事業の成果

写真:教授 坂本 崇

教授 坂本 崇

養殖魚類における耐病性メカニズムの解明を目指して

東京海洋大学 大学院海洋科学技術研究科 教授
坂本 崇

研究の背景

  水産養殖においては、生産過程で毎年疾病が発生し、被害をもたらしています。クロマグロやウナギでは、養殖業のほとんどに天然種苗を用いていることから、天然魚から短期間で耐病性人工種苗を作出する育種技術開発が必要とされています。また、ヒラメは水産養殖の重要種ですが、養殖現場における疾病被害額は、生産額の13~31%にも及んでいます。中でも、ヒラメのウイルス性疾病であるリンホシスチス病は、感染すると体表に醜悪な細胞塊を形成して商品価値を失うことから、ヒラメ養殖において対策が必要な重要疾病のひとつです(図1)。しかし、その対策として有効な治療法がなく、長年にわたって水温上昇による自然治癒に任せていました。

図1 A、B:リンホシスチス病罹患魚 C:リンホシスチスウイルス 図1 A、B:リンホシスチス病罹患魚 C:リンホシスチスウイルス

研究の成果

  リンホシスチス病の耐病性研究では、耐病性遺伝子座に連鎖する遺伝マーカー(Fuji et al., 2006)を明らかにしています。そして、その遺伝マーカーを用いて、マーカー選抜育種法による世界初の養殖魚であるリンホシスチス耐病性ヒラメを実用化しました(Fuji et al., 2007)(図2)。しかしながら、リンホシスチス病に対する耐病性メカニズムは不明のため、現在は、耐病性遺伝子の単離に向けた研究を進めています。これまでに、耐病性遺伝子座領域の全塩基配列情報を入手し、連鎖解析により候補遺伝子の存在する領域を約130kbpまで限局化しました。さらに、その領域に存在する遺伝子を単離し、発現解析や塩基配列解析の結果から候補遺伝子を複数個まで絞り込むことに成功しました。

図2 実用化され市販されている耐病性ヒラメ 図2 実用化され市販されている耐病性ヒラメ

今後の展望

  魚類で初となる耐病性遺伝子の単離は、魚類のウイルス病に対する耐病性メカニズムの解明につながるだけでなく、天然資源から耐病性形質を保持する魚を遺伝子選抜し、新しい品種を作り出する新規育種技術になると考えられます。このことは、水産分野に大きな革新・進展をもたらすものと期待できます。



関連する科研費

平成15-17年度基盤研究(B)「水産有用魚類におけるゲノム情報の高度利用化に関する研究」
(研究分担者)研究代表者:岡本 信明(東京海洋大学)
平成22-24年度基盤研究(C)「複数疾病耐病性系統作出のためのゲノム育種技術開発」
平成25-27年度基盤研究(B)「ヒラメにおけるウイルス耐病性遺伝子の単離」