事業の成果

写真:教授 羽田 正

教授 羽田 正

「これからの世界史を世界と語る」

東京大学 東洋文化研究所 教授
羽田 正

研究の背景

  歴史理解は人々の世界認識と密接な関係をもっており、時と状況に応じて変化します。また、歴史は人々の帰属意識の形成に重要な役割を果たしています。地域や国はそれぞれ異なった歴史をもち、それらを合わせれば世界史になるという従来の世界史理解は、19世紀から20世紀初め、国民国家の形成が進む西ヨーロッパにおける世界認識に対応して形成され、国民意識の醸成に貢献しました。それから100年以上が経った現代世界において、私たちの新たな帰属意識を生み出す世界史が必要となっています。

研究の成果

  これまで様々な地域や時代を専門とする歴史家が議論を重ねた結果、これからは人々に地球への帰属を意識させる新しい世界史が必要だという考え方がしだいに共有されるようになってきました。そのような世界史の具体像の1つとして私たちが提案したのが、国や地域のように区分された複数の空間の過去を時間の流れに沿って「縦」にたどるのではなく、ある時期の地球上の諸社会を「横」につないで、その時期の世界全体を見取り図的に描くことです。現代を意識しながら見取り図を何枚か描いて示せば、人々の世界全体(=地球の過去)への理解と認識が深まり、世界の一部ではなく地球への帰属意識も強くなると考えるからです。この考え方は、世界史の枠組みについての日本語での議論の積み重ねを背景として、世界に先駆けて日本で生まれたものです。

今後の展望

  私たちは3つのことを実現したいと考えています。1つは、「横」につなぐ世界の見取り図を実際に描くことです。「社会とその秩序」や「知識の革新と伝播」など具体的なテーマを決めて共同研究を進めるつもりです。2つ目は、日本で生まれた新しい世界史についての考え方を英語で説明し、諸外国の人々と語り合って理論のヴァージョンアップを図ることです。これは簡単なことではありません。国や地域ごとに異なった言語による独自の世界認識と世界史理解があるからです。まずは、世界史の意味と捉え方を共有するところから話を始めねばなりません。3つ目は、これらの国際的な活動を通じて、次世代の歴史研究者を育てることです。日本語と英語を使って、日本と世界で世界史研究をリードするようなたくましい歴史家が生まれることを期待しています。



関連する科研費

平成21-25年度基盤研究(S)「ユーラシアの近代と新しい世界史叙述」
図1 復旦大学での講演 図2 国際シンポジウムでの報告(香港大学にて) 図3 研究成果の出版(日本語、中国語、韓国語)
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