先端科学シンポジウム

FoS Alumni Messages No.17

「異分野交流・異分野研究のススメ:玄人による異分野での素人発想」

浮田 宗伯

浮田 宗伯

豊田工業大学 大学院工学研究科 教授
HP: http://www.toyota-ti.ac.jp/Lab/Denshi/iim/ukita/

FoS参加歴:

9th Japanese-German Frontiers of Science (JGFoS) symposium イントロダクトリー・スピーカー
10th Japanese-German Frontiers of Science (JGFoS) symposium PGM
11th Japanese-German Frontiers of Science (JGFoS) symposium PGM主査
Japanese-American-German Frontiers of Science (JAGFoS) symposium 2017 PGM

   本稿の依頼を受けたのは、第1回日米独先端科学(Japanese-American-German Frontiers of Science: JAGFoS)シンポジウムでドイツ・フランクフルト空港から会場に向かう高速バスの中だった。その時は、「やっと私にもFoSの楽しさと活用法について宣伝できる機会が来たか」と嬉しい気持ちがある反面、「既に多くの先達の皆様が、いろいろな視点からFoSについてご紹介くださっているのに、何を述べればいいのだろうか」と多少重苦しい気持ちにもなったのを覚えている。まずは、FoS Alumni Messagesを改めて読破してみた。その上で、まだ私なりのFoSをご紹介できると考えた内容を以下に述べる。

   すべての日本側FoS参加者にとって、FoSの初洗礼を受けるのは、事前検討会である。これは日本だけが実施しているもので、本番にさきがけて、日本からのPGM、講演者、参加者すべてが一堂に会する場である。全講演のショートプレゼンを聞いた後、質疑応答を繰り返すことで本番に向けたポリッシュアップを目指すことが目的である。それと同時に、FoS初参加者にとっては「FoSとは何か?」を学ぶ場でもある。

   FoSがどういうものか良くわからないまま、担当分野であるMathematics/Informatics/EngineeringのPGMからの依頼でIntroductory Speakerを引き受けてからの事前検討会であったが、ここで1つ問題発生。PGMが急病で事前検討会に参加できなくなったのである。本来、FoSの先輩であるPGMからFoSについてのアドバイスをもらいながら、自分がなすべきことについて学ぶことができたはずであった。しかし、PGMの急な欠席を当日会場で知らされたため、「FoSとは何か?」という知識は最低限しかない状態だった。その状態で事前検討会に参加できたことは、私にとっては幸運だったのかもしれない。FoSには、日本の科学をこれから牽引していくであろうエースが揃い踏みしているわけだが、もしそのことを知っていたら、あの場で図々しくも素人質問を連発することはできなかったのではないだろうか。しかし、異分野からの素人質問はまさにFoSの真髄で、モノの本質を捉えていることがある。我々の研究分野の大御所・金出武雄先生も「素人発想、玄人実行」が大事であるとおっしゃっている。素人発想とは言っても、各分野ではエースである切れ者からの意見は、時に鋭く、時に自分には思いつかない驚きを感じるものであった。これらの意見は、自分の分野の研究においても、研究の考え方や、発表・議論の方法に影響を与えてくれた。他分野の発表への質疑応答時に、自分の質問が本質を捉えていたかどうかの自信はない。しかし、回答してくれる方々は、皆その分野の第一人者である。これが面白く無いはずがない。これが、FoSとの関わりの第一歩であり、FoSに魅せられた最初の体験である。

   以降、FoSとは長い付き合いとなるが、この最初の事前検討会から現在に至るまで、感じ続けていることがいくつかある。その1つは、FoSに参加する多分野の中での、自分たちの研究分野の立ち位置である。私が参加してきた日独先端科学(JGFoS)シンポジウムとJAGFoSシンポジウムには、我々の研究分野である工学(*注1)の他に、生物学、化学、地学、物理、社会科学が含まれている。最初は「理系と文系」という観点から、社会科学が異質だと感じていた。しかし、いざ発表を聞くと、我々の工学こそが異質であると感じた。それは、他分野が「世の理を発見する」科学である一方、工学からの発表のほとんどが「新しい技術を創る」ことが目標だからである(*注2)。

   しかし、異質だから他分野と交わることができないかというと、そういうわけではない。むしろ、現在においては、工学分野におけるInformatics技術は、あらゆる研究分野のデータ解析に有用であり、今後は必須技術になってくるとも予想される。こうした考えのもと、2017年JAGFoSシンポジウムのテーマ、Machine Learning & Computational Modelingは、我々の研究分野の技術を他分野でも活用してもらうことを目標にしたものであった。この異分野交流・学際研究こそ、FoSの醍醐味の1つである。

   隗より始めよというわけではないが、私はFoSのおかげで、学際研究や国際研究の道を切り開いてきた。FoS関係者であるドイツの研究機関との共同研究に始まり、現在は経済学とのコラボレーションを進めている。FoS関係者以外との学際研究・医工連携も、FoSの経験あってこそ始めることができた。もともとの私は、自分の研究分野外には目を向けないタイプであったが、FoSのおかげで自分の懐を、視野を広げることができたのである。

   もちろん、こうしたFoSの空気に馴染めない研究者もいるだろう。自分の研究にとって何の役に立たないという研究者もいるだろう。しかし、研究分野が多様化する現在、異分野研究間で類似・関連技術が必要になることは多々ある。そのような状況で、各分野が独立に動くのではもったいない。また、自分の役に立つか立たないかだけが重要というのは、研究者としては狭量というものではないだろうか。科学技術を志す一研究者として、純粋に楽しむ心の余裕を持っていたい。

   最初に「何を書けばいいのか。。。」などと愚痴ったにもかかわらず、まだまだ書きたいことはあるが、長々と喋ってしまうのは悪い癖なので、このあたりで私からのメッセージを終わることにする。FoSでは、2017年から3か国間シンポジウムが試行されている。より良質な機会を研究者に提供するべく、改革が続けられているのである。しかし、FoSにとって何よりも大切なのは、良質な参加者による積極的な議論である。このメッセージが、未来のスター研究者の方々から、一人でも多くFoSに興味を持ち、FoSによって更に殻を破って大きな研究者になる方が産まれるための一助になれば幸いである。

(*注1)
本当の分野名は Mathematics / Informatics / Engineering であるが、これまではほぼInformatics / Engineeringの分野のみが参加しており、Informaticsも情報工学の1分野と捉え、ここでは工学と略した。

(*注2)
もちろん、新しい技術を作るために、世の理を発見することを目標にする工学分野も存在するが、その場合でも、その理を発見するための工学技術の発明に焦点が置かれている場合が多いという観点。


【第9回JGFoS:工学セッション】   【第10回JGFoS文化研修】

【第9回JGFoS:工学セッション】

 

【第10回JGFoS文化研修】

【第11回JGFoS:PGM主査閉会挨拶】   【第1回JAGFoS:工学セッション】

【第11回JGFoS:PGM主査閉会挨拶】

 

【第1回JAGFoS:工学セッション】