学振トピックス
JSPS Topics研究者インタビュー|佐竹 暁子先生
佐竹 暁子(さたけ あきこ)
九州大学 大学院理学研究院 教授
略歴
1974年生まれ。博士(理学)。九州大学大学院理学研究院博士課程修了。日本学術振興会特別研究員DC1(1999年)、PD(2002年)、日本学術振興会海外特別研究員(2005年)、北海道大学創成科学共同研究機構特任助教(2008年)、准教授(2011年)、九州大学大学院理学研究院准教授(2015年)を経て現職。2023年から2026年まで日本学術振興会学術システム研究センター生物系科学専門調査班主任研究員。2028年から日本生態学会会長に就任予定。
学術システム研究センターの専門調査班
生物系科学専門調査班
1974年生まれ。博士(理学)。九州大学大学院理学研究院博士課程修了。日本学術振興会特別研究員DC1(1999年)、PD(2002年)、日本学術振興会海外特別研究員(2005年)、北海道大学創成科学共同研究機構特任助教(2008年)、准教授(2011年)、九州大学大学院理学研究院准教授(2015年)を経て現職。2023年から2026年まで日本学術振興会学術システム研究センター生物系科学専門調査班主任研究員。2028年から日本生態学会会長に就任予定。
学術システム研究センターの専門調査班
生物系科学専門調査班
裏方としてJSPSの事業に尽力
学術システム研究センターの主任研究員としてのお話をいただいたのは、2022年師走に入り、年の瀬が近づいた頃でした。大学からの推薦を経たものではなく、事務局からの突然の打診ではありましたが、これまでセンター研究員を務められた先生方から業務内容についてお話を伺う機会を得ることができました。その中で、本業務が大きな責任を伴う一方で、やりがいのあるものだと知り、私もやらせていただこうと心を決めた次第です。承諾のお返事を差し上げるにあたり、同僚の先生方からの理解は特に重要だと考え、九州大学において私が所属する部局で責任ある立場におられる先生方には、大学業務への影響の可能性についても事前にご相談申し上げ、ご理解とご了承をいただいた上で、お引き受けすることを決意しました。
2023年4月から主任研究員に就任しましたが、同時に科研費の大型研究種目の学術変革領域研究(A)の領域代表も務めることになり、同年の4〜5月はまさに人生の修羅場でした。それから3年が経過し、学術システム研究センターを卒業した今振り返ると、こうした修羅場を乗り越えることで、自身を一回り成長させていただいたことに感謝の気持ちでいっぱいです。センター研究員を経験する前と後では、景色が違って見えます。特別研究員時代からの支援、そして現在も科研費によって研究を継続できているその背後には、数多くの関係者の方々(事務局と研究者の両者)が、いわば完全な裏方として尽力されていることを、身を以て理解することができました。以下に、記憶の及ぶ範囲ではありますが、業務の内容を記します。
4月から初夏にかけては、国際先導研究など応募締切の早い研究種目の審査意見書作成候補者の選考や、挑戦的研究(開拓)合議審査への陪席、そして基盤研究種目の審査の検証や審査委員候補者の選考の業務があります。日本学術振興会は独自の選考システムを有されており、システム上で各研究者の審査委員経験、科研費採択履歴、業績と審査の検証結果などが閲覧できます。初めは、先輩のセンター研究員の方から丁寧に教えてもらいながら、システムの使い方にも慣れ、信頼をおける審査委員候補者を選ぶよう努めました。研究者コミュニティーにおいては、一度評価されるとそれがさらなる評価につながるという正のフィードバックが存在し、その結果として審査委員の顔ぶれが固定化するリスクがあると感じました。そのため、これまで審査委員の経験が少ないものの、誠実かつ的確に審査を担っていただけると考えられる研究者を積極的に発掘するよう心がけました。
初夏からは、そうした業務に加え、日本学術振興会賞の査読や育志賞の予備選考が始まります。応募される方々はいずれも大変優れた研究業績を出されている方ばかりです。研究業績として挙げられた論文を読ませていただくことは大変刺激的で貴重な経験となりました。一方で、限られた人数に推薦候補者を絞り込む過程は、毎年きわめて困難を伴うものであることを実感しました。研究業績の優秀さのみならず、将来の日本の学術の発展と裾野の拡大に繋がるかという広い視点から評価を行うよう努めました。
育志賞では面接候補者を絞り込んだ後、秋になって面接が実施されます。この面接は毎回情熱に満ちた面白い発表を聞かせていただき、業務の中でも特に印象に残るものでした。若い研究者が着実に成果を積み重ねている様子を間近で見ることができ、日本の学術の将来を感じる機会でもありました。秋から冬にかけては、科研費説明会への参加や大型研究種目の合議審査への陪席・検証も重なり、忙しさは続きますが、それぞれの現場で学術を支える仕組みを肌で感じる、密度の濃い時間となりました。
年度末には、これらの業務もひと段落し、3月に開催される年度最後の主任研究員会議では送別会が設けられます。人文学・社会科学・自然科学といった多様な分野の研究者や事務局の方々との交流は、気づけば三次会にまで及び、非常に楽しいひとときとなりました。また、生物系科学専門調査班では、3月に各地で学術動向調査合宿が開催され、毎回センター研究員による研究発表に加え、科研費改革や若手研究者の育成、アカデミアの将来などについて、夜遅くまで議論が交わされます。その雰囲気はどこか高校時代の部活動を思わせるような、熱意に満ちたものでした。九州大学ではまだ数の限られる女性教授として、時に孤立を感じることもありましたが、男女比がほぼ均等※なこうした場において、それらを共有し多様な意見交換ができたことは非常に貴重な経験であり、自身にとって大きな支えとなりました。また、女性研究者は多くの委員や業務を依頼されることで、自らのサイエンスがだめになるリスクが高いと感じていましたが、裏方で重要な業務を引き受けながら研究でも一流の成果を出しておられる女性研究者の方々とお会いできたのも、大変刺激になりました。
このように各センター研究員に割り当てられる業務に加え、主任研究員会議をはじめ、科研費ワーキンググループ、特別研究員ワーキンググループ、さらには科研費改革推進タスクフォースといった会議にも参加し、現行制度の見直しや改革に関わる重要な議論に携わります。これらの会議では、日本のみならず世界の学術動向を踏まえた高い視座から議論が行われ、各分野や研究機関で実際に起きている課題や変化について知る機会となり、毎回多くの示唆を得ました。加えて、主任研究員の先生方による学術動向調査の報告も定期的に行われ、自身の専門分野にとどまらず、他分野の最先端の研究や動向に触れることができた点は、非常に貴重な経験でした。
以上、業務内容のすべてを書き尽くすことはできておりませんが、こうして振り返ると、印象に残るのは楽しかった経験の数々です。すべての業務を十分に果たせたとは言い難いものの、その時々において、自分なりに最善を尽くして取り組んできたつもりです。最後の主任研究員会議に参加するため、麹町で前泊をしました。これまで何度も通った日本学術振興会のオフィスを夜に眺めながら、明日で最後なのだと思うと、これで研究や学生と向き合う時間をより確保できるという気持ちがある一方で、どこか少し寂しさを覚えたのも正直なところです。
※令和8年度時点では男性59.7%、女性40.3%
2023年4月から主任研究員に就任しましたが、同時に科研費の大型研究種目の学術変革領域研究(A)の領域代表も務めることになり、同年の4〜5月はまさに人生の修羅場でした。それから3年が経過し、学術システム研究センターを卒業した今振り返ると、こうした修羅場を乗り越えることで、自身を一回り成長させていただいたことに感謝の気持ちでいっぱいです。センター研究員を経験する前と後では、景色が違って見えます。特別研究員時代からの支援、そして現在も科研費によって研究を継続できているその背後には、数多くの関係者の方々(事務局と研究者の両者)が、いわば完全な裏方として尽力されていることを、身を以て理解することができました。以下に、記憶の及ぶ範囲ではありますが、業務の内容を記します。
4月から初夏にかけては、国際先導研究など応募締切の早い研究種目の審査意見書作成候補者の選考や、挑戦的研究(開拓)合議審査への陪席、そして基盤研究種目の審査の検証や審査委員候補者の選考の業務があります。日本学術振興会は独自の選考システムを有されており、システム上で各研究者の審査委員経験、科研費採択履歴、業績と審査の検証結果などが閲覧できます。初めは、先輩のセンター研究員の方から丁寧に教えてもらいながら、システムの使い方にも慣れ、信頼をおける審査委員候補者を選ぶよう努めました。研究者コミュニティーにおいては、一度評価されるとそれがさらなる評価につながるという正のフィードバックが存在し、その結果として審査委員の顔ぶれが固定化するリスクがあると感じました。そのため、これまで審査委員の経験が少ないものの、誠実かつ的確に審査を担っていただけると考えられる研究者を積極的に発掘するよう心がけました。
初夏からは、そうした業務に加え、日本学術振興会賞の査読や育志賞の予備選考が始まります。応募される方々はいずれも大変優れた研究業績を出されている方ばかりです。研究業績として挙げられた論文を読ませていただくことは大変刺激的で貴重な経験となりました。一方で、限られた人数に推薦候補者を絞り込む過程は、毎年きわめて困難を伴うものであることを実感しました。研究業績の優秀さのみならず、将来の日本の学術の発展と裾野の拡大に繋がるかという広い視点から評価を行うよう努めました。
育志賞では面接候補者を絞り込んだ後、秋になって面接が実施されます。この面接は毎回情熱に満ちた面白い発表を聞かせていただき、業務の中でも特に印象に残るものでした。若い研究者が着実に成果を積み重ねている様子を間近で見ることができ、日本の学術の将来を感じる機会でもありました。秋から冬にかけては、科研費説明会への参加や大型研究種目の合議審査への陪席・検証も重なり、忙しさは続きますが、それぞれの現場で学術を支える仕組みを肌で感じる、密度の濃い時間となりました。
年度末には、これらの業務もひと段落し、3月に開催される年度最後の主任研究員会議では送別会が設けられます。人文学・社会科学・自然科学といった多様な分野の研究者や事務局の方々との交流は、気づけば三次会にまで及び、非常に楽しいひとときとなりました。また、生物系科学専門調査班では、3月に各地で学術動向調査合宿が開催され、毎回センター研究員による研究発表に加え、科研費改革や若手研究者の育成、アカデミアの将来などについて、夜遅くまで議論が交わされます。その雰囲気はどこか高校時代の部活動を思わせるような、熱意に満ちたものでした。九州大学ではまだ数の限られる女性教授として、時に孤立を感じることもありましたが、男女比がほぼ均等※なこうした場において、それらを共有し多様な意見交換ができたことは非常に貴重な経験であり、自身にとって大きな支えとなりました。また、女性研究者は多くの委員や業務を依頼されることで、自らのサイエンスがだめになるリスクが高いと感じていましたが、裏方で重要な業務を引き受けながら研究でも一流の成果を出しておられる女性研究者の方々とお会いできたのも、大変刺激になりました。
このように各センター研究員に割り当てられる業務に加え、主任研究員会議をはじめ、科研費ワーキンググループ、特別研究員ワーキンググループ、さらには科研費改革推進タスクフォースといった会議にも参加し、現行制度の見直しや改革に関わる重要な議論に携わります。これらの会議では、日本のみならず世界の学術動向を踏まえた高い視座から議論が行われ、各分野や研究機関で実際に起きている課題や変化について知る機会となり、毎回多くの示唆を得ました。加えて、主任研究員の先生方による学術動向調査の報告も定期的に行われ、自身の専門分野にとどまらず、他分野の最先端の研究や動向に触れることができた点は、非常に貴重な経験でした。
以上、業務内容のすべてを書き尽くすことはできておりませんが、こうして振り返ると、印象に残るのは楽しかった経験の数々です。すべての業務を十分に果たせたとは言い難いものの、その時々において、自分なりに最善を尽くして取り組んできたつもりです。最後の主任研究員会議に参加するため、麹町で前泊をしました。これまで何度も通った日本学術振興会のオフィスを夜に眺めながら、明日で最後なのだと思うと、これで研究や学生と向き合う時間をより確保できるという気持ちがある一方で、どこか少し寂しさを覚えたのも正直なところです。
※令和8年度時点では男性59.7%、女性40.3%
学術の方向を指し示す船の舵取り役
学術システム研究センターは、日本の学術の方向を指し示す大きな船の舵取り役のような存在だと感じました。AIなど新しい技術が広がり、科学そのものが大きく変わろうとしている今だからこそ、これまでの制度を見直しながら、先を見据えて、学術の可能性を最大限に引き出せるような仕組みを考えていく、このような組織の重要性は一層高まっていると感じます。3年間、私はその船に乗せてもらった一人の乗組員に過ぎませんが、実際に内側から関わることで、研究者自身が研究費配分の制度づくりに関わり続けてきたことの重みと意義を強く実感しました。今後は、この経験をそれぞれの現場で活かしながら、頑張りたいと思います。
学術システム研究センターの会議風景
支援や応援がサイエンスの創出につながる
私は、サイエンスをすることが好きでアカデミアの世界に入りました。今回、センター研究員として3年間関わらせていただく中で、研究者が持てる力を発揮し、良いサイエンスをする環境や仕組みをつくること自体も、大変やりがいがあり、面白い仕事であると実感しました。組織は変わらないものだと決めつけるのではなく、小さなつながりが積み重なれば、良い変革が生まれるのだと前向きになれる仕事でもありました。日本の研究力低下が指摘されて久しいですが、私自身は、日本の研究者は高い研究力と独創性、そして技術力を持ち、世界からの信頼も厚いと感じています。実際に各種の審査に関わる中でも、若手研究者の関心は非常に多様で、その探究心や好奇心が将来の大きな発見につながっていく可能性を強く感じました。こうした才能が十分に発揮される環境を整え、一人ひとりの力と自信を引き出し、つなげていく研究コミュニティーが育つ取り組みを、日本学術振興会は数多く進めておられます。こうした支援や応援があることを研究者自身が実感できることが、さらに良いサイエンスの創出につながるのだと感じています。
※本記事に記載の所属・肩書きは、掲載時点(2026年7月)のものです。
[JSPSパンフレット連動 特設コンテンツ 研究者インタビュー]
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