日本学術振興会

FoS Alumni Messages No.22

「FoSは沼った者勝ち」

中西 尚志

FoS参加歴:

このメッセージに目を通す人はおそらくFoS愛にあふれるFoS経験者、FoS事業に携わった日本学術振興会(JSPS)関係者、またはこれからFoSシンポジウムへの申し込みを検討している若手研究者だと察します。JSPS担当者からはFoSシンポジウムへの申し込みを検討している、または今後関わる機会のある若手研究者向けにメッセージをと依頼を受けました。これまでにもFoS経験者の諸先輩方が熱く、FoS愛にあふれたメッセージを寄稿されていて、その勢いに対抗してもしょうがないと思いつつ、私もFoSに参加することで得ることができた貴重な経験を文面にしてみたく思います。

私自身は、第11回日独先端科学(JGFoS)シンポジウムに参加研究者(2014年・ブレーメン)、第12回JGFoS PGM(2015年・京都)、第13回JGFoS PGM(2016年・ポツダム)主査として参加させていただき、第1回日加先端科学(JCFoS)シンポジウム(2017年・沖縄)にもPGM主査として参加させて頂きました。アメリカ・ヒューストンに1年半、イギリス・オックスフォードに1年、ドイツ・ポツダムに3年間滞在していた経験もあったからか、FoS事業にフィット感が高そうと最初に声をかけていただき、参加を重ねるたびにFoSに沼っていった感覚です。

各FoS事業には各研究分野の限られた人数のみに参加の機会(各回1分野4~5名)が与えられるため、FoS経験者が近くに居ないとあまり知る機会のないJSPS事業なのかもしれません。異分野の国内外の若手研究者とホテルに3日間缶詰になって各専門分野のフロンティア、カッティングエッジに関して議論する場であるFoSシンポジウムは、ゴードン会議に似た形式です。FoSシンポジウムは体験しないとその良さは分からないと思いますので、是非興味を持って申し込んでいただきたいと思います。確実に視野は広がると思います。過去の参加者を見ても後に、ノーベル賞受賞者、研究機関の理事長、ERATOなど大型プロジェクトを担当されている方など、錚々たるメンバーです。新聞記事やTVなどメディアに出られているFoS Alumniの方を拝見する機会もあり、すごい研究者らと知り合いになっていることに嬉しくなります。同じタイミングでFoSシンポジウムに参加する研究者も近い将来、大活躍する可能性も高いと思います。とにかく刺激的な講演を聴ける、同じ目線・空間で海外のトップ研究者も踏まえて議論に参加させて頂ける機会は研究者にとっては間違いなく「贅沢で至福な時間」です。

FoSを心から楽しめる(FoSに沼る)人材は、FoS愛が芽生え、複数の事業に携わる場合もあり、FoS Alumniの活動にも参加できるなど、長期にわたってFoSで得られる刺激、刺激を味わって得られる心地よさに酔い浸ってる方々だと思います。私もその一人ですね。一流の研究者から、最先端の研究の話を聞かせて頂き、自身の興味のまま質問し、議論できます。他の参加者の鋭い質問、講演者の回答の返しの巧さに魅せられる。1セッション約60分の発表と60分の質疑は毎回あっという間に終わってしまいます。2時間集中して、普段とは違う脳の箇所が刺激を受けているのを感じ、どっと疲れます。でも、楽しい。FoSとは研究者にとって麻薬の様な効果を与えているのではないでしょうか?FoSの参加資格年齢(原則45歳以下ですが、JSPS内では「余人を持って代え難い」などのフレーズがあるらしいです、、、)の枠外となった今では、たまにFoSに触れて脳の一片に刺激を受けたいと、FoS欠乏症の状態になることもあります。ただ、45歳以下の年齢に原則制限されているのは、やはりそれなりに年齢が上がってくると、色々と携わる業務も増えてきて、FoSに労力・時間を割くのが難しくなるのも納得がいきます。それほど、FoSにはエネルギー・時間を割いて関わっていたと思いますし、その分に有り余る価値ある経験を得ることができます。

PGM主査を務めた日独先端科学(JGFoS)シンポジウムのポツダム開催の会議と第1回日加先端科学(JCFoS)シンポジウムに関して少し振り返ってみたいと思います。ポツダムは自身が3年間マックスプランク研究所コロイド界面部門に滞在した土地でもあったため、ホームの感覚で会議に挑みました。PGM主査は会議の最後に総評プレゼンをするのですが、ドイツ側のPGM主査と協力して、各分野で繰り広げられた議論のハイライトを紹介しました。会期中に撮りためた写真も使い、諧謔も加えつつその場でまとめあげプレゼンを終えたときは、やりきった充実感に満ちた記憶があります。それほどに最後の総評プレゼンは、会期前、会期中もプレッシャーとして感じていました。JSPS関係者や相手国の事業担当者らとも協力して会議を成功に導くプロセス、経験は間違いなく自身を高めることができ、その後の研究活動の糧になっていると思います。一方、カナダとのFoS事業は前例がなかったこともあり、カナダ側に日本の若手研究者と共にFoSシンポジウムを継続開催したいと意識付けするのも目標として会議に挑みました。結果として2023年に第2回日加FoSシンポジウムが開催された模様で、一緒に第1回会議に挑んだ他分野のPGMメンバーとの共同作業が実を結んだようで安堵しています。FoS事業に参加する機会が無ければ、生物・生命科学、物理・宇宙物理、数学・情報科学、地球科学、社会科学、化学・材料科学(筆者の専門)の研究者らとこれほど密接に議論でき、会議を共同運営する貴重な機会には巡り会えなかったと思います。今後も末永く大事にしたい縁です。

以上の様に、運良くFoSに参加する機会に巡り会えた研究者、これからFoS事業への参加を希望する研究者の皆さんには、その貴重な経験を最大限に楽しんで欲しいと思います。自身の研究と同じで、自身が最大限楽しむことが最大級の成果を得る最も近道になると思います。私が所属する物質・材料研究機構の廊下の壁に次のような言葉が掲げてあります。The fruits of your research are proportional to the number of your conversations with others. 忙しい日常では、目先の成果に一喜一憂しがちです。FoS事業では、国内および相手国の同世代のトップ研究者らと存分に議論することができます。是非、会話・議論を思う存分楽しむことで、将来の研究活動の肥やしにして欲しく思います。
12th JGFoS@京都 化学セッションメンバー
12th JGFoS@京都 化学セッションメンバー
13th JGFoS@ポツダム 文化研修サンスーシ公園にて
13th JGFoS@ポツダム 文化研修サンスーシ公園にて
13th JGFoS@ポツダム PGM主査による総評プレゼンテーション
13th JGFoS@ポツダム PGM主査による総評プレゼンテーション
1st JCFoS@沖縄 PGMメンバー一同
1st JCFoS@沖縄 PGMメンバー一同