事業の成果

写真:研究員 畠中 由美子

研究員 畠中 由美子

大脳皮質興奮性ニューロンの軸索伸長方向から見た、
興奮性回路の形成のルール

生理学研究所 脳神経回路論研究部門 研究員
畠中 由美子

研究の背景

  大脳皮質興奮性神経細胞(ニューロン)は、皮質内外の領域を結ぶ投射性ニューロンです。発生過程において、これらは脳室帯から生じ表層に向かって移動しますが、先に誕生した細胞は深い層に、後から誕生した細胞はより浅い層に配置されること(インサイドアウト様式)で新皮質の層構造(第1-第6層)を作ります。一方、これらニューロンの投射は、皮質外・皮質内の2つの出力様式に大きく分類できます。皮質外投射ニューロンが深層(第5/6層)のみに分布するのに対し、皮質内投射ニューロンは第1層を除くすべての層に分布しています。これまで、皮質興奮性ニューロンの誕生日は層ごとに決まっており、同じ層であれば投射様式が違うニューロンでも同じ時期に作られると考えられてきました。


研究の成果

  まず興奮性ニューロンの軸索投射の初期形成過程を調べました(図1)。脳室帯を離れて中間帯に移動した幼弱神経細胞は、数時間にわたって複数の突起をさかんに伸縮させたのち、突然1本の突起を伸ばして軸索を形成します。その後、この突起を後方に伸ばしながら細胞体が脳表面に向かって移動することで、初期投射を形成していることがわかりました。

  興味深いことに、このとき先に現れる軸索は外側に、後からのものは内側に向かって伸び、伸長方向が時期に依存して二分されることがわかりました(図2)。出力タイプに特異的な分子マーカーの発現と成熟時の層分布を調べ、この2グループはそれぞれ将来の皮質外・皮質内投射ニューロンに対応することを明らかにしました。

  さらに、これらのニューロンの産生時期を比較したところ、同じ深層(5層)であっても皮質外投射ニューロンの方が皮質内投射ニューロンよりも早く誕生のピークを迎えることがわかりました。

  以上の結果から、皮質興奮性ニューロンは分化直後の初期投射によって2つのタイプに分類され、これらは異なる時間枠で順次生まれることが明らかになりました。これまで層分布とニューロンの誕生日に相関があることが知られていましたが、実際には投射タイプと誕生日のあいだにより強い相関があることが明らかになりました。

図1 興奮性ニューロンの軸索形成過程 図1 興奮性ニューロンの軸索形成過程
図2 初期投射パターンから2つに分類されるニューロンと成熟後の投射ニューロンの関係 図2 初期投射パターンから2つに分類されるニューロンと成熟後の投射ニューロンの関係

今後の展望

  大脳皮質ニューロンは多様性が高く、これらをつなぐネットワークも非常に複雑ですが、初期投射パターンという視点に立ってその産生過程を解析することにより、皮質形成ルールを新たに1つ明らかにすることができました。今後は、外側・内側投射ニューロンの発生起源、その後の発達過程について解析を行い、さらにその形成ルールを明らかにしていきたいと考えています。



関連する科研費

平成22-24年度基盤研究(C)「大脳皮質興奮性神経細胞の軸索形成過程と皮質間線維の発達過程の解析」
平成25-26年度新学術領域研究(研究領域提案型)「初期投射パターンによる皮質興奮性ニューロンの分類とその産生過程の解析」