事業の成果

写真:古阪秀三准教授

准教授:古阪 秀三

「建設プロジェクトの発注・契約方式と品質確保のしくみに関する国際比較」

京都大学 大学院工学研究科 准教授
古阪 秀三

研究の背景

  建設プロジェクトの品質確保はどこの国でも重要な課題ですが、その信頼性が世界各国で問題となっています。また、グローバルな競争社会の中で、円満に推移するプロジェクトから、品質、コスト、安全などの面でトラブルに巻き込まれるプロジェクトまで多様になっています。これらが建設プロジェクトの発注・契約方式に強く関係し、また、その発注・契約方式が品質確保のしくみに大きく影響していることが徐々に顕在化しつつあります。この研究では、日本、中国、韓国、シンガポール、英国、米国を比較対象国として取り上げ、これらの国の実態を詳細に分析し、国際市場における発注・契約方式と品質確保のしくみの今後のあり方を構想するものです。とりわけ、日本の品質確保のしくみの強みと弱みを実証的に把握したいと考えています。

研究の成果

  調査対象国における発注・契約方式の30年間の変遷を比較した結果、各国ともに、発注者、設計者、施工者の間のリスク分担関係の変化がみられ、それに伴って発注・契約方式/制度が流動化していることがわかりました。さらに、その流動化は海外企業を受け入れている国の国内建設産業に影響を与え、その影響は徐々に当該国の発注・契約方式/制度と品質確保のしくみに波及している可能性が高いことを確認しました(図1)。
  その中で、より特徴的な変化は、日本の設計施工方式と英米のデザインビルド方式の差異がより鮮明になり、端的には日本の設計施工方式が各国の法制度、職能性になじむ形で変化していること、日本の建設会社(ゼネコン)が日本国内で行っている「躯体図を描く作法」が徐々に国際的にも広まっていることなどがあげられます。
  その変化の誘因には、日本人の建築家や技術者が現地の制度に馴染(なじ)む形で活躍していること、「躯体図を描く作法」は設計段階での意匠・構造・設備の整合性/統合、工事段階での設計と施工の整合性/統合、設計・施工両段階にまたがって行われる「もの決めプロセス」の一貫性と合理性が当該国で実証的に示されていることなどによるものと考えられます。

図1 各国の発注・契約方式の多様性と多義性

図1 各国の発注・契約方式の多様性と多義性

図2 2012年の第1回国際発注・契約研究会議

図2 2012年の第1回国際発注・契約研究会議

今後の展望

  現段階で得られた知見をもとに、調査対象国の母国での変化の状況の確認、また、これらの状況と品質確保のしくみがどのようにかかわっているかの確認のため、より本格的な調査を行う予定です。そのために、国内外の研究協力者が一堂に会する「国際発注・契約研究会議」を継続していくことにしています。そして、最終的には、国際市場の中での日本の品質確保のしくみの存在価値と、競争優位性を有するところを明らかにしたいと考えています。



関連する科研費

平成19-22年度基盤研究(A)「日中韓の建設産業における法制度と品質確保のしくみに関する比較研究」
平成23-26年度基盤研究(A)「建設プロジェクトの発注・契約方式と品質確保のしくみに関する国際比較研究」