事業の成果

准教授:舩山 学

准教授:舩山 学

「新規パーキンソン病の原因遺伝子の発見」

順天堂大学 大学院医学研究科 老人性疾患病態・治療研究センター
准教授 舩山 学
〔お問い合わせ先〕 TEL:03-3813-3111(代表) E-MAIL:funayama*juntendo.ac.jp
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研究の背景

 パーキンソン病は50~60代に発症することの多い、手足のふるえや動きづらさなどの症状が進行する原因不明の神経難病です。患者は全国に16万人以上いますが、いまのところ根本治療法はありません。患者の10人に1人は親から子へ病気が遺伝する遺伝性パーキンソン病です。また、遺伝歴がなく突発的に発病する孤発型と遺伝型のパーキンソン病には共通点があり、遺伝性パーキンソン病の原因究明は、遺伝性パーキンソン病患者のみならず、患者の大多数を占める孤発型パーキンソン病の原因解明や治療への応用につながると期待されています。これまで18種類の遺伝性パーキンソン病の発症原因遺伝子が報告されていますが、実際にはこれらの遺伝子に異常がみつかる患者はわずか2割程度にすぎません。いまだわかっていない遺伝性パーキンソン病患者の原因遺伝子を同定することが、原因解明と新規治療への応用につながると考え、本研究を進めました。

研究の成果

 遺伝性パーキンソン病の大家系 (家系A) から患者8人と非発症者5人を診察し、DNAを採取しました。8人の患者のうち4人のDNAについて次世代シークエンサーを使って遺伝子配列を調べた結果、CHCHD2遺伝子の182番目の塩基がシトシンからチミンに置換されているという遺伝子変異を発見しました。さらに、この家系とは別の3家系(家系B〜D)のパーキンソン病患者からもCHCHD2の遺伝子変異が見つかりました(図1)。また、一般的な孤発型パーキンソン病患者と健常対象者のCHCHD2遺伝子配列を比べた結果、患者では特定の遺伝子多型を持つ割合が多く、この遺伝子多型を持っているとパーキンソン病を2.5~4.7倍発症しやすいことが明らかになりました。

今後の展望

 これまでの研究からCHCHD2遺伝子はミトコンドリアに存在し、その機能を調節していることがわかっています(図2)。一方、孤発型パーキンソン病でもミトコンドリアの機能異常が発症原因の1つと考えられています。今回の発見により、パーキンソン病の遺伝型と孤発型にはミトコンドリアに関わる共通メカニズムが存在する可能性が示されました。今後、CHCHD2遺伝子の変異によって起こったミトコンドリアの機能異常などの病的な状態が、どのようにパーキンソン病における神経細胞死につながるのかを細胞モデルや動物モデル、パーキンソン病患者由来のiPS細胞などを使って詳しく調べる予定です。

図1

図1 新規遺伝性パーキンソン病原因遺伝子CHCHD2の発見
本研究の成果により4家系から3種類のCHCHD2遺伝子変異を同定した。

図2

図2 CHCHD2はミトコンドリアに局在する
ミトコンドリアの電子顕微鏡像にCHCHD2(黒点)が集積しているのがわかる。

関連する科研費

2011-2012年度新学術領域研究(研究領域提案型) 「エクソーム解析による新規パーキンソン病原因遺伝子の単離」
2013-2014年度新学術領域研究(研究領域提案型) 「新規パーキンソン病・本態性振戦原因遺伝子のゲノム解析と分子病態解析」