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世界トップレベル研究拠点プログラム

研究講演のご紹介
研究講演(1)~科学は深く、美しい~






「宇宙の始まりと終わり」
村山 斉 (むらやま ひとし)
東京大学 国際高等研究所 カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU) 機構長 

プロフィール:
東京大学大学院理学系研究科博士課程修了後、東北大学やローレンス・バークレイ国立研究所を経て、現在はカリフォルニア大学バークレー校教授と東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構長を兼務。専門は素粒子理論。方向性に悩む修士の時に素粒子現象論荻原薫氏の集中講義を受け転機となり博士課程に進むことを決意。今では高いコミュニケーション能力、強いリーダーシップで世界的な天文プロジェクト“ SuMIRe ”を指揮する。

講演紹介:
宇宙はどうやって始まったのでしょうか?この宇宙の運命はどうなるのでしょうか?そして、宇宙の始まりにも終わりにも成り立つ基本法則とは何でしょうか? 昔から、私たち人間は宇宙に対して様々な疑問を持ち、その解明のためにあらゆる研究を行ってきました。私が働く東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構 (Kavli IPMU) では、数学と物理、天文学の研究者達が分野や国籍の壁も越え一緒になって、宇宙の始まりや終わりの謎に挑んでいます。でも、どこまでが明らかになっていて、どこからが謎なのでしょう?みなさんご存知ですか? 今日は何が謎とされているかを整理して、Kavli IPMUで行われている宇宙の始まりと終わりに迫る最先端研究をご紹介します。







「地球はどのようにしてできたか」
井田 茂 (いだ しげる)
東京工業大学 地球生命研究所(ELSI) 副拠点長

プロフィール:
1960年東京生まれ。都立富士高、京都大学理学部物理卒。この世界の成り立ちが知りたくて研究者を志す。東京大学大学院地球物理学専攻修了。1990年東京大学教養学部・助手、1993年東京工業大学地球惑星科学・助教授、2006年同教授、2012年から地球生命研究所・教授(副所長)。3体問題、重力N体シミュレーション、月の形成シミュレーションなどを行い、開発した惑星系生成モデルを使って太陽系の起源や系外の惑星系の分布を議論してきた。

講演紹介:
地球の生命は、初期の地球の環境のもとで生まれ、その環境は地球の形成過程によって決まります。多様な太陽系外の惑星系(系外惑星系)が多数発見されたことで、惑星形成過程の見直しが行われ、太陽系そして地球の形成モデルもずいぶんと変わってきました。系外惑星系のデータやコンピュータ・シミュレーションなどをもとに、多様な惑星系がどのようにして形成されたのか、地球がどのようにして形成されたのか、生命を宿す惑星にはどのようなものがあるのか、どれくらいの数あるのか、といったことについて、最新の描像を紹介したいと思います。







「数学は美しい」
小谷 元子 (こたに もとこ)
東北大学 原子分子材料科学高等研究機構(AIMR) 機構長

プロフィール:
東京大学数学科卒業。1999年より東北大学で数学の教育・研究を行っている。2012年から「数学の視点を取り入れた新しい材料研究」をスローガンにAIMR機構長に就任。図形が好きで数学者を志した。日々、無限の世界を探索しているので、有限の数の計算は苦手。第25回猿橋賞受賞。休日は書店をめぐり、読書で数学の感性を鍛えている。

講演紹介:
数学の結果に関する最上の褒め言葉は「美しい」です。自然界を記述する数学は、我々の住む自然界の美しさを記述することで発展してきましたが、なぜ人間が生み出した「数学」という道具が自然界の原理を解き明かすことにこれほど有効なのか、不思議なことです。自然界にある形の美しさは対称性や秩序によってもたらされます。本講演では、一見無秩序とみえる複雑な系から秩序を取り出す数学の最新手法を紹介します。そして、数学の視点で材料科学の新しい展開をもたらすAIMRの挑戦を紹介します。

研究講演(2)~生命は謎に満ちている~






「受精から体ができるまで」
影山 龍一郎 (かげやま りょういちろう)
京都大学 物質-細胞統合システム拠点(iCeMS) 副拠点長

プロフィール:
1982年に京都大学医学部卒業、1986年に京都大学大学院医学研究科修了、医学博士取得。1986〜1989年に米国国立癌研究所客員研究員、その後、京都大学医学部で研究。1997年より京都大学ウイルス研究所教授。2013年から京都大学iCeMS副拠点長。医学部在学中に基礎医学の面白さを知り、研究者を志した。神経幹細胞の増殖・分化を光操作で制御することに成功。現在、成体脳での光操作を試みており、脳再生医療への応用を目指している。

講演紹介:
受精卵が赤ちゃんに成長する過程は、本当に不思議で驚きに満ちています。この複雑な過程は、どのように制御されているのでしょうか。この過程を大人になってから再現できるでしょうか。赤ちゃんに成長する過程では、脳、腸、肝臓、骨、血液といった各種組織に特異的な幹細胞(組織幹細胞)が分化し、この幹細胞からそれぞれの組織が形成されます。大人になっても組織幹細胞は存在しますが、胎児期とは異なり、増殖能や分化能は低いです。この大人の組織幹細胞を胎児期の状態にもどして(若返り)再生医療に応用しようとする試みがなされています。発生過程を再現しようとする最近の研究成果を紹介します。







「睡眠・覚醒の謎に挑む」
柳沢 正史 (やなぎさわ まさし)
筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構(IIIS) 機構長

プロフィール:
1960年東京生まれ。筑波大学医学専門学群・大学院博士課程修了。米国科学アカデミー正会員。大学院在学中の 1987年に血管制御因子エンドセリンを、1998 年に睡眠・覚醒を制御するオレキシンを発見。1991 年に渡米し、テキサス大学サウスウェスタン医学センター教授兼ハワード・ヒューズ医学研究所研究員として20年以上にわたり活躍したのち、2012年より現職。趣味はフルート演奏。筑波大学医学フィルハーモニーに所属して年に数回演奏会を行っている。

講演紹介:
私たちは人生のおよそ三分の一を眠ってすごします。睡眠は誰にでも身近な現象であり、毎日経験する行動でありながら、じつはそのメカニズムや役割が驚くほど明らかになっていません。私は、オレキシンという脳内の発見をきっかけにして睡眠研究の世界に飛び込みました。そして今、世界最高峰の睡眠研究所、国際統合睡眠医科学研究機構を筑波大学に設立し、世界中から集まった優秀な研究者たちを率いて、現代神経科学最大のミステリーとも言われる睡眠覚醒の謎を解き明かそうと奮闘しています。これまでにどんなおもしろい結果が得られたのか、謎はどこまで紐解かれたのか、ぜひご覧ください。







「免疫を制御する細胞とは? -自己と非自己の免疫学」
坂口 志文 (さかぐち しもん)
大阪大学 免疫学フロンティア研究センター(IFReC) 副拠点長

プロフィール:
1976年京都大学医学部卒業。愛知県がんセンター、ジョンズホプキンス大学、スタンフォード大学等を経て、1999年京都大学再生医科学研究所教授、2007年同所長、2011年から大阪大学免疫学フロンティア研究センター教授。
過剰な免疫反応を抑える「制御性T細胞」の発見とその後の研究が高く評価され、コーリー賞、慶應医学賞、紫綬褒章、日本学士院賞、米国科学アカデミー会員、ガードナー国際賞、トムソン引用栄誉賞などに輝く。Science などトップクラスの学術誌の編集にも従事してきた。

講演紹介:
免疫という身体の機能は、病原体(細菌・ウイルス・寄生虫)から自らを守るために存在しています。一方で、免疫が自分自身を傷つけてしまう「自己免疫疾患」という病気が数多く存在します。免疫細胞が関節を攻撃する関節リウマチや腎臓の細胞を攻撃するⅠ型糖尿病などがその代表です。免疫は「身体を守る、しかし病気も起こす」という二面性を持つ複雑なシステムと考えられます。なぜ免疫は自らの身体を攻撃するのか?という疑問は、免疫細胞がどのように自分と他人を見分けているのかという問いに結びつきます。今回の講演会では、自己免疫疾患において重要な役割を担う異色の免疫細胞、制御性T細胞の働きと病気の関係などについてお話ししたいと思います。
研究講演(3)~科学は社会に貢献する~






「社会に貢献する新しい材料」
青野 正和 (あおの まさかず)
物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(MANA) 拠点長

プロフィール:
1972年に東京大学で博士課程を修了し、筑波の無機材料研究所(NIMSの前身)に入所。1978-80年の2年間、米国ウィスコンシン大学客員教授(シンクロトロン放射光センター)。1986年に理化学研究所に移り、表面・界面工学研究室を立ち上げ。2002年、NIMSに転任。この間の1996-2005年の9年間、大阪大学教授を兼務。今日のナノテクノロジーのパイオニアであると自負している。現在、物質・材料研究機構(NIMS)のMANA拠点長。

講演紹介:
18世紀の第一次産業革命(蒸気機関の発明)、20世紀初頭の第二次産業革命(電気エネルギーの利用)、20世紀後半の第三次産業革命(コンピューターの利用)のいずれにおいても、新しい材料の開発が決定的に重要な役割を果たしました。今後の第四次産業革命(あらゆるものがコンピューター制御されネットで結ばれるIoTの世界の出現)においても、新しい材料が中心的な役割を果たします。ただし、この段階になると新しい材料の概念が変わります。すなわち、同じ材料でも寸法を小さくしていくと予想もしなかった新しい性質が出現するのです。この興味深いナノサイエンスおよびナノテクノロジーの世界に皆さんをお誘いします。







「チカラある分子を創る」
伊丹 健一郎 (いたみ けんいちろう)
名古屋大学 トランスフォーマティブ生命分子研究所(ITbM) 拠点長

プロフィール:
1971年アメリカ生まれ、東京育ち。京都大学で博士号を取得。2008年名古屋大学教授、2012年から名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所(ITbM)拠点長を兼任。日本人最年少で2015年のアメリカ化学会賞受賞。「分子で答えを出す」を合言葉に、化学・生物学・材料科学の境界領域で、画期的な機能分子の開発を目指している。革新的な分子合成を可能にする新触媒や新反応を多数開発し、世界中の化学・製薬企業の研究開発に大きく貢献するだけでなく、ナノカーボン科学の新潮流をつくった。

講演紹介:
私は、分子のチカラを信じています。みなさんもご存知のように、この地球上には実に多くの「問題」があります。エネルギー問題、食糧問題、環境問題、医療問題などです。私が信じているのは、それらの問題の多くに対して「分子で答えを出す」ことができるということです。私の研究のゴールは、問題を解決するような画期的な機能をもつ分子(チカラある分子、世界を変える分子)を開発し、世に送り出すことです。また、これは一つの研究分野にとどまっていては決して実現できるものではなく、異分野融合が鍵となります。本講演では、分子がもつ無限の可能性や触媒が拓く合成化学を基軸としたものづくり研究についてお話しします。







「エネルギー問題に貢献する科学」
小江 誠司 (おごう せいじ)
九州大学 カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所(I2CNER)
触媒的物質変換研究部門 部門長

プロフィール:
1963年広島県尾道市生まれ。東京理科大学、総合研究大学院大学を卒業。米国ローレンスバークレイ国立研究所で研究後、分子科学研究所助手、名古屋大学助手、大阪大学助教授、九州大学教授を経て、現在は九州大学主幹教授。化学と生物学の狭間に興味を持ってこの世界に飛び込み早数十年。自身の名がついた小江触媒(Ogo’s catalyst)という常温・常圧で水素から電子を取り出すことのできる画期的な分子の使い途を日々考えている。

講演紹介:
私たちは、酸素(O2)や窒素(N2)などの小さな分子に囲まれて生活しています。自然では、そのような小分子が活躍して、地球環境に負荷をかけないエネルギー循環が行われています。このような自然のエネルギー循環の仕組みを手本に、私たちは、カーボンニュートラル(二酸化炭素(CO2)を増やさない)社会の実現を目指しています。まず、手本となる酵素を自然から採取し、その性質を調べることから研究をスタートしました。そしてついに、自然の酵素と同じ仕組みで、水素(H2)から電子を取り出して作動する「分子燃料電池」を世界で初めて開発しました。ここでは、このような「小分子が活躍するエネルギーの物語」を紹介します。