事業の成果

写真:教授  岸野 克己

教授  岸野 克己

「窒化物半導体ナノコラム結晶による可視域発光デバイスの革新」

上智大学 理工学部 教授
岸野 克己

研究の背景

  ノーベル賞で脚光を浴びた窒化物半導体(InGaN系)は、緑、さらに赤色域になるにしたがって発光効率が減少し、赤色域InGaN LEDは暗くてよく光りません。半導体レーザの動作電流も急増し、InGaN系可視発光デバイスの発光域拡大は、材料的壁に直面しています。窒化物半導体ナノコラムは、直径数十から数百ナノメートルの一次元GaNナノ結晶で、ナノコラムで発現されるナノ結晶効果によってInGaN系可視域デバイスの課題解決に挑戦すべく、最近、世界的に活発なナノコラム研究が行われています。

研究の成果

  GaNナノコラムは、分子線エピタキシー(MBE)による結晶成長中の自己形成過程で、研究代表者らによって最初に作られましたが、自然発生のためコラム径と位置がランダムに揺らいで、ナノデバイスとしての制御性が不十分でした。そこで、Tiマスクによる新たな手法を用いて、当時難しかったMBEによる選択成長法を開拓し、図1に示す例のように、均一なナノコラム結晶の規則配列化を実現しました。この規則配列ナノコラムによってInGaN系の長波長限界を拡大し、光通信域(波長:1.46μm)の近赤外域LEDを作り、InGaN系LEDの最長波長動作を得ました。
  ナノコラム規則配列化は二つのデバイス制御によって可視域発光デバイスに革新をもたらします。ひとつは「コラム径によるナノコラム内InGaN量子井戸のIn組成制御法の発見」で、もう一つは「ナノコラムフォトニック結晶効果の発現」です。前者によって、図2に発光像を示すように、青色、空色、緑色、黄色を同一基板上に作りこんだ集積型ナノコラムLEDを実現しています。後者は、革新的なナノコラムレーザに展開されますが、本研究では光励起によって緑色レーザ特性を検証しています。  

図1 (a)緑色ナノコラムLED概念図と(b)電子顕微鏡像

図1 (a)緑色ナノコラムLED概念図と(b)電子顕微鏡像

図2 集積型ナノコラムLED、注入電流:10 mA (青色・空色・緑色・黄色65μm径LEDの集積化)

図2 集積型ナノコラムLED、注入電流:10 mA 
(青色・空色・緑色・黄色65μm径LEDの集積化)

今後の展望

  図2は、発光径65μmのLEDの集積化ですが、微細領域(たとえば10×10μm2)に三原色を集積化した新次元LEDに展開してゆくことが意義深い。この夢のLEDが実現できれば、将来的には、二次元配列化によって得られる半導体上の映像を拡大投影することでプロジェクション型TVとなり、新次元LEDの微小スポットを網膜上に結像しスキャンすれば、網膜走査型ディスプレイとなって、低消費電力ディスプレイの基盤技術に育って行くと考えられます。また円形ビーム放射のナノコラムレーザは、ディスプレイ用途に適します。



関連する科研費

平成18-22年度特定領域研究(計画研究)「赤色~赤外域AlGaInN系光デバイス基盤技術の開拓」
平成24-28年度特別推進研究「ナノ結晶効果によるエネルギー・環境適合デバイスの革新」