日本学術振興会

先端科学シンポジウム

FoS Alumni Messages No.7

「FoSでの思い出」

牧野 和久

京都大学
数理解析研究所 准教授

FoS参加歴:

12th JAFoS参加研究者
13th JAFoSPGM
14th JAFoSPGM


 私とFoSとの関わりは、2010年にかずさアークで行われた第12回日米先端科学(JAFoS)シンポジウムに一般参加者として参加したことからスタートした。というか本当はその数年前に何度かFoSへの参加のお誘いがあったが、都合が合わずお断りしていた。当時、忙しい日々の中で如何に連続的に研究時間を作るかに悩んでいた時期でもあり、果たしてそれを押してまで参加する意義があるのか少々疑問に思っていたのは事実である。これは多くの研究者の共通認識であると思う。ただ参加して自分の危惧は一変した。単純に面白い。私の専門は、離散数学、アルゴリズム論、最適化理論という数学、計算機科学の分野である。シンポジウムを構成する8分野:生物・生命科学、化学・生化学、地球科学・環境、材料・生命材料科学、数学・応用数学・情報科学、医学・神経科学、物理・天体物理学・天文学、社会科学のうち直接的な関係がある数学を除いて、ずぶの素人である私が最先端の研究内容に触れることができ、非常に刺激的だった。(もちろん数学分野も非常に幅が広いので、私自身が知らないことの方がはるかに多いのであるが。)この面白さを実感できたのはシンポジウム前に行われた日本語での日本側の事前検討会のおかげであるといえる。専門用語は日本語で聞いてもなかなか難しい。それを初めて英語で聞いても正直ピンとこないし、そのせいでまったく英語が頭の中に入ってこない。予め日本語で話を聞いていたおかげで、英語での発表にもついていけたのではないかと思う。(本当についていけたかどうかは定かではないが。)そういう意味で最も刺激的なのは実は事前検討会かもしれない。さて、この第12回JAFoSに初めて参加してみて、シンポジウムを構成する8分野のうち数学分野、より正確には、「数学、応用数学、情報科学」分野の難しさを実感した。すなわち、情報学の華やかで見た目にも面白い話題を行うと、その工学的な側面ばかりクローズアップされ、サイエンス的な要素が少なくなる。その逆に数学的に面白い話題を行うと、他分野の方との活発な議論が展開しにくい。もちろんセッションを上手に構成すれば、それぞれうまくいくのであろうが、単純ではないことを痛感した。過去の参加者やPlanning Group Member (PGM)の方などにお聞きしても同じようなこと、「数学はそういう傾向があるね」などと仰る先生が多かった。実は、この印象(より正確には事前検討会で受けたのであるが)が、第13、14回JAFoSの数学分野のPGMをお引き受けする要因となったのである。

 第13、14回JAFoSには、数学分野のPGMとして参加した。正直FoSに参加するならばPGMとして参加しないと意味がないと言っても過言ではないように思う。PGM間で何度も会議があり、それによりPGM間に連帯感が生まれ、掛け替えのない仲間ができたと思っている。PGMの間で議論したり、雑談する中で、それぞれの分野の本音の部分など聞くことができ大変勉強になった。さてさて、上述の数学分野の困難さであるが、第13、14回JAFoSでは何とか乗り越えることできたのではないかと思っている。第13回にはオークション理論(Auction Theory and Mechanism Design)、第14回には折り紙(Origami – Paper Folding and Its Generalization)を推薦した。両方とも、数学の美しさとエレガントさがあり、ある意味ディープな数学そのものであるが、その一端は専門家以外にも分かりやすく、また、実社会への応用があるものを題材に選んだ。共に、事前のPGMの投票では1位だったこともあり、すんなりトピックを決定することができた(他のPGM(特に、日本側のPGM)の協力なくしてはこうは行かなかったかと思う)。また、折り紙のセッションは色々な方々からお褒めの言葉を頂いた。例えば、細谷PGM主査の第14回日米先端科学(JAFoS)シンポジウム実施報告書を参照されたい。もちろん、これはチェアならびにスピーカーのおかげである。本当に感謝したい。

 さて、私は第14回JAFoSでFoS卒業である。何となく寂しい気持ちもある。ただ、先日、文部科学省の新学術領域研究に関連する会議に参加したとき、JAFoSでお世話になった何人もの先生とお会いすることができた。通常この種の会議は全然違う分野の先生が集まるため、誰も知らないのが普通だと思うのであるが、懐かしさとともに、これこそがJAFoSに参加することによって得られた財産なのだと思った。本当にこのような機会を下さり、色々な角度からサポートしていただいたFoS事業委員会の先生方、JSPSの方々、他のPGMの先生、チェア、スピーカーなどとして参加して下さった先生などなどに心より感謝致します。


 

【第13回JAFoS(2012):集合写真 牧野PGMは最左列前から3番目】

 

【第13回JAFoS(2012):数学・応用数学・情報科学セッション】

 

【第14回JAFoS(2014):Origamiセッション チェア・スピーカー】

 

【第14回JAFoS(2014):日本側PGM 牧野PGMは左から2番目】