事業の成果

写真:長池卓男主任研究員

主任研究員
長池 卓男

「新たな人工林のあり方を目指して」

山梨県森林総合研究所 森林研究部 
主任研究員 長池 卓男

研究の背景

 日本は、国土面積の66%を森林が占めている、世界有数の森林国です。そして、その森林のうち、木材を得ることを目的として、人間が木を植えて育てた人工林は40%を占めています。このような人工林のほとんどは、木材を効率的に収穫するために、単一の樹種が同一年に植えられたものです。木材資源の需要は世界的に増加しており、それを供給するための人工林の重要性は増大しています。一方で、単一の樹種が植えられた人工林では、病気や昆虫の大発生をはじめ、台風などの気象災害に対しての抵抗力・復元力が弱いこと、人工林内に生育・生息できる生物が少ないこと、などが問題点として指摘されてきました。このような問題の解決策が世界的にも求められており、その一つとして、複数の樹種を植栽した人工林(混交植栽人工林)の造成が考えられています。

研究の成果

 2000年以降に発表された混交植栽人工林に関する文献をレビューしたところ、混交植栽人工林は、複数の種が植栽されることで多様な種へハビタット(生息地)や生態的ニッチ(地位)を供給し、林分レベル(林相が一様なひとまとまりの森林)での種の多様性や生物間の相互作用を維持・向上すること、物質生産機能が高まる場合が多いこと、などが既存研究で示されていました。
 また、実際の混交植栽人工林での例として、山梨県鳴沢村にあるウラジロモミ-シラベ混交植栽人工林で継続的な調査を行いました。植栽木の直径は、シラベの方が有意に大きく(図1)、直径の成長もシラベの方が良好でした。このことは、植栽された樹種の特性の違いが反映しているものと思われました。
また、幅10mの列状伐採(残存列幅20m)の影響は、伐採列の端からの距離が離れる(すなわち、より残存列の内側になり、光環境が悪くなる)につれ、胸高直径成長が低下する傾向が両種に見られましたが、ウラジロモミでのみ有意な関係が見られました(図2)。このことは、ウラジロモミの方が、列状伐採によって生み出された光環境の傾度への反応でも残存列の内側になるほど成長が低下しやすいことを示しています。したがって、両種を今後も共存させるためには、競争緩和のための管理が必要になることが示唆されました。

図1 原因となる現象別の犠牲者数と割合図

図1 2007年の胸高直径の頻度分布

2 原因となる現象と遭難場所の関係

図2 伐採列の端からの距離と胸高直径成長の関係(□:ウラジロモミ、■:シラベ)

今後の展望

混交植栽人工林は、生物多様性と生態系機能の関係のモデルとしても注目されています。しかし現状では、実験的に造成されていることが多く、実際にそれをどのように管理していくかについての研究はほとんど行われていません。どのような管理が生態系の機能を高めていけるのかは今後の課題です。

関連する科研費

  平成22-24年度 基盤研究(C)「成長増大効果が期待される混交植栽人工林の間伐指針に関する研究」