日本学術振興会

文部科学大臣特別講演

科学上のブレークスルーを生み出す教育・科学技術政策

文部科学大臣 下村博文
文部科学大臣の写真
シンポジウムの冒頭に講演の機会をいただき、ありがとうございます。

安倍政権のアベノミクスによる経済政策が確実に成果を上げつつあります。我が国が持続的に成長し、世界の経済・社会に貢献していくためには、ブレークスルーを生み出すことが必要であり、このブレークスルーが絶え間ないイノベーションの鍵となります。
本日は、科学上のブレークスルーを生み出し、イノベーションによる我が国の発展につなげるため、文部科学省が今後取り組む教育、科学技術・学術政策の方向性について、二つのトピックをお話しします。

一つ目のトピックは、これからの新しい時代に対応する抜本的な教育改革です。
ニューヨーク市立大学大学院のデビッドソン氏は、2011年に米国の小学校に入学した子供たちの65%は、大学卒業後、今は存在していない職業に就くと指摘しています。オックスフォード大学のオズボーン氏は、今後10年から20年程度で、米国の約47%の仕事が自動化される可能性が高いと予測しています。このように現在の職業の多くがなくなっていくことは、米国だけでなく日本を含めた先進諸国に同様の問題だと考えています。
このような、先を見越すことの難しい時代においては、課題解決力、創造力、人間特有の感性や優しさを身に着ける「真の学ぶ力」が必要です。このため、高等学校以下の教育、大学教育、大学入試を一体的に改革しています。

その中で、イノベーションの担い手である国立大学の改革も積極的に進めてまいります。
昨年の通常国会で成立した大学のガバナンス改革に関する法律が4月より施行され、学長がリーダーシップを発揮する基盤が整いました。国立大学は危機感をもって自己改革を進め、学問の進展やイノベーションの創出に大きく貢献できる組織へと再編・転換する必要があります。
今後、大学自らのビジョンに基づく機能強化を推進するため、国立大学法人運営費交付金に3つの重点支援の枠組みを新設し、「地域のニーズに応える人材育成・研究」「分野毎の優れた教育研究拠点やネットワークの形成」「世界トップレベルの卓越した教育研究」といった改革構想に基づき、自己改革を積極的に取り組む大学に、国はメリハリのある資金配分を行います。
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二つ目のトピックは、ブレークスルーを生み出し、社会へ貢献するための科学技術・学術政策です。
科学技術によって社会に新たな価値を提供するには、イノベーションの源泉としての学術研究及び基礎研究の改革を強化することが重要です。これらを大学改革と一体的に推進することで、「世界で最もイノベーションに適した国」を目指します。
組織や国を超えたオープンイノベーションへの転換も進んでいる状況においては、研究者の自由な発想に基づく学術研究を振興するとともに、自ら課題を発見し未知のものに挑戦する人材を育成することで、独創的で多様な広がりを持つ質の高い知を常に生み育て、重層的に蓄積しておくことが必要です。
昨年、赤﨑勇氏、天野浩氏、中村修二氏の日本人3名がノーベル物理学賞を受賞されました。3名の方々は一度や二度の失敗には屈せず、努力を続けてこられた結果、青色LEDに関する大きな成果を生み出しました。
また、山中伸弥教授の作ったiPS細胞の研究は、2012年のノーベル生理学・医学賞受賞もあり、今や世界中の人が知るところとなりました。文部科学省では10年間で1100億円の集中的な支援を行っていくこととしており、昨年iPS細胞を用いた世界初の網膜の移植が実現する等、成果を上げているところです。
ここで強調したいのは、我が国では、これらの研究が世界から脚光を浴びるはるか以前の段階から、その可能性を見出し、支援を行っていたということです。研究者の自主性・自律性を前提とした学術研究に対し、短期的成果にとらわれず、継続的な研究支援を行うことが、真のイノベーションの創出につながると確信しております。
現在、文部科学省では、我が国最大の競争的研究費として、自然科学から人文学・社会科学まで、すべての分野における多様な学術研究を支援する科研費の改革を進めています。科研費全体のプログラムや審査の抜本的な見直し、「国際共同研究加速基金」の創設等を行い、分野・組織・国境等の壁を越えた知の融合によるブレークスルーの創出を目指します。
そして、科研費から生まれた「イノベーションの種」を拾いだし実用化に向けて加速するため、政府が示す目標を達成するための「戦略研究」とのシームレスな連携の仕組みを構築します。

また、産学官の力を結集した中核拠点の形成や産学官での人材循環によるイノベーションを推進します。
とりわけ、省エネルギーイノベーションは最重要分野です。今後、照明のLED化が進めば、消費電力は現在より7%削減されるとの試算があります。天野教授らが研究を進めているパワー半導体の高効率化により、さらに7%の電力消費削減が実現されるとのことです。文部科学省では、パワー半導体研究に携わる若手研究者を集中支援するとともに、天野教授のいる名古屋大学を中核拠点として、産学官連携による研究開発イノベーション拠点の構築に取り組みます。
これにより、2035年までかかると言われているパワー半導体の高効率化を10年前倒し、2025年までの実現を目指します。

今回のシンポジウムが御参加の皆様にとって有意義なものとなるとともに科学上のブレークスルーの意義を社会に発信し、理解を促進させるものになることを祈念します。

御清聴ありがとうございました。