事業の成果


教授:園部 哲史

教授:園部 哲史

「開発途上国での経営管理の実験で産業発展支援の方法を探る」

政策研究大学院大学 政策研究科 教授
園部 哲史
〔お問い合わせ先〕TEL:03-6439-6009 E-MAIL:sonobete*grips.ac.jp
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研究の背景

 昔から、所得水準の低い国々の産業が発展しないのは、企業の経営がよくないからだろうと言われてきましたが、証拠がありませんでした。最近は、経営管理の良し悪しを客観的に把握する方法が発達して、その証拠が示されるようになってきました。しかし、経営管理といっても、金銭の管理やモノの管理やヒトの管理といろいろあります。途上国の企業はどんな問題を抱えているのでしょうか。

研究の成果

 私たちは、タンザニアとベトナムの中小零細企業の経営者に3週間(1日90分)の経営研修に参加してもらい、その効果を調べる実験を行いました。調査対象の企業のうち、ランダムに選んだ企業だけが研修に参加しました。この研修では、従業員の間の分業を効率的に行うカイゼンの初歩を中心に教えました。日本の人々にとっては、オフィスや作業場で他人と一緒に働くことや、その際のエチケットや力を合わせるコツは、当たり前のことになっています。しかし、日本でも経済発展が本格化した当時は違いました。同様に、今日の途上国には、農村での家族労働には慣れているけれども、他人と一緒に働く経験の乏しい人たちが多いのです。
 研修に参加した企業の経営者の多くは、習った管理手法をさっそく実践しました。しかし、企業の売上や利益といった業績はすぐには変わりません。もしかしたら短期間の研修では業績への効果はないのかと危惧したのですが、2年、3年と時間がたつにつれて、研修参加企業と非参加企業の業績の差がはっきりしてきました。
 この実験から、日本的なカイゼンが受け入れられること、経営管理がよくなっても業績がすぐには向上しないこと、そのせいか経営管理の重要性が十分に認識されていないことがわかりました。また、エチオピアでの調査から、経営管理に関する知識の普及にはメディア・キャンペーンが効果的であることがわかりました。

今後の展望

 途上国では、大企業や行政機関でもカイゼンの初歩が効果のあることを示したいと思っています。こうした組織で働く人の多くは高い教育を受けていますが、どうも他人と一緒に働くのが上手なようには見えません。新興国との比較調査から、日本でいうところの「報告・連絡・相談(ホウ・レン・ソウ)」がまったく不足していて情報が職場の人々に共有されておらず、上司はそれを改める術(すべ)を知らないためにリーダーシップを発揮していないことが明らかになりつつあります。
 日本は、この問題の解決に貢献できるし、それによって途上国の発展の可能性が広がるだろうと思います。

朝礼をするようになったエチオピアの女性経営者(中央)と従業員

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