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科学研究費助成事業

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最近の研究結果

 科研費により支援する学術研究では、毎年度、数多くの優れた研究成果が生み出されています。文部科学省及び日本学術振興会では、四半期毎に「科研費NEWS」を発行し、「最近のユニークな研究成果の例」として、科研費による研究成果の一部をご紹介しています。

 このコーナーでは、過去に「科研費NEWS」で掲載された「最近のユニークな研究成果の例」を分野毎に紹介しています。


人文・社会系理工系生物系


生物系(医歯薬学)

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食塩感受性高血圧の発症に「コレクトリン」が関与していることを発見

岡山大学病院腎臓・糖尿病・内分泌内科講師 和田 淳

【研究の背景】

 国民の食塩(塩化ナトリウム)摂取量は1日平均11グラムですが、高血圧を予防する観点からは6グラム以下が望ましいとされています。
 食塩摂取による血圧上昇の程度には個人差があり、家族が高血圧の方や慢性腎臓病の方、高齢の方はその程度が大きく、これを「食塩感受性高血圧」と呼んでいます。食塩感受性高血圧は、虚血性心疾患や脳卒中などの心血管合併症を惹き起こす頻度が高くなりますが、食塩を制限すればその頻度を低下させられることがわかっていました。
 一方で、食塩が不足すると、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系のホルモンの働きによって腎臓の尿細管での上皮ナトリウムチャネル(ENaC)の働きが強まり、ナトリウムを体内に再吸収して体内の食塩保持と血圧上昇を惹き起こし(図1)、食塩を過剰に摂取すると、逆にアルドステロンは著明に低下することが知られています。
 そのため、なぜ、食塩摂取により血圧が上昇するのかは不明でした。

【研究の成果】

 私たちが2001年に発見したコレクトリンは「アンジオテンシン変換酵素」遺伝子ファミリーに属しており、腎臓の近位尿細管細胞、集合管細胞、膵臓のベータ細胞に存在しています。
 コレクトリンは小胞体の細胞膜への融合に関与するSNARE複合体に結合して、インスリンの分泌を促進することがわかっていましたが、今回、腎臓の集合管細胞でもSNARE複合体に結合してENaCなどの膜蛋白を尿細管の細胞膜上に運ぶ役割をしていることを見出しました。
 食塩摂取により血圧の上昇する高血圧ラットに高食塩食を与えたところ、アルドステロンは抑制されるものの、コレクトリンは増加し、細胞膜上のENaCを増やしていることが判明しました(図2)。

【今後の展望】

 この結果は高血圧ラットから得られたものであるので、実際にコレクトリンの働きにおける個人差が食塩感受性高血圧発症にどう関係しているか、今後、更に検討したいと思います。
 高血圧患者の治療には、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の働きを抑える降圧薬がよく使用されますが(図1)、食塩を摂りすぎるとコレクトリンの働きが高まって効果が十分発揮されない可能性があることから、食塩を制限する食事療法との併用が非常に重要と考えられます。

【活用された科研費】

平成10―11年度 奨励研究(A)「新しく発見された動物レクチンgalectin-9の研究」
平成14―16年度 基盤研究(C)「新規ACE2ホモローグcollectrinの発見と腎発生・進行性腎障害への関与」
平成17―19年度 基盤研究(C)「新規ACE2ホモローグcollectrinの相互作用分子同定と高血圧症への関与」
平成20―22年度 基盤研究(B)「Vaspinのメタボリック症候群における意義」

図1

図1 レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系と高血圧

図2

図2 コレクトリンと食塩感受性高血圧

※所属・職名は執筆時のものです。

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