事業の成果

写真:山田肖子准教授

准教授 山田 肖子

「発展途上国教育研究を通じて、方法論、研究パラダイムを考察する」

名古屋大学 大学院国際開発研究科 
准教授 山田 肖子

研究の背景

  この研究は、平成21~24年度に科学研究費補助金(基盤研究(A))を受けて行ったものです。発展途上国を調査対象とする研究者が中心となり、用いる調査手法やアプローチは異なるものの、調査対象地の共通性を通じて、視点や手法を融合することを目指しました。この研究のメンバーは、全員が「比較教育学」という分野の専門家ですが、定性・定量手法、国の政策分析、授業分析、国家間を比較したメタ分析など、様々な手法や研究視角を持った人々が混在しています。相いれないとも見える研究観を持つ人々が共働しようとした背景には、1つの学問分野にいながら専門によって細分化する傾向を乗り越え、今日的な研究課題に取り組むための新しい方法論、アプローチを生み出そうという思いがありました。

研究の成果

  研究活動は、主に2種類の方法で行いました。1つは、「発展途上国」と特化せず、比較教育学という学問分野全体がどのように認識、実践されてきたかを把握し、議論を促進すること。もう1つは、特定の途上国に焦点を当て、実際に異なる研究手法を持つ研究者同士でチームを組んで海外調査を行うことでした。
  第1の活動分野である学問観の整理と議論に関しては、平成21年11月に学会員の研究姿勢やよく使う手法、依拠する理論、調査対象などについてアンケート調査を行い、その分析結果の発表を通じて、学問論の議論に貢献することを試みました。この活動をきっかけに、科研費の研究課題に参画していたメンバー以外からも多くの執筆者を得て、平成25年2月に『比較教育学の地平を拓く―多様な学問観と知の共働』(東信堂)という書籍を刊行しました。
  第2の活動に関しては、モルディブとガーナに研究者のチームを派遣し、共通の課題を異なる角度、アプローチで分析しました。このフィールドワークに参加した研究者によって、複数の論文が刊行されたほか、モルディブでは、同国教育省と共催で成果普及のワークショップを開催しました。

今後の展望

  この研究は、中堅研究者の発信による、「比較教育学」という学問分野の自己確認という側面がありました。たこつぼ化の傾向に歯止めをかけ、本来の研究の目的に照らした議論を高めるのに多少貢献したと思います。
  同時に、私自身にとっては、米国の大学で学んだ教育学を、自分の研究フィールドであるアフリカ社会に当てはめることの制約や居心地の悪さを、教育研究の本質の問題意識を見失わずに立ち位置を変えることによって脱構築し、乗り越えるかを研究実践の中で考える機会でした。下記の補助事業期間中にはそこまで成し遂げることはとうてい無理でしたが、今後は、発展途上国教育研究、特にアフリカ研究の視点から、既存の教育学の発想や理念に対して新しい視点を提示していければと思っています。

関連する科研費

  平成21-24年度 基盤研究(A)「発展途上国教育研究の再構築:地域研究と開発研究の複合的アプローチ」

ガーナ:調査を行った小学校で

ガーナ:調査を行った小学校で
 

モルディブの女子中学生

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モルディブ共和国の研究成果発表会にて、教育大臣と共同研究者と共に

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