事業の成果

教授/グループディレクター:森田 浩介

教授/グループディレクター:森田 浩介

「新元素の探索と超重元素の化学」

九州大学 大学院理学研究院 教授
理化学研究所 超重元素研究グループ グループディレクター
森田 浩介

研究の背景

 原子番号が104番以上の元素のことを超重元素と呼びます。原子核は原子の中心にあり、プラスの電気を帯びた陽子と電気的に中性な中性子が強く結びついたものです。陽子と中性子は電気的性質を別にすれば互いによく似た性質を持っており、総称して核子と呼ばれています。元素の原子番号とは原子核中の陽子の数のことで、例えば原子番号が92のウランの原子核には92個の陽子が含まれています。核子の個数を質量数といい、同じ元素の原子でも質量数の違う原子同士を同位体と呼んでいます。私たちが研究を開始した時点では、112番元素(コペルニシウム)までが実験的に合成されていました。

研究の成果

 理化学研究所の線形加速器によって光速の10%まで加速された亜鉛(原子番号30)の原子核をビスマス(原子番号83)標的核に衝突させて、両者の完全核融合によって目的とする113番元素の原子核を合成します。1秒間に2.4兆個の亜鉛イオンを約600日間照射して、113番元素の同位体(質量数278)を3原子、観測することに成功しました。合成された原子核は約1000分の2秒でα崩壊しましたが、崩壊の詳細な観測により確かに113番元素が合成されたことが確認され、2015年12月、国際純正・応用化学連合IUPACによって新元素と認定され、研究グループに元素の命名権が与えられました。ちなみにこれまで認定されていなかった115、117、118番元素もロシア・アメリカの合同研究グループによる発見が認定され、周期表の第7周期が完全に満たされました。

今後の展望

 今回の発見とそれに続く国際機関による認定によって、アジア初、日本発の元素が周期表の一席を占めることになりました。これまで、天然物からのものや人工のものを含めて新元素の発見は欧米(ロシアを含めた)の国が独占してきました。それ以外の国の科学者によって新しい化学元素が発見されたことはかつて一度もなく、今回の成果はアジアや日本の科学史上画期的な成果となりました。元素は物質を構成する基本単位であり、周期表は元素の性質の規則性を表した化学の必須アイテムといえます。化学を学習する若者が周期表に日本の研究グループが発見した元素があることを知って科学に興味を持つようになるならば、科学技術立国を目指す日本にとってどれほど有意義であるか計り知れないほどです。今後さらに新元素の探索を続け、現在全く未知の領域である第8周期の新元素を発見していきたいと考えています。

図1 113番元素核の崩壊の様子

図1 113番元素核の崩壊の様子

「画像提供:理化学研究所」

関連する科研費

平成19-23年度特別推進研究「新元素の探索と超重元素の化学」