国際生物学賞
International Prize for Biology第42回国際生物学賞の受賞者決定
独立行政法人日本学術振興会(理事長 杉野 剛)は、7月10日に国際生物学賞委員会(委員長 藤吉 好則:東京科学大学総合研究院特任教授)を開催し、第42回国際生物学賞の受賞者を米国のスタンフォード大学生物学部 スティア=ファイザー生物学教授 シャロン・ルーゲル・ロング博士(75歳)に決定しました。今回の授賞対象分野は「共生(種間相互作用)の生物学(Biology of Symbiosis [interspecific interactions])」です。
アメリカ・スタンフォード大学教授のシャロン・ルーゲル・ロング博士は、マメ科植物の根に共生する根粒菌(細菌の一種)とマメ科植物が、相互を適正なパートナーとして認識し、根粒共生とよばれる共生関係を成立させる仕組みを解明した。マメ科植物は、ほとんどの生物が直接利用できない大気中の窒素ガスを栄養源として利用できる。これは、根粒菌が宿主植物の根に形成される根粒の内部に共生し、窒素ガスを固定して宿主植物に窒素栄養として供給することによるものである。この共生関係には「宿主特異性」が存在し、アルファルファとエンドウはどちらもマメ科植物であるが、アルファルファ根粒菌はアルファルファとは共生できる一方、エンドウとは共生できない。ロング博士が研究を開始した当時、根粒菌とマメ科植物が、どのように互いを認識して根粒共生を成立させるのか、その分子メカニズムはほとんど解明されていなかった。ロング博士は、根粒菌と宿主植物の双方を対象とした分子遺伝学、生化学、細胞生物学的研究により、宿主特異性のメカニズムを解明した。
ロング博士は、宿主植物の根から分泌されるフラボノイドが、共生に必要な根粒菌の nod 遺伝子群の発現を誘導することを明らかにした。また、nod 遺伝子群がコードする酵素群によって合成される感染シグナル分子「Nod factor」の発見と機能解明にも大きく貢献した。例えば、アルファルファから分泌されるフラボノイドの一種であるルテオリンはアルファルファ根粒菌のnod遺伝子発現を誘導するが、他の根粒菌のnod遺伝子発現を誘導できない。すなわち、宿主植物が分泌するフラボノイドが、パートナーとなる根粒菌のNod factor合成を誘導していることが明らかとなった。
さらにロング博士は、Nod factorが宿主植物に及ぼす作用の解明にも大きく貢献した。Nod factorの構造は根粒菌の種類ごとに異なる。ロング博士はアルファルファ根粒菌のNod factorが、アルファルファの根の細胞内でカルシウムイオン濃度の周期的な変動(カルシウムスパイキング)を引き起こす一方で、他の根粒菌のNod factorはアルファルファにカルシウムスパイキングを誘導できないことを明らかにした。さらに、共生能力を失ったアルファルファの変異体にアルファルファ根粒菌のNod factorを投与しても、カルシウムスパイキングが誘導されないことを示し、根粒共生の成立にはカルシウムスパイキングが必要であることを明らかにした。
ロング博士は、フラボノイドとNod factorを介した宿主植物と根粒菌間の「分子対話」が、宿主細胞内のカルシウムスパイキングへと変換され、それによって根粒共生が開始されることを明らかにした。その学術的貢献は極めて大きく、ロング博士が第42回国際生物学賞の授賞対象分野「共生(種間相互作用)の生物学」の受賞者として最もふさわしいと判断し、授賞を決定した。
ロング博士は、これまでに158報の学術論文を発表、それらの総被引用回数は17,000回を超える(Scopus, 2026年7月現在)。また、優れた研究者であると同時に、教育者としても高く評価されている。
※授賞式は12月頃に、日本学士院会館において実施予定です。
ロング博士は、宿主植物の根から分泌されるフラボノイドが、共生に必要な根粒菌の nod 遺伝子群の発現を誘導することを明らかにした。また、nod 遺伝子群がコードする酵素群によって合成される感染シグナル分子「Nod factor」の発見と機能解明にも大きく貢献した。例えば、アルファルファから分泌されるフラボノイドの一種であるルテオリンはアルファルファ根粒菌のnod遺伝子発現を誘導するが、他の根粒菌のnod遺伝子発現を誘導できない。すなわち、宿主植物が分泌するフラボノイドが、パートナーとなる根粒菌のNod factor合成を誘導していることが明らかとなった。
さらにロング博士は、Nod factorが宿主植物に及ぼす作用の解明にも大きく貢献した。Nod factorの構造は根粒菌の種類ごとに異なる。ロング博士はアルファルファ根粒菌のNod factorが、アルファルファの根の細胞内でカルシウムイオン濃度の周期的な変動(カルシウムスパイキング)を引き起こす一方で、他の根粒菌のNod factorはアルファルファにカルシウムスパイキングを誘導できないことを明らかにした。さらに、共生能力を失ったアルファルファの変異体にアルファルファ根粒菌のNod factorを投与しても、カルシウムスパイキングが誘導されないことを示し、根粒共生の成立にはカルシウムスパイキングが必要であることを明らかにした。
ロング博士は、フラボノイドとNod factorを介した宿主植物と根粒菌間の「分子対話」が、宿主細胞内のカルシウムスパイキングへと変換され、それによって根粒共生が開始されることを明らかにした。その学術的貢献は極めて大きく、ロング博士が第42回国際生物学賞の授賞対象分野「共生(種間相互作用)の生物学」の受賞者として最もふさわしいと判断し、授賞を決定した。
ロング博士は、これまでに158報の学術論文を発表、それらの総被引用回数は17,000回を超える(Scopus, 2026年7月現在)。また、優れた研究者であると同時に、教育者としても高く評価されている。
※授賞式は12月頃に、日本学士院会館において実施予定です。
シャロン・ルーゲル・ロング博士の受賞を記念して、奈良先端科学技術大学院大学及び日本学術振興会との共催により、記念シンポジウムを12月19日(土)及び20日(日)に奈良において開催する予定です。