事業の成果

写真:牛山素行教授

教授 牛山 素行

「防災情報による被害軽減のための豪雨災害犠牲者の特徴に関する研究」

静岡大学 防災総合センター 
教授  牛山 素行

研究の背景

 災害情報などのソフト対策を活用して自然災害による犠牲者の減少を図るには、犠牲者の発生状況についての客観的な分析が必要です。このようなことは役所などがすでにやっているように思われやすいのですが、実は詳しい分析はほとんど行われていません。そこで私は、おもに豪雨災害を対象に、犠牲者の発生状況、属性などに関しての定量的・実証的な解析を進めています。

研究の成果

 2004年から2011年までの豪雨災害による犠牲者514人について、原因となった現象別に分類した結果が図1です。ここで「洪水」とは川から溢れた水による犠牲者です。一方、「河川」は川の中で犠牲となった人、具体的には、田んぼの様子を見に行って用水路に転落したとか、増水した川沿いを移動中に川へ落ちてしまったといった方です。つまり、水が溢れていないのに、増水した川に近づいたことによって犠牲になった方が、全犠牲者の2割ほどに上っているのです。犠牲者の遭難場所を、「屋外」と「屋内」に大別した結果が図2です。よく「(自宅などから)逃げ遅れて犠牲になった」と言われます。土砂災害では、確かに屋内での犠牲者が多数なのですが、全体で見ればむしろ屋外での犠牲者の方が多数派なのです。この結果は、自宅にいる人を対象に早めの情報伝達などの呼びかけをしても、実は全体の多くを占める屋外で移動中の遭難者を救うことには直結しない、という非常に厳しい現実を示唆しています。つまり、地域特性や原因となる現象に応じた、様々な形の情報提示が必要と考えられます。

図1 原因となる現象別の犠牲者数と割合図

図1 原因となる現象別の犠牲者数と割合図

2 原因となる現象と遭難場所の関係

図2 原因となる現象と遭難場所の関係

今後の展望

 2013年に農林水産省が作成したリーフレット「大雨や強風時の見回りは危険」で、本調査の結果が用いられ、豪雨時の屋外作業の危険性に対する注意喚起に役立ててい ただきました。また、常に同一の避難場所に移動することだけが避難ではなく、地域特性や状況に応じた避難行動をとることが必要であるという、本研究で示している考え方は、2013年の災害対策基本法の改正に伴う避難場所のあり方の見直しにも、一定の役割を果たしたものと思います。
 災害の実態に対応した防災気象情報を整備することが、被害軽減につながると私は考えます。そのための実証的な研究を今後も進めていきたいと考えています。

関連する科研費

  平成15-17年度 若手研究(B)「インターネット時代の豪雨防災情報・防災教育による効果の定量的評価に関する研究」
  平成19-21年度 基盤研究(C)「災害情報による人的被害軽減効果に関する研究」
  平成24-26年度 基盤研究(C)「客観的根拠に基づく津波防災情報及び豪雨防災情報のあり方に関する研究」