事業の成果

教授:加藤 鎌司

教授:加藤 鎌司

「東アジアに渡来・起源した作物資源の多様性を探る」

岡山大学 大学院環境生命科学研究科 教授
加藤 鎌司
〔お問い合わせ先〕TEL:086-251-8323(研究室) E-MAIL:kenkato*okayama-u.ac.jp
(注)メールアドレスは、「@」を「*」に置換しています。

研究の背景

 地球規模の環境変動や不安定化が農業に重大な影響を及ぼしています。このような状況において、世界の人口を支える食糧の確保や高品質な農産物の安定生産の鍵を握るのが品種改良であり、そのための素材(交配親)として作物遺伝資源(改良品種、在来品種、野生種など)が利用されています。作物遺伝資源は、計り知れないほど多様な有用機能をもつ未利用資源の宝庫ですが、農業の近代化や開発により急速に失われており、その保全が緊急の課題となっています。

研究の成果

 研究グループは、コムギ、オオムギ、ダイズおよびメロンを研究する5大学(岡山、鳥取、山形、弘前、北海道)計10名の研究者で構成されています。私たちは、地理的・生態的に変化に富む東アジアを中心に在来品種や野生種が残っている地域を訪問し、現地研究者と一緒にフィールド調査をして作物遺伝資源を収集しています。このようにして収集した材料を栽培して特性評価や種子増殖を行い、さらに分子遺伝学的手法を用いて各作物の起源や進化、多様性について研究しています。一例としてメロン班の研究成果を紹介します。
 メロン班は、中国雲南省や東南アジア諸国で世界的にも貴重な遺伝資源を収集することができました(図1)。これらの遺伝資源と世界の多様なメロン在来品種(図2)を用いて葉緑体ゲノムを解析し、栽培メロンの母系が少なくとも東アジアのメロン(Ia型)、欧米のメロン(Ib型)、アフリカ中南部のメロン(Ic型)の3つであることを世界で初めて明らかにしました(図3)。さらに、東アジアに固有で日本では弥生時代から利用されてきたマクワウリやシロウリ(小型種子)は、欧米のデザートメロン(大型種子)とは独立して成立(起源)したことが判明しました。

今後の展望

 私たちは基礎研究だけでなく、耐病性や開花時期などの農業生産に直結する重要形質についての応用研究も行っています。遺伝資源の一部は、文部科学省ナショナルバイオリソース事業ならびに農業・食品産業技術総合研究機構・遺伝資源センターに登録されるとともに希望者に配布されており、研究成果が減農薬や省力生産を可能にする新品種の育成に貢献することが期待されています。ただし、遺伝資源の持ち出しを許可しない国もあるので、そのような国とはどのような共同研究が可能かを現地研究者と議論しながら、引き続き作物遺伝資源に関する基礎および応用研究を進めていく予定です。

図1  ミャンマーの在来メロン(左、C. melo L.)と野生種 C. hystrix (右)。C. hystrix はキュウリと交配できるので、品種改良に利用できる。

図1  ミャンマーの在来メロン(左、C. melo L.)と野生種 C. hystrix (右)。C. hystrix はキュウリと交配できるので、品種改良に利用できる。

図2  世界の多様なメロン(すべて C. melo L.)。中央・西アジアおよび欧米のメロンは主にデザートメロンで、東・南アジアのメロンは野菜用が多い。

図2  世界の多様なメロン(すべて C. melo L.)。中央・西アジアおよび欧米のメロンは主にデザートメロンで、東・南アジアのメロンは野菜用が多い。

図3  栽培メロンで見つかった3つの母系の分布域。Ia型;東・東南アジア、アフリカ南部に多い、Ib型;中央・西アジア、欧米、アフリカ北部に多い、Ic型;アフリカ中・南部に分布。

図3  栽培メロンで見つかった3つの母系の分布域。Ia型;東・東南アジア、アフリカ南部に多い、Ib型;中央・西アジア、欧米、アフリカ北部に多い、Ic型;アフリカ中・南部に分布。

関連する科研費

2011-2013年度基盤研究(A)「東アジアに渡来・起源した作物資源の遺伝的評価と開発的研究」
2014-2016年度基盤研究(A)「東アジアに渡来・起源した作物資源の遺伝的評価と開発的研究(第2次)」