事業の成果

写真:菊池誠一教授

教授:菊池 誠一

「近世日越交流史の再構築をめざして」

昭和女子大学 大学院生活機構研究科 教授
菊池 誠一

研究の背景

  私たち日本人にとってベトナムは遠い存在かもしれません。しかし、歴史的にみると日本とベトナムは緊密に連携していた時代がありました。近世初期、徳川幕府が推進した「朱印船貿易」によって両国は結びついていたのです。そして、ベトナムをはじめ東南アジア各地に「日本町」が形成されました。
  これまで多くの研究者が、文献資料をもとに朱印船貿易や日本町の研究をしてきました。しかし、1990年代初めまで東南アジアについては日本人による現地調査はわずかであり、また物的資料から両国の関係を探る研究もなかったため、私たちの研究グループはベトナムをフィールドとして研究を展開しました。

研究の成果

  ユネスコの世界遺産に登録されているベトナム・ホイアンには、17世紀の日本町が存在し、日本の商人たちが生活していました。このホイアンで日越共同の発掘調査を行いました。出土した遺物のなかには、日本陶磁器(伊万里焼)や中国陶磁器などが多数含まれており、その詳細な分類や分析をもとに、交易ネッワークの実態を解明してきました。そして、在住日本人の生活やその変遷が明らかになったことで、近世東南アジアの「日本町研究」は飛躍的に進展したといえます。
  それと同時に、日本国内に残る史資料を系統的に集成してきました。その過程で、16世紀後半にベトナムから日本に送られてきた文書を発見し、日越交流の歴史がさらにさかのぼれることを確認しました。また、朱印状などの悉皆(しっかい)調査を半世紀ぶりに実施し、現存する古文書を再検証しました。さらに、ホイアンの日本町の様子を描いた絵図を文献史、美術史の研究者とともに総合的に調査し、制作年代や制作意図にかんするあらたな解釈が得られたので、その結果を科研費の研究成果公開促進費の助成を受けて出版しました。
  こうした成果は、2013年に九州国立博物館で開催された『大ベトナム展』の展示に、協力者として活かすことができました。

今後の展望

  ホイアンで出土した陶磁片は膨大な数にのぼりますが、その整理作業は終了しました。私たちは、その成果を報告書として刊行する予定です。国内外の研究者が物質的資料をもとに日本とベトナムの歴史的関係の考究が可能となり、その成果の発表が期待されます。また、発掘調査を継続することで、日本町の実態解明を進展させていきたいと思います。そして、現存する史資料は、研究に活用できるように出版することも必要です。
  さらに、9年後の日越外交樹立50周年に向けて、ベトナムをはじめ東南アジア諸国との歴史的関係を展示する特別展を博物館で開催できるように努力したいと思っています。そのためにも、今回の研究手法を東南アジア全域に拡大していきたいと考えています。



関連する科研費

平成15年度研究成果公開促進費「ベトナム日本町の考古学」
平成20-22年度基盤研究(C)「近世東南アジア交易世界の研究-日本町ネットワークを中心に-」
平成24-27年度 基盤研究(B)「近世日越交流史の再構築」
平成25年度 研究成果公開促進費「朱印船貿易絵図の研究」
図1 ホイアンでの発掘調査(左:筆者、右:ベトナム人研究者)   図2 国際シンポジウムでの報告(香港大学にて)
 

図1 ホイアンでの発掘調査(左:筆者、右:ベトナム人研究者)

 

図2 国際シンポジウムでの報告(香港大学にて)