事業の成果

教授:池野 範男

教授:池野 範男

「シティズンシップ教育の研究」

広島大学 大学院教育学研究科 教授
池野 範男
〔お問い合わせ先〕 TEL:082-424-6799 E-MAIL:nikeno*hiroshima-u.ac.jp
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研究の背景

 シティズンシップという言葉は「市民権」、「市民性」などと訳されて使用されていますが、なじみがあるとはいえません。社会で個々人が必要としている資質のことです。一人ひとりが協力したり、みんなで一緒になって進めたりする必要があるでしょうが、十分とはいえません。特に若者には課題があります。若者は社会との結びつきよりも、自らの考えを優先させがちです。若者のこのような行動や態度は大人になるため、また自立する点では有効なのですが、社会人になるうえでは十分とはいえないでしょう。

研究の内容と成果

 【第1期:英国シティズンシップ教育の研究】 若者の社会性育成は多くの国で課題とされてきました。20世紀末、それに対していち早く対応したのが英国でした。英国は、その対応策として、学校の教科として「シティズンシップ」を設置し、意図的に育てようとしました。そして、それに必要な要素を示しました。それが社会的道徳的責任、コミュニティへの参加、政治的リテラシー(その後、多様性とアイデンティティを付加)です。これらの要素とその構成の仕方が世界に大きく影響し、教育学や社会科学の領域で活発にシティズンシップ教育の研究が行れるようになりました。筆者たちのグループもこの一端を担い、英国関係機関の調査を通して、英国のシティズンシップ教育の現状を集約しました(写真1)。
 【第2期:グローバル・スタンダードに基づく日本のシティズンシップ教育の位置と発信】 続いて、世界と日本のシティズンシップ教育の関係を研究し、グローバルな視点から見て、我が国のシティズンシップ教育を意義づけ、その成果を“Citizenship Education in Japan”(Continuum、2011)として刊行しました(写真2)。本書は、世界に日本の教育事情を体系的に説明し、日本型というシティズンシップ教育の基本形態を発信することができました。
 【第3期:世界のシティズンシップ教育の比較とその類型化】 世界には、多様なシティズンシップ教育が存在し、それぞれについて各研究者が研究しています。シティズンシップ教育を研究している国際学会CitizEDの第9回国際会議を筆者のグループが引き受け、東西の比較を行いました。さらに国際会議を開き、各教科、品格や徳とシティズンシップの教育を比較し、多様な類型化を図っています(写真3・4)。

今後の展望

 シティズンシップ教育は学校だけでなく、社会全体の問題です。社会を構成する人々が、家族、学校(小中高校)、大学、会社、地域社会など、それぞれの社会組織に関わることが必要です。シティズンシップ教育を社会組織の構成員教育の一形態と位置づけ、学校とともに社会でもそれを具体的にどのように教育としての枠組みを構築していくかがこれからの研究課題となっています。
関連するwebサイト
http://www.hiroshima-u.ac.jp/orp/interview/IkenoNorio/
http://hiroshima-u.jp/gcdc_yr/interview_p/22_ikeno

写真1 共同研究の成果報告書(2009)

写真1 共同研究の成果報告書(2009)

写真2  “Citizenship Education
in Japan”(2011)

写真2 “Citizenship Education in Japan”(2011)

写真3・4 第9回CitizED国際会
議(2013年東京開催)
写真3・4 第9回CitizED国際会
議(2013年東京開催)

写真3・4 第9回CitizED国際会議(2013年東京開催)

関連する科研費

2005-2008年度基盤研究(A)「我が国との比較を視点にした英国シティズンシップ教育の計画・実施・評価・改善の研究」
2009-2012年度基盤研究(A)「グローバル・スタンダードに基づくシティズンシップ教育の評価研究」
2013-2016年度基盤研究(A)「多様性と民主主義を視点としたシティズンシップ教育の国際比較研究」