事業の成果

准教授 高山 弘太郎

「植物診断ロボットを用いた太陽光植物工場の環境制御の高度化」

愛媛大学 農学部 准教授
高山 弘太郎

研究の背景

 太陽光植物工場は、太陽光エネルギーを最大限に活用して大規模に農作物を生産する施設で(図1)、競争力の高い農作物生産システムとして注目されています(日本学術会議 マスタープラン2014 学術大型研究計画)。この施設では、気温・湿度・CO2・光強度などの様々な環境要因を自動制御することが可能ですが、制御目標値の設定は依然として人間の主観的判断(目視での植物体の観察に基づいた生育評価)に拠っており、自動制御システムの能力を十分に発揮できているとは言い難い状況です。

研究の成果

 本研究では、太陽光植物工場で栽培している作物の生育状態のわずかな変化を把握できる実装型クロロフィル(Chl)蛍光画像計測ロボットを開発し、2015年1月に植物生育診断装置(井関農機(株))として商品化しました(図2)。Chl蛍光とは、Chlが吸収した光エネルギーのうち、光合成反応に使われずに余ったエネルギーの一部を赤色光として放出したものです。本装置では、暗条件に置いたトマトに一定強度の青色光を照射すると誘導されるChl蛍光インダクション現象(Omasa et al.,1987)を画像計測し、トマトの光合成機能を数値で評価します。図3は、トマトを商業生産する大規模太陽光植物工場(約1.3ha)における光合成機能指標の分布です。このような光合成機能の不均一分布は、人間の目では認識することができない新しい生育情報であり、潜在的な生育の不均一性を検出していると考えられます。

図1 太陽光植物工場におけるトマトの周年栽培

図1 太陽光植物工場におけるトマトの周年栽培

図3 大規模太陽光植物工場における光合成機能分布

図3 大規模太陽光植物工場における光合成機能分布

図2 商品化したChl蛍光画像計測ロボット

図2 商品化したChl蛍光画像計測ロボット

今後の展望

 様々なセンサを用いて植物生体情報を計測して生育状態を診断し、診断結果に基づいて栽培環境を最適に制御する一連の技術をSPA(Speaking Plant Approach)技術と呼びます。これは、わが国の研究者らによって30年以上前に提唱されたコンセプトです。近年の計測機器の廉価化やICTの発達により、SPA技術の農作物生産現場への導入が急速に進みつつあります。今後は、高時間、高空間分解の高精度な生体情報を活用した知能的環境制御の実現に向けて研究開発を推進し、農作物の生産性向上と農業の競争力強化に貢献したいと考えています。



関連する科研費

平成26-28年度 基盤研究(B)「SPA技術を基盤とした並列試行型強化学習による太陽光植物工場への知能実装」