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国際生物学賞

国際生物学賞 受賞者決定

第37回(令和3年)国際生物学賞の受賞者決定
ティモシー・ダグラス・ホワイト博士
(カリフォルニア大学バークレー校統合生物学教授)

 独立行政法人日本学術振興会(理事長 里見 進)は、8月31日に国際生物学賞委員会(委員長 藤吉 好則:東京医科歯科大学特別栄誉教授)を開催し、第37回国際生物学賞の受賞者をカリフォルニア大学バークレー校統合生物学教授 ティモシー・ダグラス・ホワイト博士に決定しました。今回の授賞対象分野は「ヒト進化の生物学(Biology of Human Evolution)」です。

ティモシー・ダグラス・ホワイト博士
氏  名 ティモシー・ダグラス・ホワイト博士(受賞者の略歴・研究業績)
(Dr. Timothy Douglas White)
生年月日 1950年 8月 24日(71歳)
国  籍 米国
現  職 カリフォルニア大学バークレー校統合生物学教授
略  歴
1977年 ミシガン大学自然人類学(Ph.D.)
1972年-1975年 ミシガン大学ティーチングフェロー
1976年-1977年 ミシガン大学講師
1977年-1978年 カリフォルニア大学バークレー校客員講師
1978年-1982年 カリフォルニア大学バークレー校助教
1982年-1986年 カリフォルニア大学バークレー校准教授
1986年-1995年 カリフォルニア大学バークレー校人類学教授
1995年-現在 カリフォルニア大学バークレー校統合生物学教授
同 人類進化研究センター所長、兼古生物学研究者
同 生命・自然科学特別教授

授賞理由

 カリフォルニア大学バークレー校の統合生物学教授であるティモシー・ダグラス・ホワイト博士は、もっとも成功した古人類学研究者として広く知られている。ホワイト博士は、様々な段階の人類化石およびその周辺の動物相及び環境(古環境)資料の発見と分析を通じて、人類の進化過程についての我々の理解に多大な影響を与えている。
 ホワイト博士は、370万~300万年前のアウストラロピテクス・アファレンシス化石の詳細な分析研究において中心的な役割を果たし、同種が一つの種として認識可能であると示した功績が高く評価されている。ホワイト博士の提示したアファレンシス化石に関する解釈の枠組みは、今日に至るまで古人類学分野の研究に影響を与え続けている。
 さらに、ホワイト博士は1990年以降、エチオピアにおけるミドル・アワッシュ調査プロジェクトを、エチオピア人研究者と共同主宰してきた。同プロジェクトではこれまでに、570万年前のアルディピテクス・カダバ、アウストラロピテクス・アナメンシス、ホモ属の祖先候補のアウストラロピテクス・ガルヒ、ホモ・エレクトス、16万年前のホモ・サピエンス・イダルトゥなど、極めて多彩な化石発見に成功している。これらの化石の分析研究によって得られた新たな証拠と解釈を示すことで、人類進化の複数の重要なステージに関して研究を大きく進展させてきた。
 中でも特筆すべきは、440万年前のアルディピテクス・ラミダス、通称ラミダス猿人化石の発見である。この発見は、それまでまったく不明であったアウストラロピテクス段階以前の人類進化の様相を明らかにし、これによって人類進化研究全体が新たな段階へと移行したと述べても過言ではない。ホワイト博士が国際共同研究チームとともに明らかにした、歩行様式や、採食適応、性的二型(性別によって個体の形質が異なること)とそのことが示す社会生態学的な意義、古環境と生息環境の選択といった、アルディピテクス・ラミダスという生物のさまざまな側面に関する知見は、人類の最も初期の祖先についてはもちろんのこと、我々人類にもっとも近縁な現生種であるチンパンジーやゴリラの祖先についても、これまでにない視座を与えるものであった。ホワイト博士らによって2009年に米国科学アカデミーの機関誌サイエンスに発表された、全身骨格標本を含むアルディピテクス・ラミダス化石の詳細かつ広範な分析結果をまとめた11篇の論文は、のちにサイエンス誌の「ブレークスルー・オブ・ザ・イヤー」に認定されている。
 以上のように、今日までのホワイト博士による研究は、化石資料などの直接的証拠の提示とその精緻な解釈によって、人類の進化過程のさまざまな段階についての理解を飛躍的に進めてきた。特に起源に近い時期の人類祖先像を明らかにした功績は高く評価されるものであり、第37回国際生物学賞の授賞対象分野「ヒト進化の生物学」に最もふさわしいと判断し、授賞を決定した。

※授賞式は、12月に東京・上野の日本学士院において行われる予定です。


第37回国際生物学賞記念シンポジウム開催のお知らせ

 ホワイト博士の受賞を記念して、下記の通りシンポジウムを開催します。
 12月17日(土)に参加を希望する場合は、専用ウェブサイトでの事前申込が必要です。
 12月18日(日)は事前申込は不要です。

第37回国際生物学賞記念シンポジウム
人類の誕生と地球の未来 Human Origins and the Future of the Earth
日時: 令和4年 12月17日(土)9:00~17:00(英語、研究者・大学院生向け)
12月18日(日)13:00~17:50(日本語、一般の方向け)
※18日は、受賞者による記念講演のみ、同時通訳があります
場所: 12月17日(土)東京大学理学部小柴ホール
12月18日(日)東京大学安田講堂 ※インターネット配信(申込制)あり
住所はいずれも 〒113-8654 東京都文京区本郷7-3-1
定員: 12月17日(土)80名
12月18日(日)400名
参加費: 無料
プログラム詳細、
参加申込(12月17日のみ):
下記をご覧ください
https://sites.google.com/g.ecc.u-tokyo.ac.jp/37ipb-symposium/
主催: 東京大学、日本学術振興会
お問い合わせ先: 第37回国際生物学賞記念シンポジウム事務局
Email: ipb2022@kuba.jp
チラシ :