事業の成果

准教授:柳谷 隆彦

准教授:柳谷 隆彦

「世界最高の横波エネルギー変換効率を持つ圧電性薄膜」

早稲田大学 理工学術院 准教授
柳谷 隆彦
〔お問い合わせ先〕E-MAIL: yanagitani*waseda.jp
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研究の背景

 圧電効果を持つ材料に交流電界を印加すると、電気エネルギーは機械エネルギーに変換され、音波が発生します。ここで、電界の周波数が材料の形状で決まる固有振動数と一致すると音波が共振します。この共振状態の圧電体に微小な質量が付着すると、共振周波数が変化するため、高感度な質量センサを実現することができます(図1)。
 音波には地震波と同じように縦波と横波があります。横波共振する圧電体は液体に浸しても振動エネルギーが液中へ漏れていかないため、液中で共振を持続する性質があります。そのため、ナノグラムオーダーのタンパク質の反応を検出でき、バイオセンサに応用できます(図1)。センサの感度は共振する圧電体の重さが軽くなるほど、高くなります。薄膜化すると軽くなることから、大きな横波圧電効果を持つ薄膜が求められています。

研究の成果

 横波を発生させるには、電界方向(膜厚方向)に対して結晶の分極軸(極性軸)を傾ける必要があります。しかし、一般的な圧電薄膜では分極軸が基板面に対して垂直に成長する性質があります。私は独自のスパッタリング成膜法により、結晶(ScAlN:窒化スカンジウムアルミニウム)を斜めに成長させることに成功しました。次に、圧電性による電気エネルギーと機械エネルギーの変換効率の目安を示す電気機械結合係数を計算したところ、極性軸が電界に対して30º程度傾けて成長させたときに、最大に達することがわかりました(図2)。そこで、実験を重ね、結晶の成長角度を30º程度に調整し、Sc濃度を最適化したところ、気機械結合係数17%を達成し、薄膜としては世界最高の横波圧電性効果を得ることができました(図3)。

今後の展望

 この圧電薄膜を用いれば、より高感度な質量センサの実現が期待できます。今後、微小量の液体の粘性を測定するセンサや、タンパク質の抗原抗体反応を検出するセンサに応用したいと考えています。この方式のセンサでは、プールにスプーン1杯程度の低濃度のタンパク質を検出できる可能性があり、リアルタイム性も有しています。将来、予防医学分野への応用も期待されます。

図1 タンパク質を検出するバイオセンサのイメージ

図1 タンパク質を検出するバイオセンサのイメージ

図2  ScAlN薄膜の横波電気機械結合係数と結晶c軸傾斜角度の関係

図2  ScAlN薄膜の横波電気機械結合係数と結晶c軸傾斜角度の関係

図3  ScAlN薄膜の横波電気機械結合係数とSc濃度の関係

図3  ScAlN薄膜の横波電気機械結合係数とSc濃度の関係

関連する科研費

2009-2010年度若手研究(B)「圧電薄膜を用いた表面波型液体計測センサの開発」
2012-2014年度若手研究(B)「高感度センサMEMSを目指した巨大横波圧電薄膜の開発」
2015-2016年度挑戦的萌芽研究「極性反転多層構造の巨大圧電性薄膜を用いたGHz帯高分解能超音波プローブの実現」
2016-2019年度 基盤研究(B)「横波超音波の固有振動数変動による抗原抗体反応の高感度質量計測」