事業の成果

写真:教授 竹沢 泰子

教授 竹沢 泰子

日本から欧米中心のパラダイムに挑む~人種表象をめぐる学際的研究

京都大学 人文科学研究所 教授
竹沢 泰子

研究の背景

  昨今話題となっている「グローバル人材」の育成において、人種主義の問題は避けては通れない重要課題です。欧米では、人種問題は、基礎教育に組み込まれていますが、日本では教育も研究も大幅に遅れており、それが、「人種差別」として制裁を受けたJリーグの「Japanese Only(外国人お断り)」の横断幕やヘイトスピーチを生み出す土壌をつくってきたといえるでしょう。研究者としての私たちの関心は、現代の社会現象を意識しながらも、基礎的な人文学を中心に据えた人種の表象にあります。人間はどのように人を分類し、名指し、表象するのか。表象がどのように人種主義を存続させているのか。このような人間に関する大きな問いへの探究心が私たちを研究へと駆り立ててきました。

研究の成果

  従来の欧米主導の人種研究は、奴隷制や先住民支配など、環大西洋における大陸間移動の経験から、主として皮膚の色などの身体の可視的な差異に注目してきました。しかし日本を含むアジアの人種主義を考える際、生まれつきで変えることができないとされる「血」や出自をめぐる根強い「目に見えない」言説を看過できません。また、これまでの研究成果から、近代の影響を受ける前の中世において、ヨーロッパのユダヤ人、「ジプシー」、日本の「河原者」をはじめとする、元来土地を持たず、主流社会とは異なる生業や生活様式をもつ人びとが、人種化(racialize)されるプロセスに顕著な共通点が見られることが明らかになってきました。欧米中心の研究とは一線を画し、日本やアジアの地域内における人種化の経験を、欧米の経験と接合させることによって、グローバルに人種表象を捉え直すことが可能となるのです。

  このほか、ゲノム研究者や自然人類学の研究者らと人文系の研究者らとの間で、集団の呼称とヒトの多様性をめぐる対話を重ねてきました。過去5年間の研究成果(印刷中を含む)として、論文集5冊(うち英文2冊)、学術雑誌特集号2冊(うち英文1冊)、国際共著論文1本などを発表しています。

今後の展望

  これまでの研究で見いだした人種化のプロセスについてより詳しく検証するために、近い将来、海外の専門家を交えた国際共同研究を組織し、人種研究のパラダイム転換を目指しながら、日本からその成果を国際発信していきたいと考えています。



関連する科研費

平成13-15年度基盤研究(B)「『人種』の概念と実在性をめぐる学際的基礎研究」
平成18-21年度基盤研究(A)「人種の表象と表現をめぐる融合研究」
平成22-26年度基盤研究(S)「人種表象の日本型グローバル研究」
図1 インドの不可触民コミュニティにて

図1 インドの不可触民コミュニティにて

図2 国際シンポジウム「人種神話を解体する」(於:国立京都国際会館、2012年)

図2 国際シンポジウム「人種神話を解体する」
(於:国立京都国際会館、2012年)