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私が初めて日仏先端科学(JFFoS)シンポジウム参加の話を頂いたのは2012年の3月のことであった。当時の私はFoSについて全く知らなかったので、知り合いの先生に問い合わせてみたところ、「私は参加したことないけど、面白いらしいよ」という返事が返ってきた。参加したことのない人の意見を鵜呑みにしてもいいのか、という考えが頭をよぎらなかったと言えば嘘になるが、「面白いらしい」の一言に惹かれて参加を決めた。
このような軽い気持ちで参加することにしたものの最初は不安もあった。それまで研究会といえば同じ分野の研究者が集まる学会にしか参加したことがなかった。これだけ幅広い分野の研究者が自分の専門分野の話をしてお互いを理解することなど本当にできるのかと考えたのは私だけではなかったであろう。しかし実際に参加してみるとそんな心配は全く無用であった。私はそれほど視野の広い人間ではないし、人と話すのも得意ではない。毎年参加している学会の時ですら、人前に立つと緊張して声が震えてしまうこともある。しかし不思議なことに一旦シンポジウムが始まってしまうと、FoS特有の雰囲気に飲み込まれて、気がついたらこれまで接することのなかった分野の先生方の話にどんどん引き込まれていった。
JFFoSで私がセッションと同じくらい魅力的に感じたのは国籍も専門分野も違う約80人の研究者とともに3日間、朝食から寝る直前まで一緒に過ごした時間である。セッションが研究者同士の真剣勝負であるのに対し、食事やカルチャーツアーの間はお互いの文化や研究環境、あるいは教育システムの違いなどについて時間をかけて話し合うことができた。研究以外の趣味について語り合うこともあったし、美味しいものを食べることの大切さについて熱く語ってくれたフランス人研究者もいた(彼はお寿司が大好きだった)。このような貴重な時間と経験を通じて、専門分野の枠を超えた研究者との繋がりができるのもFoSならではであろう。
2013年1月に開催された第7回JFFoSにスピーカーとして参加した私は第8回、第9回JFFoSでPGM(企画委員:Planning Group Member)を勤めることになった。PGMの重要な任務はセッションテーマの選定であるが、これは(少なくとも私にとっては)なかなか大変な仕事であった。テーマはホットであるだけでなく、聴衆を引きつける魅力を持つものでなければならない。日仏双方にチェアやスピーカーの候補となる研究者がいることも重要である。JFFoSの場合、7つの分野(第7回までは8つ)に細分化されているとはいえ、カバーしなければならない範囲は広い。PGMは最終候補に残ったテーマについてプレゼンテーションを行い、PGM同士の投票によってテーマを決定するが、この段階で支持を得ることができなければ本番を成功させることなどできないので真剣である。その分、準備にはずいぶん時間をかけることになったが、このような機会がなければ自分の専門から離れた研究分野についてこれほど深く調査することはなかったであろう。その意味で、PGMの経験は、異分野の重要性を客観的な立場から理解する貴重な機会となった。
現在、大学の教員は研究や教育以外の業務が多く、疲弊していることもある。時にはわずかな時間で成果を出すのに精一杯で、自分でも気づかないうちに細分化された「専門分野」という殻に閉じこもっていることもある。そんなときにはJFFoSに参加した時のことをよく思い出す。時代の最先端をいく研究者たちが、好奇心に満ちあふれた子供のように目を輝かせながら話していた姿を思い出すと「研究を楽しむ」ことの大切さをあらためて意識することができるからである。
JFFoSは一言でいうと私がこれまで参加したシンポジウムの中でもっとも「夢のある」シンポジウムであった。それゆえに今後も若い世代の研究者に参加の機会を作ってほしいと願っている。
最後に、3年間お世話になった、事業委員、専門委員の先生方、そしてJSPS研究協力第一課・先端科学シンポジウムの担当の皆様に心よりお礼申しあげます。
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【第7回JFFoS: プレゼンテーション】 |
【第8回JFFoS: レセプション】 |
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【第9回JFFoS 左:PGM会議、右:PGM】 |