事業の成果

写真:教授 馬場 俊彦

教授 馬場 俊彦

ナノスロットナノレーザの極限的な光局在を利用する
超高感度バイオマーカーセンシング

橫浜国立大学 工学研究院 教授
馬場 俊彦

研究の背景

  ナノレーザは、一辺が光の波長以下(サブミクロン)の微小な体積に光エネルギーを閉じ込め、発振を起こします。フォトニック結晶、ナノスロットなどの微細構造により、このようなレーザが可能になりました。半導体を加工することで簡単に作製でき、光励起で容易に動作し、数千個もの多くのレーザを集積することもできます(図1)。

  このレーザに物質が付着すると発振特性が変わります。これを測定すれば、逆に物質の付着が検知できます。そこで本研究では、人の病気を診断するバイオマーカーをセンシングするためにこれを用いることを提案しました。ヒト由来の試料に含まれるタンパク質などのバイオマーカーは、従来、発色分子を添加して検出してきました。しかし、作業に手間やコストがかかり、また極少量のマーカーを検出するには感度が不足していました。本研究では、ナノレーザを使って余計な作業をなくし、病気と関連が深いマーカーを超高感度に検出することを目指しています。

図1 千個以上集積されたナノレーザ。左は製作したデバイス、右は発光の様子

図1 千個以上集積されたナノレーザ。左は製作したデバイス、右は発光の様子

図2 ナノレーザによるタンパク質センシングの概念。

図2 ナノレーザによるタンパク質センシングの概念。


研究の成果

  特定のタンパク質を選択的に検出するため、あらかじめ抗体をナノレーザに付け、タンパク質との間に抗原抗体反応を起こさせます。本研究では、まず汎用タンパク質であるストレプトアビジンに対してナノレーザの感度を確認したところ、サブaM(Mはモーラー、濃度の単位)という驚異的な低濃度の検出に成功しました。さらに、試料に10兆倍の濃度の不純物を混入させてもこの性能が維持されました。次に前立腺がんマーカーPSA、ならびにアルツハイマー病マーカーと期待されるCRMP2の検出を試みました。いずれの場合も、大量の不純物が含まれる試料で、従来の技術に比べて2桁低い濃度が検出されました。

  このような高性能が何に由来するかは、興味深い物理探求になります。1つの候補は、非常に強い光閉じ込めによる光勾配力がタンパク質を誘引する可能性です。加えて、最近、液中のナノレーザ表面に生じる帯電が発振特性に大きな影響を与えることが明らかになってきました。これらの機構を解明することで、センシングをさらに高性能化、安定化させることが今後の重要な研究課題です。

今後の展望

  このナノレーザは、タンパク質だけでなく、DNA、細胞、環境毒素など、様々なバイオ試料に適用できます。実際、これら全てで興味深いセンシング結果が得られています。今後、実際の医療現場、バイオ研究の現場で利用できるレベルまで結果を高めることが期待されます。



関連する科研費

平成21-23年度基盤研究(A)「ナノレーザによる超高分解能センシング」
平成24-28年度基盤研究(S)「ナノスロットレーザの極限的な光局在を利用する超高感度バイオマーカーセンサ」