事業の成果

写真:教授 伊東 正一

教授 伊東 正一

世界のジャポニカ米市場と日本産米の競争力

九州大学 大学院農学研究院 教授
伊東 正一

研究の背景

  世界には大きく分けてインディカ米とジャポニカ米という2種類のコメがあります。インディカ米はインドや東南アジアで多く作られており、粘着性のないパラパラとした長粒種に代表されます。一方、ジャポニカ米は私たちが食べているような粘着性がありお箸でも食べられるお米で、中粒種や日本米の短粒種に代表されます。世界のコメ貿易量は年間4,500万トンありますが、その大部分はインディカ米で、ジャポニカ米はわずかに100万トン程度です。近年では、世界中で日本食がブームとなっていますが、海外の日本食レストランで使われているコメはカリフォルニア産が多くを占めており、インディカ米に比べて高い価格で取引されています。日本産米は海外の日本食レストランでは使ってもらえないのでしょうか、競争力はないのでしょうか。これらの解析に「官能食味試験」という品質評価を含めた科学のメスを入れてみようと、私たちは本科研費の研究を始めました。

研究の成果

  おいしいコメもあればそうでないコメもあるため、訓練された人たちが世界で生産されているジャポニカ米を試食して、日本のコメと味の比較分析をしました。さらに、それを価格的に評価しました。その結果、日本産米が精米10㎏で約3,000円の小売価格に対し、海外産のジャポニカ米は多くは約2,000円の味の評価となることがわかりました。つまり、味では日本産米のほうが競争力があると言えそうです。出荷価格(FOB価格)は、例えばカリフォルニア産米(キャルローズ)では2015年6月の相場で11.43ドル(1,372円:1ドル120円の為替レート)でした。この価格を玄米60㎏に換算すると、諸経費も差し引いて約7,000円となります。日本産米は味の評価が高いので、FOB価格はこのカリフォルニア産米の価格より高くても競争力に問題はありませんが、この価格レベルが日本産米の目指す生産コストの指標となることが示唆されました。

  世界の日本食ブームはまだ継続しそうで、アメリカの寿司屋からは「昨年度の売り上げがこれまでの最高だった」という声も聞かれました。インドのような人口12億人の経済中進国でも日本食ブームは始まったばかりで、今後もジャポニカ米の世界での需要は拡大していくと思われます。

今後の展望

  世界の日本食ブームは、あと20年間は続きそうです。そこで、世界各地における日本食レストランの普及予測、ジャポニカ米の生産拡大予測、日本産米の輸出量シミュレーションなどを進めながら、日本産米の国際競争力をより深く解明する予定です。また、このような世界の情報をいち早く一般市民や関係者に伝えようと、一昨年度は秋田で報告会シンポジウムを、昨年度は宮崎で国際シンポジウムを開催しました。今年度は来る11月6日に東京駅のJPタワー・Kitteビルで成果報告会・シンポジウムを開催する予定です。



関連する科研費

平成10-12年度基盤研究(A)「世界におけるジャポニカ米の生産・流通と潜在的生産能力に関する学際研究-その2」
平成16-18年度基盤研究(A)「世界におけるコメの消費拡大・普及戦略に関する学際的総合研究」
平成25-27年度基盤研究(A)「外国産ジャポニカ米の官能食味試験評価および国産米競争力分析に関する学際研究」
図 アメリカ産米と日本産米との市場価格の比較(ドルベース)昨年来からの日本のコメ相場の下落と円安、さらにカリフォルニア産米の水不足による減産で日米のコメの価格差はほぼ半世紀ぶりの僅差となっています。ソース:カリフォルニア・中粒種とアメリカ南部・長粒種は米国農務省(USDA)から、日本のコシヒカリとアキタコマチは日本経済新聞から、それぞれ引用した。詳しくは、http://worldfood.apionet.or.jpをご参照のこと。注:為替レートは「三菱UFJリサーチ&ファイナンシャル」の年平均から引用した(http://www.murc-kawasesouba.jp/fx/past_3month.php)

図 アメリカ産米と日本産米との市場価格の比較(ドルベース)
昨年来からの日本のコメ相場の下落と円安、さらにカリフォルニア産米の水不足による減産で日米のコメの価格差はほぼ半世紀ぶりの僅差となって
います。
ソース:カリフォルニア・中粒種とアメリカ南部・長粒種は米国農務省(USDA)から、日本のコシヒカリとアキタコマチは日本経済新聞から、それ
ぞれ引用した。
詳しくは、http://worldfood.apionet.or.jpをご参照のこと。
注:為替レートは「三菱UFJリサーチ&ファイナンシャル」の年平均から引用した(http://www.murc-kawasesouba.jp/fx/past_3month.php)