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根本 香絵 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構 FoS参加歴: |
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日米先端科学(JAFoS)シンポジウムには、カリフォルニア州アーバインで開催された第7回(2004)に初めて参加しました。このときは、参加者として、その後の3年間はPGM(Planning Group Member)として参加することになりました。今振り返ってみても、JAFoSを通して日米の素晴らしい研究者にお会いできたことはたいへん有意義であったと思います。4回のJAFoSでの議論や異分野の研究者との会話を時々鮮明に思い出しますし、PGM会議では、Session Topicsを巡って様々な最先端科学の話題が議論され、異分野の視点や時には事情といったことが伺え興味深かったこと、コーヒーブレークや夕食時の雑談時には、最先端科学に限らず様々な話題がリラックスした雰囲気の中で盛り上がり、楽しいひとときであったと同時に、とても参考になるものだったり、考えるヒントにもなりました。そのときの議論をもう一度考え直してみたり、お会いした日米の新進気鋭の研究者のその後の活躍を思ったりしています。
今年は特に、重力波検出のニュースがあり、JAFoSでのDetecting Gravitational Wavesセッション(第10回)のことを思い出しました。宇宙のかなたで起こるブラックホールの衝突といったスケールの大きな話に、会場からは「(そんな壮大な話に)どうやって予算を準備したのか」といった冗談交じりの質問も出たほど、議論は大いに盛り上がりました。あれから10年を経ずに、ついに重力波検出に成功したことになります。その他にもExtra dimensions of space(第8回)やSlow light(第9回)など自分の専門に近いところではセッションの準備を含めて懐かしく思い出します。一方で、地震学(第8回)、瞑想と脳、人類の進化、気候変動(以上、第9回)、インフルエンザ、渋滞学(以上、第10回)など、様々なテーマが実に面白く、広い視野をもって構成された講演は多くの活発な議論を生みました。いろいろな意味で刺激的で、正直で、最先端科学ならではの面白さに満ちており、今でも新鮮に感じることもあります。JAFoSでは、そこでしかできない経験をさせていただいたと感じます。
JAFoSでは、日米の各分野の新進気鋭の研究者が集まり、自分たちでテーマを選定し、講演の組み合わせなどを一緒に考えながらセッションを準備して、最先端の話を聞き、議論します。これが科学者にとって面白くないわけがありません。通常の研究の場面では、「面白い」ことは、研究に「役に立つ」ことに必須であって、「面白い」ことと「役に立つ」ことは密接に繋がっており、そこにあまりギャップはないのですが、FoSではほとんどが自分の研究分野の話ではありません。ここが、FoSならではのチャレンジングなところです。FoSのおもしろさというのは様々で、その受け取り方も研究者次第、つまり参加者ひとりひとりがその面白さ、意義、重要性を考え、学び育てていくことが求められているとも言えます。一言で言うと、国際的な環境での主体性の実践となるわけですが、これからの日本でまさに重要な観点であるようにも思います。実は日本ではこういった機会は意外と少なく、FoS事業はその貴重なひとつではないでしょうか。
一方で、参加当時よりも、年を経るごとにより考えさせられることともあります。そのひとつが米国の科学者の層の厚さです。日本はどうしても表層的で、人選で苦労することが多かった思い出があります。日本でも若い研究者を「若手」とばかり捉えていないで、中核的な研究者として、その役割をしっかりと担ってもらえるような登用や機会がもっと普通にあっても良いのかもしれません。FoS事業で実現できたことが、FoSの枠を超え、日本の最先端科学全体へと広がっていくことこそが、最先端科学をはぐくむ環境や土壌、文化が育っていくことに繋がるのではないかと期待しています。
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【第8回JAFoS:PGMへの花束贈呈】 | 【第10回JAFoS】 |