日仏先端科学シンポジウム

第4回日仏先端科学シンポジウム(JFFoS)報告


Planning Group Member 日本側主査
物質・材料研究機構 ナノセラミックセンター 研究員 廣田 憲之

   
   
 

 2010年1月22日(金)~24日(日)までの3日間、第4回日仏先端科学シンポジウム(JFFoS)が開催された。本稿はその実施報告であるが、JFFoSの面白さを宣伝して認知度を向上させ、今後の参加者確保につなげること、を期待されているので、まずは、概要から説明させていただきたい。


 JFFoSは、日仏トップレベルの若手研究者の交流をはかること、幅広い分野の先端的なトピックスを議論することで広い視野を養い、これによって先導的な研究者を養成することなどを目的として2007年から日仏間で交互開催されているシンポジウムで、両国の45歳以下の若手各40名、合計80名が参加して行なわれる。セッションは表に示す8分野から構成される。前年の参加者の中から各分野・両国から各1名のプランニング・グループ・メンバー(PGM)が選出され、前年のシンポジウム期間中から、討議トピックについての検討をスタートする。最初に各分野4トピック程度に候補を絞った後、1ヶ月ほどの準備期間を経て再び集まり、候補トピックについて各分野のPGMがプレゼンテーションしたのち、全PGMの投票でトピックを決定する。その分野の専門家から見ると少し意外なトピックになることもあるようだが、このような選び方をすることで多くの分野の研究者から見て興味を持つことのできるトピックが選ばれる。今回は、PGMの中に投票制度の専門家がいたこともあって、投票方法の議論からスタートするという凝りようで、表に示した8つのトピックが選出された。その後、各セッショントピックについて、チェアを日仏のどちらかから1名、スピーカーを両国から1名ずつ選定し、さらに参加研究者(discussant)が推薦と公募により決定される。本番での議論をより有意義にする目的で、日本側は事前検討会なるものを行ない、顔合わせと予習を行なった上で当日を迎えることになる。


 さて、4thJFFoSの開催地は、フランス・ポワトゥー・シャラント地方に属する歴史ある街、ポワティエ近郊のFuturoscopeであった。ポワティエはパリの南西約340 kmに位置し、732年にフランク国王カール・マルテルによるトゥール・ポワティエの戦いの舞台として、また百年戦争のさなかのポワティエの戦いの舞台として歴史的に有名な街である。フランス側PGM主査Dr. Cedric DEFFAYETの「将来的にポワティエは2010年のJFFoS開催によってその後の科学研究の飛躍的な進展の契機となった場所として記憶されるよう、会議を楽しもう」という何とも粋な挨拶で3日間の日程がスタートした。会場となったのはEcole Nationale Superieure de Mechanique et d'Aerotechnique (ENSMA)という機械工学と航空工学の高等教育機関である。一見、プラネタリウム?と思うような球体ホールで会議は行なわれた。


 1つのトピックにつき2時間のセッションが構成される。最初にチェアがそのトピックのイントロダクション (15分程度)、続いて2名のスピーカーが自分の専門を中心にそのトピックの最先端の話題を提供する(30分程度ずつ)。残りの時間は、全参加者によるディスカッションにあてられる。このディスカッションがJFFoSの特色ともいえるもので、非常に面白い。チェアとスピーカーは、普段、専門的な国際会議では出てこないような素朴な疑問や全く異なる切り口からの質問に、苦労しつつも丁寧に答える。専門分野が大きく違うケースでは、最初は議論がかみ合わないこともあるが、次第にお互いの話している内容を理解し、議論が収束してゆく過程がまた興味深い。今回は、異なるセッショントピック間で、理解しようとする現象は全く違うものの、アプローチが共通している例があって、その議論は多くの人が共感を覚えたようだ。どのセッションも構成がよく練られていて、非常に充実した議論が行なわれたと思う。


 ここまで読まれた方はお気づきかもしれないが、PGMや参加研究者は口頭発表の機会がない。自身の研究を話したくてうずうずしている人も多いし、チェアやスピーカーの中にも、話し足りない、と思っている人もいる。そこで、JFFoSでは希望者によるポスターセッションも開催される。ポスター講演の前には、各自1分間のフラッシュトークを行なう。これがまたJFFoS名物の1つで、1分を超過すると、強制的に次の人のスライドに移ってしまう。1分で如何に自分のポスター発表の内容をアピールするか、ちょっとスリリングなゲームのような感覚で話すほうも聞くほうも楽しめる。内容は各自が、日々、熱心に取り組んでいる先端研究なので、分野は違っても大変面白く、今回のポスターセッションも大変盛り上がった。


 研究者同士ゆえ、研究に関するセッションだけでも楽しめるものだが、より多くの人と交流を深めるための仕掛けも考えられている。セッション間のコーヒーブレイクや食事の時間はゆったりと取られていて、いろいろな人と話をするチャンスが十分に用意されている。さすがはフランス、昼も夜もテーブルに置かれたおいしいワインが参加者の交流をさらに円滑にする。2日目の午後には、ポワティエ市内の史跡を巡るエクスカージョンも行なわれた。ポワティエにはフランスのロマネスク建築のなかでも傑作のひとつに数えられるノートルダム・ド・ラ・グランド教会をはじめとするロマネスク建築が数多く現存しており、ガイドの説明を聞きながら、街が歩んできた歴史に思いを馳せた。旧市街の徒歩ツアーだったので、中にはおいしそうなお菓子のウィンドウに惹かれて自主ツアーに出かけた人も。これもまた、交流を深めたひとコマであったりする。


 シンポジウムの前日、ほとんどの日本側参加者が利用したポワティエへ向かうTGVが1時間も遅れ、時差で眠い上に寒い中、駅のホームで待つことになり、多難な幕開けを感じさせたが、終わってみれば学術的な面でも交流の意味でも大成功のうちに終了することができた。私自身、普段は自分の足元(の研究)ばかり見ているような気がするが、JFFoSに参加したことで、顔を上げて視野を広げることができたような気がする。2年ほど前にたまたま会うことのあったフランスの若い研究者が、「JFFoSに、是非、参加したいと思って、応募しているんだ」と言っていたのだが、今回、その彼に会うことができた。彼は参加できたことをとても喜んでいて、たくさんの質問をし、会議を楽しんでいたようだ。その彼曰く、JFFoSはフランスでも魅力的なイベントとして認識されている、とのことだ。私自身も大変魅力的な会議だと思う。過去には、JFFoSを契機として研究交流をスタートさせたり、シンポジウムなどでの講演依頼を行なったり、と、日仏間のみならず、日本の参加者間の交流も促進できた例もあると聞く。今回のJFFoSも参加者間の今後の研究交流・研究推進の一助となることを願う。


 前述のように、JFFoSの参加者は推薦の他、公募枠もある。もし、本稿をお読みになって興味を持たれた方がいらっしゃったら、是非、応募してみていただきたい。また、チェアやスピーカーの依頼を受けられた方は、是非、前向きに検討していただければと思う。


 なお、JFFoSの開催にあたっては、その運営・サポートを日本側は日本学術振興会、フランス側は高等教育・研究省、外務省、国立科学研究センターが担当して下さっている。綿密で献身的なサポートのおかげで参加者がシンポジウムに集中できる環境が用意されていたと思う。最後になったが、暖かく見守ってくださった事業委員の先生方、そして、素晴らしいシンポジウムにそれぞれの役割で貢献して下さったすべての参加者に深く感謝したい。


表: JFFoSを構成する分野と今回のトピック
分野 4thJFFoSでのトピック
Biology/Life Science Beyond Omics
Chemistry/Biochemistry Attosecond Chemistry
Earth Science/Environment Deep Sea Resources
Material/Biomaterial Science Magnetic Field Effect in Material Sciences
Medical/Neuroscience Glia & Diseases
Physics incl. High-energy and Astrophysics Precision Time Measurements in Physics
Social Sciences/Humanities Financial Crisis: the Role of Information
Theoretical and Applied Mathematics/ Informatics Artificial Life/Artificial Evolution

 

 
記念写真

記念写真

鈴木主査 セッションでのディスカッション
廣田主査 セッションでのディスカッション
ポスターセッション  
ポスターセッション