事業の成果

准教授:青木 和光

准教授:青木 和光

「元素組成で探る宇宙初代の巨大質量星の痕跡」

自然科学研究機構 国立天文台 准教授
青木 和光

研究の背景

 ビッグバン直後の宇宙にはまだ星は存在せず、水素とヘリウムのほぼ均質なガスで満たされていました。その後宇宙は膨張して全体として密度が下がっていきますが、物質のもつ重力の作用で一部に密度の高いガス雲が生まれ、そこから星が誕生してきました。これには数億年を要したと考えられています。
 その初代星の多くは、太陽の何十倍も重い大質量星だっただろうと考えられています。それらは超新星爆発を起こして新しい元素をつくり出します(図1)。その新しい元素が、まわりに残っていた水素・ヘリウムのガス雲と混ざり、そこから新たに星が誕生していきます。その中には、太陽よりも質量が小さく、130億年以上の寿命をもつ星も含まれており、それらは現在まで生き残っていると考えられています。このような初期に生まれた星を探し出して詳しく調べれば、初代の大質量星とそれが起こした超新星爆発の詳細を解き明かすことができます。

研究の成果

 私たちは、日本の国立天文台が運用しているすばる望遠鏡を用いて多数の初期世代星を観測し、そのうちの1つがきわめて特異な組成をもっていることをつきとめました。この星は全体として重元素量が太陽の数百分の1しかなく、鉄に比べて炭素やマグネシウムなどの軽い元素の組成が低いのが特徴です(図2)。
 この特異な化学組成は、宇宙の初めに誕生した太陽の数百倍の重さをもつ巨大質量星によってつくられた可能性があります。水素とヘリウムのみのガス雲から生まれる初代星の中には巨大質量星が多数存在したという理論予測がありましたが、その痕跡が見つからないことが長年の謎でした。今回の発見は、宇宙での最初の天体形成と元素合成の謎を解き明かす大きな一歩となるかもしれません。

今後の展望

 私たちは今、中国の広視野探査望遠鏡LAMOSTの研究チームと協力して、初期世代星の大規模な探査を行い、それをすばる望遠鏡で詳しく調べる研究に取り組んでいます。これにより、初代星のより詳しい全体像にまた一歩迫ることができると考えています。さらに、次世代望遠鏡として国立天文台が国際協力でハワイ・マウナケア山に建設中の口径30メートルの超大型望遠鏡TMTが完成すれば、初期世代星の生き残りの研究とともに、非常に遠方の銀河の観測も大きく進み、初期宇宙の理解が大きく進むものと期待しています。現在の学生や若手研究者が2020年代に活躍できるように、次世代望遠鏡の建設に力を入れています。

図1  初代の巨大質量星が起こす超新星爆発(想像図)。大質量星の集団のなかで最も質量の大きいものが爆発を起こし、周囲に物質を放出すると考えられている。

図1  初代の巨大質量星が起こす超新星爆発(想像図)。大質量星の集団のなかで最も質量の大きいものが爆発を起こし、周囲に物質を放出すると考えられている。

図2  巨大質量星の痕跡をとどめている可能性のある星の化学組成。鉄と各元素の組成比を対数スケールで示している。今回見つかった星SDSS J0018-0939の元素組成(赤丸)と超新星の元素合成モデルからの予測(黒線が太陽質量の300倍、青線が1,000倍の星の爆発の場合)を比べると、全体的な元素組成の傾向はよく説明されることがわかる。観測結果とよく合わない元素については、爆発前の星の進化における元素合成などのさらに詳細な理論研究が期待される。

図2  巨大質量星の痕跡をとどめている可能性のある星の化学組成。鉄と各元素の組成比を対数スケールで示している。今回見つかった星SDSS J0018-0939の元素組成(赤丸)と超新星の元素合成モデルからの予測(黒線が太陽質量の300倍、青線が1,000倍の星の爆発の場合)を比べると、全体的な元素組成の傾向はよく説明されることがわかる。観測結果とよく合わない元素については、爆発前の星の進化における元素合成などのさらに詳細な理論研究が期待される。

関連する科研費

平成23-27年度基盤研究(S)「宇宙初代星誕生から銀河系形成期における恒星進化と物質循環」