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国際生物学賞

国際生物学賞 受賞者決定

第38回(令和4年)国際生物学賞の受賞者決定
塚本 勝巳 博士
(東京大学名誉教授)

 独立行政法人日本学術振興会(理事長 杉野 剛)は、8月8日に国際生物学賞委員会(委員長 藤吉 好則:東京医科歯科大学特別栄誉教授)を開催し、第38回国際生物学賞の受賞者を東京大学名誉教授 塚本勝巳博士(73歳、日本)に決定しました。今回の授賞対象分野は「魚の生物学(Biology of Fishes)」です。

塚本 勝巳 博士
氏  名 塚本 勝巳 博士 (受賞者の略歴・研究業績)
(Dr. TSUKAMOTO Katsumi)
生年月日 1948年 11月 9日(73歳)
国  籍 日本
現  職 東京大学名誉教授
略  歴
1980年 東京大学大学院農学系研究科 水産学専攻 農学博士
1974年1986年 東京大学海洋研究所 資源生物部門 助手
1986年1994年 東京大学海洋研究所 資源生物部門 助教授
1994年2000年 東京大学海洋研究所 漁業測定部門 教授
2000年2010年 東京大学海洋研究所 海洋生命科学部門 教授
2010年-2013年 東京大学大気海洋研究所 海洋生命科学部門 教授
2013年-2018年 日本大学 生物資源科学部 教授
2013年-現在 東京大学 名誉教授
2014年-2020年 福井県立大学 客員教授
2018年-2020年 東京大学 大学院農学生命科学研究科 特任教授

授賞理由

  塚本勝巳博士は、古来より人々の興味をかき立ててきた「動物の旅」に関心を抱き、特に海と川を行き来する「通し回遊魚」に関する研究を展開した。これにより、魚の回遊現象の基本法則や回遊行動の進化に関する学術基盤を構築し、回遊魚の生物学を進展させた。初期の研究において、琵琶湖には、流入河川に回遊し大型になる大アユと、一生の大半を湖内で生活して小型のままで繁殖する小アユが存在し、この2つの回遊型が世代ごとに入れ替わることを発見し、これが維持されるメカニズムとして、小アユは早く産卵し、その子どもは早産まれで早く成長するために大アユになりやすく、一方、大アユは遅く産卵し、その子どもは小アユになるという「スイッチング・セオリー」を提唱した。これは、生物が生まれて成長し、繁殖後に死に至る過程である生活史が1つに限られない生活史多型を説明した研究として、国際的に高い評価を得た。また、塚本博士は魚類の内耳にある硬組織の耳石を用いた標識技術を開発し、さまざまな魚類の資源評価や生活史推定に応用した先駆者でもある。
  塚本博士の最も偉大な功績は、海洋生物学に残された最大級の謎であったニホンウナギの産卵場の発見である。博士は1990年代以降、世界のウナギ研究を先導し、有史以来の謎であったウナギの産卵回遊生態の全貌を解明した。これは科学史に残る金字塔として世界の研究者が認めるところであり、広大な北太平洋に調査船を駆使して展開した研究の軌跡は、海洋学や生物学に携わる研究者のもつ夢やロマンを一般へ知らしめた功績として、近年では類をみない。1970年代にニホンウナギ産卵場調査を開始した塚本博士らの研究チームは、ニホンウナギは夏の新月に西マリアナ海嶺周辺で産卵するという仮説を提示し、広大な海域を調査するために新たな手法を導入した航海戦略を立案し、2009年に世界初のウナギの卵を発見して、自らの仮説を証明することに成功した。ウナギの産卵回遊生態の謎を解き明かすため、共同研究者や学生らとともに、調査航海のみならず、耳石化学分析、生理学をはじめとするあらゆる技術を導入し、常に研究を推進してきた。
  また、ウナギ資源の安定供給を目指して養殖用のシラスウナギ種苗を人工的に大量生産する技術の開発、東アジア各国の産学官連携による東アジア鰻学会の設立など、教育、社会及び国際的な課題の解決に向けて主導的役割を担い、多大な貢献を果たした。さらに、小学校4年生の国語の教科書(光村図書)に『うなぎのなぞを追って』を執筆し、自ら全国の小学校へ赴き、自然との共生を考える授業を実施してきた。“うなぎキャラバン”と銘打たれたこの活動は、全国で計300回近くに及ぶ。国内外の科学者のみならず、一般市民や子どもたちの関心を高めてきたことは、塚本博士の卓越した功績といえよう。
  以上のように、塚本博士は魚の生物学の発展に大きく寄与したばかりでなく、自身の知識や経験、哲学を提供することにより、広く調和的かつ持続的な人類社会の発展への貢献は高く評価されるものであり、第 38 回国際生物学賞の授賞対象分野「魚の生物学」に最もふさわしいと判断し、授賞を決定した。

  ※授賞式は、例年11~12月頃に挙行しており、本年は、延期された第37回受賞者との合同での授賞を予定しております。なお、新型コロナウイルス感染症の感染拡大状況により、中止・延期となる場合があります。また、各回の記念シンポジウム(第37回:於 東京大学。第38回:於 基礎生物学研究所)についても同様に、今後の感染状況を考慮しつつ、詳細を決定します。