事業の成果

教授:長谷川 靖哉

教授:長谷川 靖哉

「光機能を示す希土類ナノ物質の開発」

北海道大学 大学院工学研究院 教授
長谷川 靖哉
〔お問い合わせ先〕 TEL:011-706-7114,E-MAIL:hasegaway*eng.hokudai.ac.jp
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研究の背景

 21世紀における光科学および光技術の発展は目覚ましいものがあります。現代の光科学技術をさらに発展させるためには、光の持つ特性を自在に操る光機能物質の学術研究が鍵と考えられます。21世紀の社会を切り開く新しい光機能物質の研究を行うため、私はこれまで希土類元素に注目してきました。
 希土類は医療・加工用レーザーや強磁石の基盤元素として知られており、その特筆すべき性能は希土類がもつ「f軌道」に由来します。このf軌道の科学は主に物理学および電子工学分野などで展開されてきました。しかし、f軌道の光機能を支配する配位子場効果はあまり知られておらず、遷移金属のd軌道に比べて未解明な部分が多く見られます。私は錯体光化学の視点から、f軌道の光機能に関する解明・機能化を行ってきました。

研究の成果

 希土類の光機能を最大に引き出すため、 新しい分子設計理論(振動抑制理論、発光加速理論)を考案・導入し、これまで不可能とされてきた希土類錯体の強発光化に成功しました。また、強発光性の希土類錯体を用いた先端光機能物質(レーザー材料、EL材料、光メモリ材料、円偏光発光材料など)も報告し、近年では希土類元素を組み込んだ新型発光体「希土類元素ブロック高分子」の開発にも成功しました(図1)。
 さらに、光情報を伝達制御できる物質の創成を目的として、高効率な光情報通信を可能にする新しい半導体「希土類ナノ結晶」を世界に先駆けて合成しました。その結晶を量子サイズ化および磁気構造最適化することで、f軌道に基づく巨大な光磁気効果の発現(図2)を達成しました。本研究は光情報通信用のアイソレーター素子や新しい光メモリ材料として注目されています。

今後の展望

 ここまで光機能を発現する「希土類ナノ物質」を積極的に解明・構築し、ナノ物質化学における新分野の開拓を行ってきました。これからも希土類の学術研究の未解明なテーマを明らかにし、得られた研究成果を光電子産業分野(ディスプレイや照明など)やセキュリティー(発光印刷)およびエネルギー分野(太陽電池)などへ応用展開していきたいと考えています。今後も光機能を示す希土類ナノ物質の基礎研究を続け、社会に役立つ学術研究へと発展させることを目指します。

図1

図1 温度センシング機能を示す希土類錯体ポリマー(カメレオン発光体)とその発光の様子

図2

図2 光情報を制御する希土類ナノ結晶

関連する科研費

2014-2017年度基盤研究(B)「希土類半導体へのナノ磁気格子導入による光磁気特性増大」
2012-2016年度新学術領域研究(研究領域提案型)「磁性金属元素ブロックの三次元空間制御による新機能性高分子の創成」