事業の成果

写真:准教授 寺田 努

准教授 寺田 努

ウェアラブルコンピュータの情報提示が人間の生体に与える影響の調査と応用システムの開発

神戸大学 大学院工学研究科 准教授
寺田 努

研究の背景

  現在、私たちはスマートフォンの画面を頻繁に見ています。また、健康管理機器が普及し、歩数や心拍数などの生体情報も簡単に閲覧できるようになりました。今後、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)などの常時情報閲覧機器が普及すると、私たちは多様な情報を常に目にしながら生活することになります。そこで、もし、このような提示情報が人の生体や行動に影響を与えるならば、その特性を活かした健康管理や案内を行うことができるでしょう。本研究は、人への情報提示システムを対象に、見せるものやその見せ方が人間に及ぼす影響を調査し、応用システムを開発することを目的にしています。


研究の成果

  研究成果として、体温や心拍などの生体情報を常時閲覧している人(図1上)に、心拍上昇などの嘘の情報提示(虚偽情報提示)を行うと、人の生体情報を制御できる可能性があることを示しました(図1下)。例えば、重要な会議や研究発表の場では、緊張して意図した発表をできないことがあります。しかし、このときに「心拍数は上がっていませんよ」、という虚偽情報を提示すれば、自分が平常状態であると錯覚して実際の心拍数も低下し、落ち着きを取り戻せるでしょう。また、眠気により生じる心拍低下をシステムによって妨げて眠気を覚まさせれば、居眠り運転が原因の交通事故を防ぐことができるかもしれません。運動に最適とされる心拍数を維持して運動することもできるでしょう。

  また、HMDに表示されたデスクトップ上のアイコン画像(図2ではカメラ機能のアイコン)を建物や、自然、乗り物に変えると、ユーザの撮影写真は、提示されたアイコン画像に影響されることがわかりました。例えば、アイコン画像が建物の人は、自由に撮影しているつもりでも撮影写真の33%が建物に関係するものになりましたが、アイコンが自然や乗り物の人はそれぞれ9%、15%しか建物の写真を撮っていませんでした(図2下の表)。

  本研究では、このような特性を利用した健康管理システムや案内システムを構築し、それらのシステムによって自然に人を誘導できることを確認しています。

図1 ゲージ重力対応を用いたエンタングルメント・エントロピーの計算

図1 ゲージ重力対応を用いたエンタングルメント・エントロピーの計算

図2 エンタングルメント・エントロピーの時間発展の違い

図2 エンタングルメント・エントロピーの時間発展の違い


今後の展望

  本研究の成果は、単純な情報提示によって生体情報が制御される可能性を示した点で画期的です。しかし、この成果は、よい目的で利用される(緊張の緩和など)だけではなく、悪用(悪意のある広告など)される可能性もあります。今後は、常時情報閲覧時代における情報提示ガイドラインをつくり、安心安全な情報提示環境を実現することを目指します。



関連する科研費

平成25-27年度挑戦的萌芽研究「情報サプリメントを実現するための情報提示技術の確立」