事業の成果

写真:助教 日出間 るり

助教 日出間 るり

「流動石鹸膜で複雑な流体を見る・解析する」

神戸大学 自然科学系先端融合研究環 助教
日出間 るり

研究の背景

  高分子は水分子に比べて非常に大きく、分子量が数百万程度の高分子と水分子の大きさを比べると、大雑把に計算して1000倍の違いになります。さらに、流体中で高分子が伸びていると、その長さと水分子の大きさは10万倍の違いになります。高分子のような巨大な分子が流体中に存在すると、その流体は、低濃度でも非常に不思議な現象を示します。例えば、流体に加える力によって測定される流体の粘度が変わることがあります。
  私の研究対象は、低濃度の高分子溶液では乱流が起こりにくくなる(流体がスムーズに流れるようになる)乱流抑制という現象です。この現象は、流体を伸長させる力(伸長応力)が流体に加わった際に起こる、流体の粘度(伸長粘度)の増加が原因ではないかと予想されています。しかし、乱流に伸長応力がかかる実験系で、高分子溶液の伸長粘度と乱流抑制の関係を調べるのは困難なことでした。

研究の成果

  私は、流れる石鹸膜(流動石鹸膜)を用いて、高分子溶液の伸長粘度と乱流抑制の関係を実験的に調べました(図1)。石鹸膜は水層を界面活性剤が挟んだ構造をしています。水層の厚さは界面活性剤の分子よりもずっと大きいため、石鹸膜は水層の挙動を反映した二次元の流体だと考えられます。そして、シャボン玉が太陽光でキラキラと光るのと同じ現象で、石鹸膜に照明光を当てると生じる干渉縞により、水層の挙動を観測することができます。さらに、流動石鹸膜に円柱が並んだ格子を入れると、格子の下には乱流が発生します。この乱流は、格子の部分で局所の流速が瞬間的に増加するために生じる伸長応力の影響を受けます。ここで、高分子を溶かした石鹸水を流すと、格子の部分の伸長応力により高分子が伸びて溶液の伸長粘度が増加し、乱流に影響が出ると考えられます。その様子を観測し、画像解析し、二次元流体の理論に当てはめることで、乱流中で起こるエネルギーの移動が、高分子から受ける影響を定量化しました。これと並行して、低粘度の高分子溶液の伸長粘度を測定する装置の開発も進めています。

図1 石鹸膜で流体への高分子の影響を評価する
図1 石鹸膜で流体への高分子の影響を評価する

今後の展望

  伸長粘度が流体に与える影響を明らかにすることにより、乱流抑制だけではなく、人の関節液や涙など生体液の機能、インクジェットプリンタや3Dプリンタの溶液流動挙動安定性など、高分子溶液に関係する様々な現象に新たな知見を与えることができます。本研究では、乱流抑制というマクロスケールの現象に注目しましたが、今後、ミクロスケールの溶液挙動も観察して、すべての階層を繋ぐような説明を確立したいと考えています。



関連する科研費

平成24-26年度若手研究(B)「乱流抑制を高分子の伸張粘度の観点から解明する薄膜干渉流動画像法の開発」