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国際生物学賞

第30回授賞式・受賞者あいさつ・審査経過報告

天皇皇后両陛下のご臨席を仰いで、第30回国際生物学賞授賞式が挙行されました。
(平成26年12月1日)


第30回国際生物学賞授賞式

   第30回国際生物学賞授賞式は、12月1日に日本学士院において、天皇皇后両陛下のご臨席を仰ぎ、内閣総理大臣代理として世耕弘成内閣官房副長官、下村博文文部科学大臣代理として山本ともひろ文部科学大臣政務官をはじめ、各界からの来賓多数の参列を得て、盛会のうちに執り行われました。
   式典では、杉村隆委員長から、受賞者のピーター・クレイン博士に、賞状と賞金1,000万円及び賞牌が授与され、天皇陛下からの賜品「御紋付銀花瓶」が伝達されました。
   続いて、安倍晋三内閣総理大臣祝辞(代読 世耕弘成内内閣官房副長官)、並びに下村博文文部科学大臣祝辞(代読 山本ともひろ文部科学大臣政務官)の後、ピーター・クレイン博士が受賞の挨拶を行いました。
   引き続き、天皇皇后両陛下ご臨席の下、受賞者を囲んで記念茶会が行われました。


記念茶会で天皇陛下とクレイン博士   賜品を手にするクレイン博士夫妻
記念茶会   賜品を手にするクレイン博士夫妻


第30回国際生物学賞 受賞者あいさつ

ピーター・クレイン博士
Professor Sir Peter Crane FRS

ピーター・クレイン博士

天皇皇后両陛下、ご臨席の皆様

   国際生物学賞を賜るにあたり、こうして感謝の気持ちを申し述べる機会を与えていただき、誠にうれしく存じます。天皇皇后両殿下のご臨席を仰ぎ、これ以上の栄誉はございません。天皇陛下におかれましては、ご自身もハゼ類の分類のご研究に長年取り組んでいらっしゃいます。ご研究を通してその発展に寄与しておられる「系統・分類を中心とする生物学」の分野で本賞をいただきましたことは、大きな名誉と存じます。生物多様性に関わる研究者は誰もが皆、陛下のご研究分野と同じ研究に携わっていることを大変誇りに思っております。また、このたびの受賞につきまして日本学術振興会・国際生物学賞委員会の皆様に深くお礼申し上げます。

   私が初めて日本を訪れたのは、まだ若者であった45年ほど前のことです。そのころにはすでに、過去に新たな光を当てる独創的発見の楽しさに、私はすっかり魅了されておりました。また、かなり早くから古植物学に加え、現生植物の系統分類学の教育も受けることができました。それ以来、研究機関に恵まれ、先生や教官、先輩諸氏にも支えられ、優れた研究者とともに仕事をする機会にも恵まれました。本日は、私をずっと支えてくれた妻エリノアとともに、そうした同僚や友人にも多くご列席いただき、誠に光栄に感じております。

   私の研究の大きなテーマは、化石と現生植物の情報を統合して植物の進化史をより包括的に理解するというものです。この数十年、古植物学全体においてその重要性は増してきました。こうした情報の統合は系統発生解析法の発展によって促進されましたが、これには同時に現生種との有意な比較を可能にする保存状態の良い化石も欠かせません。

   初期の陸上植物の場合、シルル紀とデボン紀の化石に関する研究が進んだ結果、古植物学上の発見と現生の緑藻類、コケ植物、維管束植物の系統情報とが結びつき、新しい視点からより包括的に初期の陸上植物の多様化について理解できるようになりました。

   被子植物の場合は、1980年代初めにフリース博士がきわめて保存状態の良い古代の花を使って先駆的な研究を行い、思いがけず新たな研究分野が開拓されました。特に、フリース、ペダーソンの両博士と私が北米東部とポルトガルの白亜紀初期層で調査した物質を、解明の進んだ現生被子植物に関する情報に組み合わせたことで、顕花植物の初期進化に関して想定以上の詳細な過程を観察できるようになりました。同じ手法によって他の絶滅した種子植物についても新たな知見が得られており、その一部は被子植物の起源を理解するうえで重要であることは疑いを入れません。

   古植物学では、過去の解明は現在に大きく依存しています。しかし同時に、生態学と進化学においては偶発性と絶滅が重要であるため、現在を理解するには歴史も理解する必要があります。古植物学の真価は、過去に戻って現在を推定することだけにあるのではなく、今日の世界とは重要な点で異なる古代の世界に光を当て、知識を広げることにもあるのです。奥深い歴史に根ざすこうした視点は、地質時代という長い期間にわたる進化の壮大さを浮き彫りにしています。また、環境が急速に変化する今の時代にあって、正しい情報に基づいて環境を管理することの必要性も伝えています。日本学術振興会の皆様は、現在を理解するうえで過去がいかに重要かを認識なさっており、世界における私たちの立ち位置を示し、ともに地球の未来に影響を与える存在として謙虚であることの大切さを、私たちに思い起こさせてくださっているのです。

 

第30回国際生物学賞 審査経過報告

国際生物学賞委員会審査委員長 藤吉 好則

国際生物学賞委員会審査委員長 藤吉 好則氏

   第三十回国際生物学賞審査委員会を代表いたしまして、今回の審査の経緯について御報告申し上げます。
   審査委員会は、私を含めまして二十人の委員で構成いたしましたが、そのうち四人は特別に委嘱した海外の権威ある研究者です。
   審査委員会は、今回の授賞対象分野に定められました「系統・分類を中心とする生物学」に関連する国内外の大学、研究機関、学協会および個人研究者、並びに国際学術団体あてに、千百六十五通の推薦依頼状を送りましたところ、五十四通の推薦状が届きました。このうち重複を除きますと、被推薦者の実数は四十件であり、広く十八か国に亘っておりました。
   審査委員会は、四回の会議を開き、慎重に候補者の選考にあたりました。その結果、第三十回国際生物学賞受賞者として、英国のピーター・クレイン博士を国際生物学賞委員会へ推薦することに決定いたしました。
   クレイン博士は、1970年生まれで、英国国籍をお持ちです。博士は1981年に英国レディング大学で博士号を取得されました。その後、シカゴのフィールド自然史博物館キュレーター、そして館長を経て英国王立キュー植物園園長、シカゴ大学教授として活躍され、植物の系統・分類学に関する数多くの研究成果を挙げられました。現在はイェール大学の教授であります。
   1970年代まで、植物の系統進化の研究は、化石の情報を用いる古生物学の分野と現生植物の分野、それぞれにおいて独自に進められていました。   クレイン博士は、これら2つの情報を統合して包括的に解析するという新しい視点での研究を進め、現生の種子植物と多岐に亘る化石種子植物群の情報を、分岐分類学の手法を用いて解析し、種子植物各群の系統関係を推定しました。クレイン博士はこの様に古生物からの情報と現生植物からの情報を統合し、包括するという世界に先駆けた研究手法を用いて常に植物の系統解析研究をリードし、系統・分類を中心とする生物学の発展において多大な貢献をされました。
   審査委員会は、本賞の審査基準として、研究の独創性、国際性、受賞対象分野への影響力、および生物学全般への貢献度を取り上げていますが、ピーター・クレイン博士の業績は、そのいずれをも十分に満たすものであることを認め、国際生物学賞を授与するのに最もふさわしい研究者として推薦いたしました。
   国際生物学賞委員会は、審査委員会の推薦を承認し、ピーター・クレイン博士に対し、第三十回国際生物学賞を授与するものであります。
   以上をもちまして、私の審査経過報告と致します。