアイディアを具現化していくことが重要と思います。お陰様で、私は学振DC、PDそして卓越研究員と、博士学生のときからJSPSにお世話になっています。卓越研究員候補時に3つの機関に申請し、2つの面接を受けました。現在の所属部署は、研究 環境に恵まれ、自由闊達な雰囲気があり、決め手となりました。また、基礎研究のみでなく、企業と共同研究に取り組む機会もあり、自身の研究の幅が広がっていくことを実感しています。現在は申請書の計画である水、酸素や二酸化炭素といった小分子を活性化する触媒の研究開発に取り組んでいます。また、企業との共同研究も数件携わっています。今後は「化学への高揚感や好奇心」という初心を忘れずに、着実に研究を軌道に乗せていきたいです。また、産総研の研究は多岐にわたっており、貴重な環境であり、積極的に自身の研究に取り組み、分野を広げていきたいと考えています。

洪 達超さん

医工芸連携により音楽表現の継承・進化を目指すトランスレーショナル研究

ソニーコンピュータサイエンス研究所 アソシエートリサーチャー
古屋 晋一さん(平成28年度卓越研究員)

【これまでの研究経験、その経験から得たもの】
工学や医学の教育・研究機関で知識と技術を習得し、音楽大学での勤務で現場の問題を肌で感じる経験を、日本、アメリカ、ドイツで積んできました。現場の問題を純度を落とさずに研究に落とし込む考え方や、様々な国の多様な価値観を持つ研究者らと連携して研究に取り組む方法を学びました。
【今の機関を選んだ理由】
既存の学問領域の枠組みを超え、目的志向の研究に専念する環境を提供してくれる、唯一無二の研究機関であり、各研究者が新しい社会を創造するための独創性とビジョンを持って研究に取り組んでいるためです。
【今の機関での研究内容、やりがい】
演奏技能と音楽表現を継承・進化させるため、身体教育というアプローチによって最適な練習法・演奏法、リハビリの開発に取り組んでいます。研究における個々の選択が、ビジョンの実現のために最適かを常に考え続けるマインドセットと知的体力が求められる妥協の無い環境に、強いやりがいを感じています。
【研究活動で大切にしていること】
音楽家の抱える問題を、様々な学問の知識と技術を結集して解決する学際的なアプローチにより得られたエビデンスが、応用意義と学術意義を備えていることを目指しています。
【今後どのように研究に取り組んでいこうと考えているか】
音楽演奏のゴールは、スポーツの「速く、強く」といった単一の明確のゴールとは異なり、複合的です。演奏家のニーズの本質を絶えず正確に捉え、最先端の技術と思考を融合することで、表現の未来を切り拓くための最良のサポートを実現することを研究姿勢の根幹に据えています。

古屋 晋一さん

理論物理と計算科学を軸に事業を通じて社会に貢献。
実験との対話によりスピード感ある研究開発を。

パナソニック株式会社 主任研究員
市川 和秀さん(平成28年度卓越研究員)

 私は宇宙物理の分野で学位取得後、大学で助教職を得るにあたり量子物性・化学へと分野を変更し、研究・教育に従事してきました。未知の物理・化学現象を明らかにするべく多種多様な方々と共同研究を行う中で、広く理論物理学と計算科学の知識・技術を身につけ、コミュニケーション能力・管理能力を培ってきました。現機関を選んだ理由は、工学系の職場に転向して研究教育を行う中で人や社会に役立つ仕事への関心を強くしていたところ、人々の暮らしの向上と社会の発展への貢献を標榜するパナソニックが計算科学の人材を募集していたためです。特に、現在取り組んでいる次世代電池の開発は人々の暮らしと社会を大きく変えるものであり、そのような研究にこれまでの経験を活かして携われることは大きなやりがいです。研究活動を行う上では実験を行う人とのコミュニケーションを大切にし、実験に役立つ計算はなんだろうかということを常に考えています。また、学術的研究と違う点ですが、成果が事業貢献に結びつかなくてはならず、スピード感も重要です。そのためにも今後はデータ科学・インフォマティクス分野の技術を活用し、理論をシミュレートする計算科学との両方向から研究に取り組むことを考えています。自然の真理を探求することで得た経験を社会に還元する道は学術機関での研究教育だけではなく、企業においてこそ発揮されるものもあることに目を向けていただければと思います。

市川 和秀さん

国際的なネットワークを生かして、多様な専門分野に携る
研究者と協力しあいながら取り組む、文理融合の研究体制

東海大学 創造科学技術研究機構 特任講師
田口 かおりさん(平成28年度卓越研究員)

 私の研究主題は、美術作品の保存修復学です。イタリアのフィレンツェで絵画修復士補の資格を取得し、工房に勤めて14~16世紀の作品群の修復に従事した後、帰国して大学院に進学しました。修士から博士後期課程にかけては、近代に成立した保存修復理論と技法の連関について、研究を進めてきました。近年は、芸術を「なおす」行為の変遷史を、医学や科学等との交わりから考察し、再構成することを試みています。また、国内外の専門家や美術館と連携して、国内の美術作品を対象に調査を実施し、新たな知見の公開を行っています。
本機関が募集していた卓越研究員像の「複数の学問領域を横断し、新たな歴史学を開拓する」「文理融合の研究」というキーワードは、理論と実践の両面からアプローチする保存修復学の完遂を目指していた私にとって、魅力的なものでした。機関には作品の素材や技法の分析を行うのに最適な設備が整っており、また、理工学や医学分野の優れた研究者が在籍しているので、学部の枠を超えた横断的な協力体制を生かした研究が可能です。
現在は、素材の交換・消滅・再現などが保存上多様な問題を引き起こして来た現代美術の作品群を対象に研究を進めていますが、なかでも今後の研究課題として主軸に据えているのが、現代美術が放つ「臭気」をめぐる研究です。保存修復の観点から、美術作品が放つ「匂い」について行われた先行研究は、国内外にほとんど例がありません。昨年は、ニューヨーク近代美術館(MoMA)などと連携し、国際シンポジウム等を開催してきました。展示収蔵や保存方法を具体的に実践する試みとあわせて、美学や社会学の視座からも、研究課題を検証していきたいと考えています。

田口 かおりさん

変化することができる研究者
~ いつでも、どこでも、どんな状況でも生き残るために ~

住友化学株式会社 先端材料開発研究所 研究員
西野 信也 さん(平成28年度卓越研究員)

【これまでの研究経験、その経験から得たもの】
数理モデルを用いた基礎研究から大規模シミュレーションを用いた応用研究、実際の材料開発にコンサルティングやシステム開発、振り返ってみればプロの研究者になってから大学・企業を通して6つのポジションを渡り歩いてきました。このキャリアを通じて、分野横断型の新しい研究テーマの創出方法、常に新しい事へ挑戦する姿勢、どのような環境にも適応できる柔軟性を育みました。
【今の機関を選んだ理由】
ゲームチェンジを引き起こすようなチャレンジングな基盤研究課題が設定されており、それを実際の開発現場と連携しながら進められる体制の整備と、課題を解決するための計算科学に関するしっかりとした下地と十分な計算資源が用意されていたため。
【今の機関での研究内容、やりがい】
AIを活用した材料研究開発に取り組んでいます。近年急速に発展 しているこの研究領域は、数理科学・計算科学・情報科学・材料科学が融合した領域ですが、これらの分野は私が積んできたキャリアそのもので、この経験を活かして研究開発のイノベーションを生み出し、開発テーマを事業へと繋げる事には大きなやりがいがあります。
【研究活動で大切にしていること】
広い分野にわたる俯瞰的な視点を持ちつつ新しい技術動向に常に目を配る事。一方で、企業での研究開発で重要となる開発目的・開発期間を考慮した必要な技術の取捨選択、分析項目の絞り込みを実践する事。
【今後どのように研究に取り組んでいこうと考えているか】
技術の進展や変化が激しいこの時代においては、自分が現在持っている知識・技術や研究環境・資源だけでは研究が立ち行かなくなってしまう場合があります。ですので、新しい課題にチャレンジし続ける事、変化に対応できる基礎力を高める事、どのような環境にも適応して課題をやり遂げる事、場合によっては環境を変える事、これらを続けていくことが大切だと考えています。

西野 信也さん

計算科学による研究を通じて優れた機能材料の実現に貢献し、
社会に役立てたいと考えています。

産業技術総合研究所 研究員
屋山 巴さん(平成28年度卓越研究員)

 私は機能材料の研究開発を通じて、社会が抱える課題の解決に貢献したいと考え、計算科学の手法を用いて研究を行っています。そのために、基礎研究だけでなく、実用に近い段階での研究に関わりたいと考えてきましたが、産業技術総合研究所は、日本の産業や社会に役立つ技術の創出とその実用化や事業化に繋げることを目指す特色ある研究所であることから、応募を決めました。研究では、これまでのIII族窒化物や、遷移金属合金に関する研究経験から、化合物や複合材料に興味を持っています。単体の性質は元素に固有のものですが、化合物の性質は、元素やその割合の無数の組み合わせによって多様に変化します。無数の組み合わせの中から効率的に優れた材料を発見し、実現してゆくために、理論による予測と理解を通じて役割を果たしたいと考えています。現在は、これまでの経験を基盤として窒化物に関する研究を行うほか、新たな手法も習得しています。今後も有機高分子材料に研究対象を広げる予定であるなど、勉強することも多く、刺激を受ける日々です。基礎研究が実用段階に至るまでには、スケールや取り扱う技術の違いなど多くの超えるべき壁が存在しますが、様々な手法を広く理解し融合させて、これらの壁を突破する、独自の研究を行いたいと考えています。

LEADER program giving me wide opportunities to develop research from different perspectives, approaches and also to be an independent researcher.

Fukushima Renewable Research Center, National Institute of Advanced Industrial Science
and Technology (AIST) Researcher
ARIF WIDIATMOJOさん(平成28年度卓越研究員)

 A research is conducted to address scientific and/or engineering problems that deal with global challenges. Thus, it requires contributions from the wide range of scientific and industrial communities as well as experts across the globe (i.e. research collaboration). To the wider extent, not only to conduct independent researches, researchers should also be able to bridge multidisciplinary researches to allow the expansion of research beyond their basic expertise. Being selected as one of the EYR, I have wide opportunities to realize it.
In my university time, I did researches related to Earth resources utilization, including, energy, mining and petroleum. The AIST is one of the biggest national research institute in Japan, which has gained international reputation with numerous research achievements. Upon joining AIST about a year ago, I started a new research topic which actually I never did before. Currently, my research is about energy saving Ground Source Heat Pump (GSHP) utilization, in which members of our research team attempt to introduce new ideas and breakthroughs in optimizing the efficiency of GSHP system. Our research team aims to accelerate the use of GSHP particularly in 2011 disaster affected area as well as nationwide and overseas. I believe that the research outcomes will be useful for scientific communities, industries and societies not only Japan but also worldwide.

ARIF WIDIATMOJOさん