事業の成果

教授 佃 達哉

教授 佃 達哉

「超原子から超原子分子へ」

東京大学 大学院理学系研究科 教授
佃 達哉

研究の背景

 革新的な機能性物質の構成単位として、100個程度以下の金属原子が集まった金属クラスターが注目されています。これまで、特定の個数(魔法数と呼ばれています)の原子でできた金クラスターが、有機配位子(チオール、ホスフィン、アルキンなど)によって保護された状態で安定化合物として数多く報告されています。それらの構造を見ると、8個の価電子を収容した正20面体構造の金13量体が共通する基本単位となっています。この金13量体は、通常の希ガス原子のように閉殻の電子構造をもつ安定な「超原子」と見なすことができます(図1)。また、あたかも2つの原子から2原子分子ができるように、2つの金超原子が部分的に融合してできた様々な「超原子分子」が報告されています(図1)。しかし、さらに高次の構造体については、理論的な予想があるものの合成の報告はなく、その物性も未解明でした。

図1 金の超原子と超原子分子

図1 金の超原子と超原子分子

研究の成果

 最近、私たちは、金超原子からなる重合体を合成することに成功しました。チオール存在下で金イオンをゆっくり還元することで、緑色をした金クラスターを得ました。粉末X線回折によって構造を解析したところ、立方8面体の金13量体が(100)面を共有して5つ連結した異方的な構造をもつことがわかりました(図2)。この極細金ナノロッド(太さ0.8nm、長さ2.4nm)は、赤外領域に強い吸収帯をもつなど特異的な光学特性を示します(図2)。
 また、私たちは、太さが1.6nmの極細の金ナノロッド・ワイヤーの長さを20nm~サブμmの範囲で制御することにも成功しました(図3)。この極細ナノロッド・ワイヤーでは、長さに応じて赤外領域に長軸方向のプラズモン共鳴による強い吸収帯が観測されました(図3)。この構造体は金13量体よりも大きな超原子の重合体に対応する可能性があり、現在、合成精度のさらなる向上と構造評価に取り組んでいます。

図2 立方8面体5量体の推定構造と吸収スペクトル

図2 立方8面体5量体の推定構造と吸収スペクトル

図3 極細金ナノワイヤー・ナノロッドの長さと吸収波長

図3 極細金ナノワイヤー・ナノロッドの長さと吸収波長

今後の展望

 以上の成果は、超原子を基本単位とした新しいナノスケール物質群を人工的に構築できる可能性を示しています。さらに今後、開殻の電子構造をもつ超原子やヘテロ超原子分子などを合成することが可能になれば、多様な物性や機能を創出できるものと期待されます。私たちはこの目標に向かって、超原子の種類、個数、結合様式を制御する汎用的な方法の開発に挑戦しています。

関連する科研費

平成21-22年度基盤研究(A)「有機保護金属クラスターの電子構造の制御と触媒機能の発現」
平成21ー22年度挑戦的萌芽研究「魔法数金クラスターの高次連結体の構築」
平成26ー28年度基盤研究(A)「超原子化合物の創製」