事業の成果

教授:加藤 隆史

教授:加藤 隆史

「新機能を有する液晶およびそれらを基盤とする融合マテリアルの開発」

東京大学 大学院工学系研究科 教授
加藤 隆史
〔お問い合わせ先〕E-MAIL:kato*chiral.t.u-tokyo.ac.jp
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研究の背景

 液晶は、表示素子として用いられ、テレビやスマートフォン、パソコンなど私たちの日常に必須の材料となっています。液晶は、分子が集合して並んでいる結晶のような構造と、分子が動きやすい液体のような性質を兼ね備えたユニークな材料です。このような液晶の「分子配列と動的状態」の特徴を最大限活用することにより、表示にとどまらない多様な機能を発現させ、それを環境・エネルギー・情報・バイオなどの様々な分野に展開して、新しい材料科学の発展や産業の展開につなげたいというのが私たちのコンセプトです。

研究の成果

 液晶には、分子の並び方によって様々な種類がありますが、最近、私たちが注目して研究してきたのは、分子がナノメートルのスケールで秩序をもって集合するナノ相分離液晶の機能化や液晶と他の素材との融合化です。液晶の特徴を生かして(1)輸送機能、(2)光機能、(3)テンプレート機能、などを有する新しい材料を創ることができました。

  1. (1) 輸送機能:液晶分子の自己組織化により、ナノチャンネルを形成させて、電子・イオン・プロトンや分子などを、望みの方向に輸送できる材料を創ることができました(図1)。新しい表示素子やセンサー、電池のための電解質、高機能膜などの材料・デバイスに展開しています。生体膜のチャンネルのように、さらに選択性・効率を上げることに挑戦しています。
  2. (2)光機能:紫外線を吸収して可視光を発光する液晶を開発しました。液晶の特長を活用する分子設計により、力や熱の刺激で発光色を容易に変化させるメカノクロミックおよびサーモクロミック材料を創ることができました(図2)。新しい記録・表示材料をはじめ光機能性素子への展開が考えられます。
  3. (3)テンプレート機能:液晶の分子配列を保ったまま機能性鋳型として、炭酸カルシウムなどの無機成分の結晶成長を制御・融合させることができました(図3)。この構造は、バイオミネラルの1つである強靭なロブスターの甲殻の構造や成分(生体高分子と炭酸カルシウム)と類似した構造となっており、生分解性と高強度性を兼ね備えた環境低負荷型の新しい機能材料に展開することが期待されます。

今後の展望

 分子を集合・配列させることは、分子の高機能性を発揮させるために、きわめて重要です。そのために、分子設計・配列制御により、その集合体の潜在能力をさらに開拓して、高度な機能を発揮できる分子集合体のサイエンスとテクノロジーをさらに発展させたいと考えています。

図1 輸送機能を有するナノ相分離液晶。

図1 輸送機能を有するナノ相分離液晶。

図2 力や熱によって発光色を変化させるメカノクロミック液晶。

図2 力や熱によって発光色を変化させるメカノクロミック液晶。

図3 らせん液晶をテンプレートとして使った有機/無機融合材料。

図3 らせん液晶をテンプレートとして使った有機/無機融合材料。

関連する科研費

2007-2010年度基盤研究(A)「ナノ秩序構造を有する液晶を活用する高機能イオン輸送材料の開発」
2010-2014年度新学術領域研究(研究領域提案型)「融合マテリアル:分子制御による材料創成と機能開拓」(領域代表)
2011-2014年度基盤研究(A)「電子機能を有する液晶/分子集合ナノファイバー複合体の構築」
2015-2018年度基盤研究(A)「液晶の自己組織化構造と界面相互作用を活用する高分子/無機融合材料の構築」