事業の成果

写真:教授 竹脇 出

教授 竹脇 出

地震に対してロバストな建築構造物の設計法の構築

京都大学 工学研究科 教授
竹脇 出

研究の背景

  東京、大阪などの大都市圏で観測された2011年3月11日の長周期地震動は、1970年前後から建設が始まった超高層ビルの設計で考えられていた地震動とは特性が大きく異なるものでした。その対極にある地震動としては、1995年の兵庫県南部地震によるものがあり、直下型地震動と呼ばれています。このように地震動には様々なタイプのものがあり、いつどこで起こるかを建物の設計段階で予測することはきわめて困難です。このような難しい問題を解決する有力な方法として、「極限外乱法(最悪地震動による方法)」があります(図1)。私たちの研究グループでは、この極限外乱法を、変位や加速度などだけでなく、建物に入力されるエネルギーの観点から捉える新しい方法を導入しました。また、想定外の地震動に対しても構造安全性を保持するような建物を設計するには、冗長性・ロバスト性の概念を取り入れた新しい考え方に基づく構造設計法の展開が必要不可欠となりつつあります。

図1 建物ごとの最悪地震動 図1 建物ごとの最悪地震動

研究の成果

  本研究の目的は、最悪地震動の概念と構造物の冗長性・ロバスト性の概念を巧みに組み合わせた信頼性の高い耐震設計法を展開し、「想定外の地震動」に対しても急激な構造性能の劣化を伴わないレジリエントな建物の設計を可能とする体系を構築することにあります(図2)。特に、建物の現状を調べるために、地震が発生したときのデータを用いていた従来の方法とは異なり、通常の状態で得られる常時微動データを用いて建物のローカルな剛性などの特性を、人間の体に聴診器をあてるような感覚で、限られたデータから直接同定することを世界で初めて可能としました(図2)。また、免震と制振のハイブリッドシステムである「免震・連結ハイブリッドシステム」(図2)のメカニズムを明らかにし、直下型地震動や長周期地震動など種々の地震動に対して高いロバスト性を有することを明らかにしました。「免震・連結ハイブリッドシステム」を用いた建物は、地震危険度の高い東京湾岸において高いロバスト性を有する超高層マンションとして実際に設計されています。

図2 建物のレジリエンスをとりまく諸要因 図2 建物のレジリエンスをとりまく諸要因

今後の展望

  この研究成果によって、建物ごとの最悪地震動が明らかとなり、設計段階で建物の安全性が明確に認識可能になると期待しています。さらに、図2に示すような断層破壊から地震波の伝わりまでを詳細にモデル化した上で、最悪地震動を設定する理論を構築したいと考えています。



関連する科研費

平成24-26年度基盤研究(A)「最悪地震動理論の信頼性向上とロバスト性・冗長性に優れた建物の構造設計法」