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国際生物学賞

第36回国際生物学賞の伝達・祝辞・受賞者あいさつ

第36回国際生物学賞を篠崎一雄博士に伝達しました
(令和2年12月16日)


伝達式の模様
賞の伝達

令和2年12月16日、国際生物学賞委員会事務局を務めている独立行政法人日本学術振興会内において、里見進理事長は受賞者の篠崎一雄博士に賞状と賞金1,000万円及び賞牌を伝達しました。さらに秋篠宮皇嗣殿下からの贈呈品「秋篠宮家御紋付銀花瓶」を伝達しました。

第36回国際生物学賞に対して秋篠宮皇嗣殿下よりおことばを賜っていること、また、内閣総理大臣及び文部科学大臣からご祝辞をいただいたことの報告が行われ、最後に受賞者の篠崎博士から受賞の挨拶がありました。

伝達式終了後、受賞者夫妻は秋篠宮皇嗣同妃両殿下にお会いする機会を賜り、おことば及び贈呈品をいただいたことのお礼を申し上げました。

秋篠宮皇嗣殿下のおことば


受賞者夫妻_伝達式贈呈品を手にする篠崎博士夫妻 ご接見冒頭秋篠宮皇嗣同妃両殿下へのご挨拶
(赤坂東邸)

第36回国際生物学賞伝達式 内閣総理大臣祝辞

第36回国際生物学賞伝達式が挙行されるに当たり、一言お祝いの言葉を申し上げます。

国際生物学賞は、昭和天皇の御在位60年と長年にわたる生物学の御研究、及び上皇陛下の長年にわたる魚類分類学・ハゼ類の御研究を記念して設けられたものであり、世界的に権威ある賞として高い評価を得ております。

本日、この栄えある賞を受賞された篠崎一雄博士に対し、心からお祝いを申し上げます。

篠崎博士は、植物の乾燥に対する耐性獲得とその応答のメカニズムを、世界に先駆けて分子生物学的手法により解明し、この分野を先導してこられました。特に、博士が発見した環境ストレス耐性に関わる遺伝子を利用して、乾燥や低温に耐性のある作物の開発に成功したことは、気候変動による食糧危機に大きく貢献するものと期待されています。

このような優れた学術研究は、イノベーションの源泉として重要な役割を担うとともに、人類が直面している社会課題の解決にもつながるものです。政府といたしましても、引き続き、研究者の自由な発想に基づく独創的かつ多様な研究を支援していく中で、次世代を牽引し世界で活躍する人材の育成にも一層取り組んでまいります。

結びに、篠崎博士のますますの御健勝と御研究の更なる発展、及び本日御参集の皆様方の御健勝を祈念いたしまして、私のお祝いの言葉といたします。

令和2年12月16日
内閣総理大

 

第36回国際生物学賞伝達式 文部科学大臣祝辞

第36回国際生物学賞伝達式が挙行されますことを心からお喜び申し上げます。

本日、受賞の栄に浴された篠崎一雄博士に対し、心から敬意と祝意を表します。

篠崎博士は、シロイヌナズナを主な材料として、植物の環境ストレス耐性に関する遺伝子の発見やその制御メカニズムの解明に貢献されました。その先駆的な研究業績は高く評価されており、多くの植物科学の教科書にも掲載されています。また、篠崎博士はゲノム機能研究にも取り組み、モデル植物の遺伝子など研究リソースの収集や解析技術の基盤整備を先導し、植物ゲノム機能研究の発展に多大な貢献を果たされました。

学術研究とは、一人の研究者の知的好奇心と自由な発想に基づく知的創造活動であり、そこから多様で卓越した知と人材が生まれることにより、人類社会の持続的発展に大きく寄与するものです。文部科学省といたしましては、今後とも若手研究者の支援や研究環境の整備を進めることにより、篠崎博士が切り拓かれた研究分野の更なる発展とともに我が国の学術研究全般の振興に取り組んでまいる所存です。

結びに、篠崎博士の更なる御活躍を祈念するとともに、国際生物学賞委員会をはじめ、関係各位の御努力に対し、敬意と感謝の意を表し、私の祝辞といたします。

令和2年12月16日
文部科学大萩生

 

第36回国際生物学賞受賞者あいさつ

篠崎一雄博士

篠崎一雄博士

本日は、国際生物学賞受賞の栄誉を賜り、大変光栄に存じます。これまでの35名の偉大な受賞者の末席に加えていただくことは大変名誉あることで感謝しています。31年前に始めた私たちの研究成果が「環境応答の生物学」の分野で国際的に高く評価されたもので光栄に存じます。この研究は、多くの優れた共同研究者の協力で成果を上げられました。これらの共同研究者を代表して名誉ある国際生物学賞を受賞することは私の大きな喜びとするものです。

本日は、賞状や賞牌に加えて、秋篠宮皇嗣殿下から記念のお品を賜わり、大変光栄に存じます。国際生物学賞は昭和天皇、上皇陛下の長年の生物学のご研究を記念する基礎生物学の素晴らしい賞です。また秋篠宮皇嗣殿下も生物学のご研究を進めておられます。この度、このような名誉ある賞を受賞する栄誉を与えていただきました国際生物学賞委員会の皆様、選考にあたられた審査委員の皆様、そして、日本学術振興会にお礼を申し上げたいと思います。今年は新型コロナ感染拡大の大きな影響もありましたが、このような式を挙行していただき感謝しています。

今回の「環境応答の生物学」の研究分野は、気候変動により様々な環境ストレスに直面する生物、特に植物の環境ストレス応答と生存戦略の研究分野に光を当てていただくものであり、感謝と敬意を表したいと存じます。また、植物科学の環境応答の研究分野を代表して受賞したことを名誉に存じます。

私は名古屋大学大学院で岡崎恒子、令治両教授の指導でDNA複製に関する分子生物学研究で学位を取得しました。その後、国立遺伝学研究所、名古屋大学で杉浦昌弘教授の指導で植物の葉緑体ゲノムに関する研究を行ないました。分子生物学とゲノム解析の研究手法を身につけることができました。その後にロックフェラー大学ナムーハイ・チュア教授の研究室に留学して植物の核遺伝子の転写制御について学ぶことができました。チュア教授は第21回の受賞者ですが、私たち夫婦で大変お世話になりました。

平成元年に着任した理化学研究所で、植物の環境ストレス応答の遺伝子の働きと遺伝子発現の制御に関する研究を始めました。今回の受賞の対象になった研究です。移動の自由のない植物の乾燥などの環境ストレスに対する応答と耐性の獲得に関わる遺伝子の研究を進めて、植物が如何に優れた方法で環境の変化に応答して生存しているのかが理解できました。モデル植物のシロイヌナズナを研究材料にゲノム機能解析の研究手法を用いて、植物の環境ストレス応答に関わる遺伝子発現とシグナル伝達に関する重要な因子の遺伝子を世界に先駆けて明らかにすることができました。植物の環境ストレス応答は多様な遺伝子ネットワークの関わる複雑なメカニズムで制御されており、植物の環境応答の精緻な制御系に関して感銘を覚えています。

さらに、モデル植物を用いた基礎研究で得られた乾燥耐性関連の多くの遺伝子を国際連携により乾燥した耕作地において実際の作物でテストし、私たちの発見した遺伝子が乾燥耐性の作物の作出に有効なことが分かりました。基礎科学の成果が作物の育種に関わる成果に応用できることを証明できたことで社会への貢献につながることが期待できました。

これまで進めてきた研究は多くの共同研究者の努力によって積み上げられた成果です。これまで研究を共に進めてきた研究室の新旧のメンバーに感謝したいと思います。特に研究の初期から共同研究者として研究の推進に大きな力となってくれたのは私の妻の篠崎和子東京大学名誉教授です。研究の立ち上げからその後の発展まで様々な議論を進めて研究を進めてきました。栄誉ある国際生物学賞の受賞を共に祝いたいと思います。

植物の多様性は地球環境を形成する重要な役割を果たしています。植物の環境ストレス応答に関する研究は気候変動や食糧問題の解決に貢献できる重要な分野となっています。次の時代を担う研究者の皆様には生物の環境応答や適応に関する理解をさらに深め、新たな視点で研究を展開していただきたいと思います。次世代の研究者の新たな挑戦と活躍を期待しています。また、その挑戦を支援していきたいと思います。

最後に栄誉ある国際生物学賞を受賞することができ、心から感謝しています。

本日は誠にありがとうございました。

今年は、新型コロナウイルス感染症の影響のため、例年、日本学士院会館にてこの時期に行っている授賞式は中止し、独立行政法人日本学術振興会の理事長から国際生物学賞を伝達することとなりました。また、授賞式後に毎年開催する記念シンポジウムについても、本年は中止することが決定されています。