事業の成果

教授:寺西 利治

教授:寺西 利治

「プラズモンナノ粒子の創製と可視・近赤外光機能」

京都大学 化学研究所 教授
寺西 利治

研究の背景

 局在表面プラズモン共鳴(LSPR)とは、無機ナノ粒子中の自由キャリア(電子あるいはホール)が入射光のある波長に共鳴して集団振動する現象です。自由キャリアの集団振動による分極の結果、ナノ粒子の近傍には増強光電場が誘起(光が回折限界を超えた微小領域に集約)され、近接分子の光励起や近接分子へのキャリア注入が効率的に起こることで注目されています。そこで、可視・近赤外光で局在表面プラズモン共鳴を起こすことができれば、効率よく光化学反応に利用することができるわけです。私たちは、プラズモン研究の中心である金、銀以外のナノ粒子に着目し、自由キャリアの密度や粒子形状の制御によるLSPR波長制御と新しい可視・近赤外光機能の研究を行ってきました。

研究の成果

 私たちはまず、「LSPR波長の2乗がキャリア密度に反比例する」ことに着目し、スズのドープ量によって自由電子密度を制御した酸化インジウムスズ(ITO)ナノ粒子のプラズモン特性を検討しました。その結果、ITOナノ粒子のスズのドープ率({[Sn]/([Sn]+[In])}×100)を0~30%の範囲で厳密に制御することで、LSPR波長を1600nm以上で制御できました(図1)。また、これまで不明であった近赤外LSPRによる電場増強度や近接分子の光学遷移への影響について、ITOナノ粒子による近赤外レーザー色素の二光子吸収効率を過渡吸収分光で評価したところ、電場増強度は約5程度でした。この値は金や銀のナノ粒子に比べると小さいものですが、近赤外プラズモンによる有機分子や無機物質の光学遷移増強には十分に利用できることが分かりました。
 一方、形状制御によるLSPR波長制御の例として、種々の有機合成触媒として用いられているPdナノ粒子に着目し、形状をディスク状にする(反電界係数を小さくする)ことで、LSPR波長を可視・近赤外にシフトさせることができました(図2)。このPdナノディスクをLSPR波長でプラズモン励起しながら鈴木カップリング反応の触媒に使用したところ、プラズモン励起のない場合に比べて、触媒活性が3倍程度に増強されることが分かりました。

今後の展望

 自由電子密度の制御でも近赤外LSPR波長が制御できることが分かりましたが、自由キャリアとしてホールをドープしたCu7S4半導体ナノ粒子でも、LSPRが近赤外領域に発現することを明らかにしています。今後は、自由キャリア密度と粒子形状を制御した無機ナノ粒子の可視・近赤外局在表面プラズモンによる光化学反応という新しい分野を開拓したいと思っています。

図1  ITOナノ粒子の(a)透過電子顕微鏡像と(b)スズのドープ率に依存したプラズモン特性。

図1  ITOナノ粒子の(a)透過電子顕微鏡像と(b)スズのドープ率に依存したプラズモン特性。

図2  ディスク状Pdナノ粒子の(a)走査電子顕微鏡像、(b)プラズモンモード、(c)プラズモン特性。

図2  ディスク状Pdナノ粒子の(a)走査電子顕微鏡像、(b)プラズモンモード、(c)プラズモン特性。

関連する科研費

平成19-22年度特定領域研究「ナノ粒子超格子に基づく光電場増強場の創出とその新奇化学反応への展開」
平成23-25年度基盤研究(A)「ヘテロ接合ナノ粒子を用いた構造特異エネルギー機能材料の開拓」
平成26-27年度挑戦的萌芽研究「多面体パラジウムナノ粒子の水素吸蔵特性に関する研究」